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03ガンマ波の最新研究

海外の研究
【2024年発表】最新研究結果 40Hz周期の音・光刺激が
アルツハイマー病の
ヒトの認知機能や日常生活動作の低下を抑制

40Hz周期の音や光の刺激による認知機能改善の研究は、マウスを用いた試験を経て、現在はヒト試験へと進行しています。2024年3月には、軽度から中等度のアルツハイマー病患者を対象にした二重盲検臨床試験で、認知機能・日常動作機能の低下抑制を確認したという研究論文がFrontiers in Neurologyに発表されました。

米国・Cognito Therapeuticsによる
ランダム化二重盲検臨床試験

軽度から中等度のアルツハイマー病患者に、6か月間にわたって40Hz周期の音・光の刺激を毎日1時間受けてもらい、MMSE*1やADCS-ADL*2の結果を対照群と比較するランダム化二重盲検臨床試験が行われました。その結果、40Hz周期の刺激を受けた患者は、認知機能と日常の動作における機能の低下が有意に抑えられていました。この研究は、40Hz周期の音・光の刺激によって、アルツハイマー病の進行が大幅に遅くなることを示唆しています。
40Hz周期の音・光毎日1時間6か月間受けるイメージ

MMSEスコアの低下を76%抑制 (認知機能)

認知症の判定に用いられるMMSEスコアにおいて、40Hz周期の音・光の刺激を受けた患者は試験開始時からのスコアを維持し、対象群と比較した6か月の差が顕著でした。6か月後のスコア低下は対照群と比較して76%抑えられました。

Cognitive Function Measured by Mini-Mental State Exam
MMSEスコアの低下を76%抑制(グラフ)

ADCS-ADLスコア低下を77%抑制 (日常生活における動作の機能)

認知症患者の日常生活動作を介護者が評価するADCS-ADLのスコアにおいて、40Hz周期の音・光の刺激を受けた患者は試験開始時からのスコアの下がり方が緩やかで、6か月後のスコア低下は対照群と比較して77%抑えられていました。6か月にわたって日常動作の機能がほぼ維持されていたといえます。一方、プラセボ群は大幅に悪化しました。

Daily Function Measured by ADCS-ADL (Total)
ADCS-ADLスコア低下を77%抑制(グラフ)"

*1…MMSE:認知症の指標となる最も一般的な検査のひとつ(長谷川式認知症スケール等と類似の検査)時間の見当識、場所の見当識、計算など計11項目から構成される30点満点の認知機能検査
*2…ADCS-ADL:認知症の患者における日常生活での動作を、各患者の介護者により評価するスケール

出典:Front Neurol. 2024 Mar 6;15:1343588
出典:Hajós, M. et al. Safety, tolerability, and efficacy estimate of evoked gamma oscillation in mild to moderate Alzheimer’s disease. Front Neurol 15(2024)
doi: 10.3389/fneur.2024.1343588

海外の研究
世界的な学術誌での研究発表
- 40Hz周期の音刺激で認知機能改善

米国・マサチューセッツ工科大学の
研究チームによるマウス試験 40Hz周期の変調音での刺激で、脳内にガンマ波が発生し、
アルツハイマー病の指標・アミロイドβタンパク質の低減、認知機能障害の改善を発表

40Hz周期の光刺激によって、視覚野でガンマ波が発生し
アミロイドβタンパク質が減少 ~Nature,2016

アルツハイマー型認知症の病態を再現したマウスに、40Hz周期の光(1秒間に40回の周期で点滅する光)を1日1時間当てることで、視覚野でガンマ波が発生し、アミロイドβタンパク質が著しく減少することを発見しました。他の周期やランダムな周期の光では、アミロイドβタンパク質レベルの影響は見られませんでした。

出典:Nature. 2016 Dec 7; 540(7632): 230–235.

