04認知症コラム
夕暮れ症候群とは?認知症の方に
夕方に見られる症状と適切な対処法を解説
2026.02.27
夕暮れ症候群とは、認知症の方が夕方から夜にかけて不安や興奮により、落ち着きがなくなったり徘徊を始めたりする症状のことです。この記事では、夕暮れ症候群の代表的な症状と原因を解説します。また、本人と介護者双方の負担を軽減するために日常で実践できる対処法や注意点もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
夕暮れ症候群とは-定義や別名は?
認知症の方が夕方から夜にかけて不安や
混乱を示す現象のこと
夕暮れ症候群とは、夕方から夜にかけて不安や混乱、興奮、攻撃的な言動が強まる認知症の周辺症状(BPSD)の一つで、「サンダウン症候群」とも呼ばれています。日中は落ち着いて過ごしていても、時間帯の変化とともに症状が目立つようになる点が特徴です。
発症のメカニズムや直接的な原因は現在のところ明確には解明されていませんが、認知機能の低下や環境の変化、心身の疲労など、複数の要因が関与していると考えられています。
夕暮れ症候群で見られる代表的な症状
夕暮れ症候群の特徴は、時間帯の変化にともなって心身の状態が不安定になり、日中とは異なる様子が見られる点ですが、症状にはいくつかの傾向があります。具体的な症状についてみていきましょう。
そわそわと興奮する
「落ち着きがなくなる」のは、夕暮れ症候群の代表的な症状です。症状が現れると、落ち着いて座っていられなくなったり、身体を動かし続けたりする様子が見られることがあります。
また、話し方が早くなったり、手振りが多くなったりするなど、言葉や仕草に焦りや緊張が表れる点も特徴です。周囲からは理由なく感情が高ぶっているように見えますが、本人にとっては不安や違和感に対する自然な反応である場合が多いです。
- 具体例
-
- 部屋の中を落ち着きなく歩き回る
- 服を何度も直す
- 「帰らなきゃ」と繰り返し口にする
ひとり歩き(徘徊)が増える
徘徊も多く見られる症状の一つです。夕方になるにつれて目的なく歩き回る行動が増える場合は、夕暮れ症候群の可能性があります。室内を行き来するだけでなく、外へ出ようとするケースも少なくありません。
「家に帰らなければならない」「どこかへ行く予定がある」といった意識が背景にあることが多く、帰宅や移動に関連した行動が目立つ点が夕暮れ症候群の大きな特徴といえます。
- 具体例
-
- 玄関に向かって靴を履こうとする
- 廊下を何度も往復する
- 外に出ようとしてドアを開けようとする
不安や混乱状態になる
夕暮れ症候群では、時間帯の変化にともなって周囲の状況をうまく把握できなくなり、不安や混乱が生じやすくなります。こうした内面的な揺らぎが積み重なり、落ち着きがなくなったり興奮したりすることも多いです。
症状が強まると、突然泣いたり怒ったりするなど感情の起伏が激しくなることもあります。
- 具体例
-
- 「ここはどこ?」と繰り返し尋ねる
- 家族を認識できず「知らない人」と言う
- 急に泣き出す、怒り出す
夕暮れ症候群はなぜ起こるのか|4つの主な原因
夕暮れ症候群は、特定の時間帯に症状が強まる点から、「なぜ夕方になると変化が起こるのか」と疑問を持つ方も多いかもしれません。はっきりとした原因は解明されていないものの、発症にはいくつかの背景が関係していると考えられています。
認知症の症状(見当識障害・
記憶障害)によるもの
周囲の環境変化によるもの
過去の記憶の影響によるもの
疲労や薬の影響によるもの
認知症の症状(見当識障害・記憶障害)によるもの
夕暮れ症候群の背景には、認知症にともなう見当識障害や記憶障害が深く関係しているとされています。
見当識障害が起こると自分が今どこにいるのかという場所の認識が不安定になります。また、記憶障害の影響で過去の生活習慣が強く意識に残っていると、それに基づいた行動が表れやすくなります。
周囲の環境変化によるもの
夕暮れ症候群は、周囲の環境変化が引き金となって現れることも少なくありません。夕方になると日照時間が短くなり、室内が暗くなることで視覚情報が得にくくなり、不安感が強まりやすくなります。
