02認知症予防 五感ケア

認知症予防に向けて、世界的な動きも始まっています。2019年にはWHOが初めて認知症の予防に関するガイドラインを発表。
「認知症発症には修正可能な危険因子が多くあり、予防は可能である」としています。近年では、自然に生活に溶け込ませる予防アプローチも注目されていて、日常的な“五感ケアによる可能性”も示唆されています。

生活習慣対策&五感ケアによる認知症予防

認知症リスク低減のためにできること WHOが取り組みやすい「生活習慣アプローチ」を推奨

WHOによるガイドラインで言及されている12項目は「生活習慣の見直し」「体の健康維持」「心の健康維持」の3つに分類することができます。いずれも日常生活において改善することが可能ですが、まずは取り組みやすい「生活習慣の見直し」から始めてみるのがよいでしょう。身体活動や栄養摂取の習慣を変え、認知トレーニングを行うことで、他の「体の健康維持」「心の健康維持」にも好影響を及ぼします。認知トレーニングについては、わざわざ計算問題などに取り組まなくても、日々の仕事の中でこなしている「推理⇒判断⇒決定」などのプロセスで認知機能は鍛えられます。

「体の健康維持」については、中年期の肥満や高血圧、糖尿病などを予防、治療することは、「Lancet」で発表された認知症の危険因子を減らすことにもなり、やはり生活習慣病の予防改善が大きなカギになっているといえます。
社会活動については、社会参加が少ないこと、社会交流が少ないこと、孤独であることなどが認知症の発症率を高めるとされています。 ランセット委員会でも認知症予防を目的とした介入手法になりえるとされており、高齢者の健康と幸福に強く結びついた対策であると考えられます。

「WHOのガイドライン12項目」の3つのカテゴリー
「WHOのガイドライン12項目」の3つのカテゴリー
出典:WHO, Risk reduction of cognitive decline and dementia WHO Guidelines 2019.5.14
WHO ガイドライン『認知機能低下および認知症のリスク低減』 邦訳検討委員会「認知機能低下
および認知症のリスク低減 WHOガイドライン」の「3 エビデンスと推奨」の「3.1 身体活動による介入」(p27) ~「3.12 難聴の管理」(p58)から抜粋・まとめをして、作図

五感ケアによる認知症予防について 五感ケアの可能性

認知症リスク低減に向けて、生活習慣アプローチが推奨されている中で、より自然に、より生活に溶け込ませやすい五感刺激によるケアも注目されています。

生活リズムに即した「音」「光」「香り」などの刺激であり、認知症予防専門医も「日頃からアロマを嗅いだりすることは、嗅神経が記憶を司る海馬や情動を司る偏桃体とつながっているため、嗅覚刺激として大切である」と言及しています。

日常生活を送るだけで、長期に渡って五感による介入が自然に行われ、周辺症状を含む認知症ケアなど高齢者の困りごと解決を通して、高齢者のQOLが向上する世界を目指すことを可能にするのが五感ケアです。日常に溶け込んだ五感刺激によるケアが高齢者や介護者の過度な負担を要求せず、社会の中で、高齢者がその人らしく過ごすことができる理想の世界の実現につながっていきます。

出典(参考文献):
書籍「今からできる!認知症をふせぐ五感トレーニング」
(著者:鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座(寄附講座)教授・浦上 克哉)
株式会社PHP研究所

認知症予防の方法を紹介!よくあるトレーニングは効果ある?
五感イメージ

音と認知症の密接な関係

五感による認知症ケアの中でも特に注目が高まっているのが、効果的な「音」を活用するという方法です。耳から入る音が脳の刺激になって、認知症の予防に効果を発揮。頑張ったり、無理をしたりせずに実践できます。

今、注目されている
「音による認知症予防」

五感から入る情報が脳の刺激になることで、認知症の予防・改善に効果をもたらします。そんな五感ケアの中でも、とりわけ注目されているのが聴覚です。耳を澄ませてさまざまな音を聴くことが脳への刺激になります。

近年になって多くの認知症の臨床現場で、音刺激によるケアを取り入れるようになってきました。認知症の中には、病気の始まりから症状が目に見えるような状態になるまで、20年ほどもかけて進行していくものもあり、認知症のケアは長期戦です。定期的な運動や食事制限など、難しいことに挑戦して、結局すぐにやめてしまうより、継続できることが大切。音楽を聴くなど生活に溶け込んだ形の“ながらケア”なら、気楽に続けていきやすいのではないでしょうか。