40Hz周期の音刺激で、聴覚野と海馬でガンマ波の発生・血管新生・アミロイドβタンパク質減少・記憶障害の改善を確認 ~Cell,2019

40Hz周期の光を当てた研究結果を受けて、アルツハイマー型認知症の病態を再現したマウスに、さまざまな周期の変調音を持続的に聴かせる試験が行われました。

その結果、40Hz周期の変調音(1秒間に40回鳴る音刺激)によって、聴覚野と記憶の司令塔といわれる海馬でガンマ波が発生し、蓄積したアミロイドβタンパク質の有意な減少が確認できました。さらに、脳内のごみを除去できるグリア細胞の数が上昇し、血管変化(新生)が高まっていたのです。また、40Hz周期の変調音を聴かせたときのみ、物や場所についての認知機能障害の改善がみられました。

この研究によって、40Hz周期の変調音でアルツハイマー型認知症が改善される可能性が示されました。

アミロイドβとは?溜まる原因や認知症との関係を解説

40Hzの音刺激で神経活動の変調→ガンマ波が脳内に発生 グリア細胞(神経細胞の生存や発達機能発言のための脳内環境の維持と代謝的支援を行っている=脳内のごみ掃除的役割)と血管系の変化 認知の改善(空間記憶と認知記憶)
出典:Cell. 2019 Apr 4;177(2):256-271.e22.より作成

海外の研究
【続報】アミロイドβ除去のメカニズム解明につながる発見

米国・マサチューセッツ工科大学の
研究チームによるマウス試験の続報

40Hz周期の音・光の刺激がグリンパティック系の働きを促進して、脳内のアミロイドβが除去されることが、アルツハイマー型認知症の病態を再現したマウスでの試験によって明らかにされました。2019年に発表された40Hzの刺激による認知症改善の研究と同じ研究チームによる報告です。

8・40・80Hz周期の音・光による刺激を与えたマウスと刺激を与えなかったマウスの中で、40Hz群のマウスでのみ脳内のアミロイドβが減少し、リンパ液中では増加していることから、脳内の老廃物除去システムであるグリンパ系に焦点を当てた研究が行われました。その結果、40Hz周期の刺激によって脳内にガンマ波が発生し、グリンパ系が活性化して、アミロイドβが除去されることが確認できました。また、40Hz周期の刺激で動脈の脈動が調節され、グリンパティック系の働きを促進することもわかりました。これらの発見は、40Hz周期の刺激によるアミロイドβ除去のメカニズム解明につながると考えられます。

マウス脳内のアミロイドβの変化
マウス脳内のアミロイドβの変化

※2019年の研究で示されたグリア細胞は、グリンパティック系(glymphatic system)と呼ばれる脳内の老廃物排出システムに深く関わっています。

出典:Nature. 2024 Feb 28; 627:149–156
出典:Murdock, M. H. et al. Multisensory gamma stimulation promotes glymphatic clearance of amyloid. Nature 1-8(2024)

40Hzの音刺激を受けることで…

  • 脳内にガンマ波が発生
  • 聴覚野と海馬で、脳内のごみを除去できるグリア細胞が増加し、血管が変化(新生)
    ⇒アミロイドβタンパク質の減少
    ⇒認知改善
出典:Cell. 2019 Apr 4;177(2):256-271.e22.

40Hz周期の音刺激とは

40Hz周期の音刺激とは、1秒間に40回音が鳴る刺激で、40Hzの繰り返し頻度の音のことです。40Hz周期の変調音とは、もとになる音源を40Hzの繰り返し頻度に変調した音です。音波の周波数が示す音程の高低とは異なります。

海外の研究
世界中が注目!40Hz周期の刺激による
認知機能研究は実用化まで秒読みか

40Hz周期の光や音の刺激によって脳内にガンマ波が発生し、認知症の改善が示唆されたマウスを使った先行研究は、世界の研究者たちを驚かせました。今、アメリカでは研究結果を臨床現場で活用しようと、デバイスを開発し、ヒトにおける安全性と効果を確かめる検証試験をすすめているところです。

40Hz周期の音・光刺激で、ヒトでも
脳内で
ガンマ波が発生し、認知機能改善を確認 Cognito Therapeutics Inc.

40Hz周期の音・光刺激で、アルツハイマー病の指標・アミロイドβタンパク質の低減、認知機能の改善といった研究結果を発表した米・マサチューセッツ工科大学のDr.Tsaiは、Cognito Therapeuticsという会社を立ち上げ、さらなる研究を着々とすすめています。40Hz周期のパルス状の音・光刺激を発するヘッドセット(ウェアラブル・デバイス)を開発。アルツハイマー型認知症という難治性疾患における新しい治療法が、いよいよ開発の後期段階に入りました。