また、家族の帰宅や食事準備などによる夕方の騒がしさや、反対に人の動きが減ることで生じる静けさといった周囲の状況変化を本人が敏感に感じ取り、混乱を招く場合もあります。
過去の記憶の影響によるもの
過去の記憶が現在の行動に強く影響することもあります。認知症によって記憶の時系列が曖昧になると、夕方という時間帯をきっかけに特定の記憶が前面に出やすくなります。
とくに、仕事の帰宅時間や家事をしていた頃の生活習慣は、夕方と結びつきやすい記憶の一つです。こうした記憶の断片が積み重なり、今の状況とは合わない言動として現れます。
疲労や薬の影響によるもの
身体的・精神的な疲労や薬の影響で症状が現れることもあります。夕方は日中の活動による疲れが蓄積しやすい時間帯でもあるため、体力や集中力の低下が不安感や感情的な反応につながることも多いです。
とくに認知機能が低下している場合、疲労をうまく処理できず、落ち着きのなさや興奮として表れやすくなります。また、認知症の治療薬を含む疾患の薬による副作用や、睡眠障害が影響しているケースもあります。
夕暮れ症候群への対処法5選
夕暮れ症候群は、日々の関わり方や工夫次第で症状の現れ方が変わる可能性があります。ここでは、本人の不安や家族の負担を軽減するための対処法をご紹介します。
適切な照明や環境を整える
照明や生活環境の見直しは対策として有効です。夕方以降は室内が暗くなりやすいため、光の加減を調整すれば不安感を和らげられます。
テレビや生活音などの刺激を必要以上に増やさない工夫も重要です。また、混乱が生じないように、できるだけ家具の配置や部屋の使い方は大きく変えないようにして環境の変化を最小限に抑えましょう。
- 具体例な対処法
-
- 夕方前に照明を点けて部屋を明るくする
- カーテンを閉めて外の暗さを遮る
生活リズムを整える
生活リズムを整えることも重要なポイントです。起床や食事、就寝の時間をできるだけ一定に保つことで体内時計が安定し、時間帯にともなう不調が起こりにくくなります。
日中に適度な活動を取り入れると心身の充実感が高まり、夕方に感じやすい不安も軽減できます。こうした毎日の流れを習慣化させることが、本人の安心感につながります。
- 具体例な対処法
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- 午前中に散歩や軽い運動を取り入れる
- 食事や休憩の時間を毎日同じにする
趣味や娯楽に取り組んでもらう
味や娯楽を楽しんでいる間は活動に集中できるため、不安を和らげられます。とくに、過去に親しんでいた趣味や得意だった作業は記憶と結びつきやすく、安心感を覚えやすいです。また、気持ちの切り替えがしやすくなるため、症状の表れ方も穏やかになる可能性があります。
- 具体例な対処法
-
- 塗り絵や折り紙など手を動かす活動をする
- 好きな音楽を一緒に聴く
共感や声かけで気持ちに寄り添う
夕暮れ症候群に限らず、認知症の対応では否定せず共感や声かけを通じて気持ちに寄り添う姿勢が欠かせません。不安や訴えを受け止め、本人の思いを尊重することが大切です。また、コミュニケーションする際は落ち着いた口調でゆっくり声をかけることで、混乱や興奮が起こりにくくなります。
- 具体例な対処法
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- 「帰りたいんだね」と気持ちを受け止める
- 「ここにいて安心していいよ」と優しく伝える
専門家や相談窓口を利用する
対応に悩んだ場合は、自分だけで抱え込まず専門家や相談窓口を利用することも重要です。地域包括支援センターや医師に相談すれば、状況に応じた適切な支援や助言を受けられます。専門家による医療や介護の専門的なアドバイスは、問題に正しく対処できるだけでなく、介護者の安心感や精神的な負担軽減にもつながります。
参考:国立長寿医療研究センター「対応に困る言動との向き合い方」
夕暮れ症候群に対応するときの注意点
前章では夕暮れ症候群の対処法をご紹介しましたが、接し方によっては症状の悪化を招きかねないケースもあるため注意が必要です。本人と介護者の双方にとって負担を増やさないためにも、ここでは対応時に意識しておきたい注意点を押さえましょう。
注意や𠮟責をしない
夕暮れ症候群の症状が現れても、強い口調で注意したり叱責したりすることは避けましょう。感情的な言葉は本人の不安や混乱をさらに強め、興奮や攻撃的な言動を招きやすくなります。
本人にとっては、行動に意味や背景がある場合が多いため、否定的な対応をすると信頼関係を損ないかねません。状況を理解しようとしている姿勢を示し、穏やかに受け止めることで安心感が生まれ、結果として症状が落ち着きやすくなります。
本人の言動を否定しない
本人の言動を頭ごなしに否定しないことも大切です。認知症によって生じる訴えや行動は、本人にとっては現実そのものであり、否定的な対応が不安や混乱を一層強めるおそれがあります。
事実関係を正そうとするよりも、まずは「そう感じているのですね」と共感的に受け止めましょう。こうした対応によって、気持ちを尊重しているということが伝わり、お互いの信頼関係も深まります。
介護者自身のケアも忘れない
しっかり対応しなければならないと思うあまり、介護者が疲弊してしまわないようにすることも大切です。心に余裕がなくなり、冷静な判断や落ち着いた対応ができなくなると、その影響が本人へのケアにもおよぶ可能性があります。
無理をせず、家族や支援サービスなど周囲に助けを求めれば負担が分散し、介護を続けやすくなります。長期的に質の高い介護を維持するためにも、セルフケアを意識しましょう。
夕暮れ症候群に関するよくある質問
夕暮れ症候群の症状が現れると今後どのような影響が出るのか、また高齢者や認知症の方以外でも発症するのかといった点が気になる方もいるかもしれません。ここではそういった疑問も含め、夕暮れ症候群に関してよくある質問とその回答をまとめました。参考にしてください。
Q夕暮れ症候群によるリスクにはどのようなものがありますか?
気づかないうちに外へ出ていってしまったり、行方不明につながったりするおそれがあります。夕方という時間帯の特性もあり、食事準備や帰宅対応などで介護する側も忙しく、認知症の方に十分な意識を向けにくくなるためです。また、対応が長期化することで介護者の心身に大きな負担がかかる点にも注意が必要です。
Q夕暮れ症候群とせん妄の違いは何ですか?
夕暮れ症候群とせん妄は似た症状が見られることもありますが、性質は異なります。せん妄は急性発症し、数日から数週間と短期間で改善することが多く、長く続かない点が特徴です。
また、夕暮れ症候群のように夕方から夜間にかけて定期的に悪化するとは限りません。認知症ではなくても、手術後や感染症、薬の影響などで発症することがあるという点も異なります。
Q夕暮れ症候群は20代でも発症しますか?
20代で夕暮れ症候群と同じような症状がみられる場合は、うつ病や適応障害など別の要因が関係している可能性が高いと考えられます。夕方に気分の落ち込みや不安が強まるといったケースもありますが、必ずしも夕暮れ症候群であるとは限りません。
Q夕暮れ症候群は医療機関で治療できますか?
症状の緩和は期待できる場合があります。認知症治療薬や睡眠に関わる薬などの服用によって、不安や興奮などの症状を抑えることは可能です。ただし、根本的な原因を解決するものではありません。
介護者にとっては、医療機関で相談するだけでも不安の軽減につながります。対応に負担や難しさを感じた場合は、専門機関に一度相談してみましょう。
夕暮れ症候群は本人の不安を取り除くことが大切
夕暮れ症候群は、夕方から夜にかけて不安や混乱が強まる認知症特有の症状です。発症の背景には認知機能の低下や環境、疲労など複数の要因が関係しており、傾聴や声かけなどを通じて本人の不安を取り除くことが有効な対処法となります。介護側の負担やストレスも大きいため、必要に応じて医療機関などに相談しながら対応することが重要です。
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