40Hz周期のパルス音・光を発するヘッドセット

これまでの研究結果によると、Cognito Therapeuticsのヘッドセットを使用した患者は、病気の進行がMMSE(Mini-Mental State Exam)の測定で83%減少、ADCS(Alzheimer‘s Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living)の測定では78%減少したと報告しています。また、アルツハイマー病患者で萎縮すると考えられている大脳の白質について、10年間にわたる世界規模のアルツハイマー研究で収集したAlzheimer’s Disease Neuroimaging Institute (ANDI1)の過去のデータと比較したところ、ヘッドセットを1日1時間、6か月にわたって使用したアルツハイマー病患者(Overture Treatment)で白質の委縮が軽減されたことも発表されました。試験開始時の測定値よりも約0.4%の増加が確認されています。

その結果、40Hz周期の変調音(1秒間に40回鳴る音刺激)によって、聴覚野と記憶の司令塔といわれる海馬でガンマ波が発生し、蓄積したアミロイドβタンパク質の有意な減少が確認できました。さらに、脳内のごみを除去できるグリア細胞の数が上昇し、血管変化(新生)が高まっていたのです。また、40Hz周期の変調音を聴かせたときのみ、物や場所についての認知機能障害の改善がみられました。

40Hz周期のパルス音・光刺激を発する独自に開発されたヘッドセットの安全性と有効性を実証するため、いよいよ2023年2月には、実用化に向けた米国ピボタル試験(HOPE)への最初の患者登録がアナウンスされました。

*… 医薬品の有効性および安全性を証明するための重要な検証的試験

大脳白質の体積変化(総頭蓋内容積からの変化率)

グラフについて

大脳白質の平均体積の変化において、40Hz周期のパルス状の音・光刺激を発するヘッドセットを6か月間毎日1時間使用したアルツハイマー型認知症患者(Overture Treatment:赤)と10年にわたってアルツハイマー型認知症患者を調査したADNI1データ(青)には有意差(p < 0.004)がある。

出典:Cell. 2019 Apr 4;177(2):256-271.e22.

アルツハイマー病患者では萎縮がより顕著になる傾向がありますが、Overture Treatment群(赤)は、試験開始時点からの大脳白質容積の変化(総頭蓋内容積からの変化率)で、むしろ増加しています。

  • 独自のガンマ波感覚刺激は、毎日・長期に渡っての使用においても、安全で忍容性が高く、被験者の日常生活にうまく統合された治療であることが示唆されている。
  • アルツハイマー病における同社のガンマ波感覚刺激の臨床的有効性をサポートするため、ピボタル試験が今年開始される。

出典: Business Wire、Cognito Therapeutics Announces First Patient Enrollment in US Pivotal Study HOPE
Business Wire、Cognito Therapeutics Announces Proprietary Gamma Sensory Stimulation for 6-Months Reduces White Matter Atrophy in Alzheimer’s Disease Patients

国内の取り組み
塩野義製薬の知見×PxDTの五感刺激技術で、日常の音が認知ケアに

五感刺激技術が強みのピクシーダストテクロノジーズ(PxDT)と薬品研究の塩野義製薬がタッグを組んで、テレビなど日常に存在する音を、認知機能改善に効果がある40Hz周期の変調音にする技術を開発しました。

「五感刺激技術を使ってより快適で楽しい世の中にしたい」 その思いから、薬以外のアプローチの実現を目指してプロジェクトが始動

塩野義製薬が薬の研究開発で磨き上げた「サイエンス力&エビデンス創出力」と、PxDTの「五感刺激技術」を合わせたら、どんなことができるだろう、こんな議論からプロジェクトがスタートしました。五感刺激技術を使ってより快適で楽しい世の中にしたいと考えたとき、近年のアメリカの研究で「認知機能改善に40Hz周期の変調音が良い」という報告があり、 40Hz周期に変調したブザーのようなパルス音を1日1時間聴く試験をしているという話が俎上に上りました。認知機能を良くするためとはいえ、ブザー音を長期間毎日聴き続けるのは、かなりの忍耐が必要です。塩野義製薬とPxDTが力を合わせれば、同じ40Hz周期の変調音でも、ブザー音ではなく、無理をしなくても長く聴いていられるように、生活に自然に溶け込んだ音にできるのではないか――もっと楽しく生活しながら効果が期待できるヘルステックを実現しようと共同研究の方向が定まりました。

ガンマ波変調技術の開発に成功 日常生活のありふれた音での「ながら予防」のヘルステックがガンマ波変調技術の開発に成功!

「自然に五感を刺激することで長期的な介入を可能とし、生活に溶け込んだ形で認知ケアを実現する」というコンセプトから共同開発がすすみ、日常のありふれた音を脳の特定のリズム活動(ガンマ波)を強める可能性のある40Hz周期の変調音にする技術の構築に成功しました。通常の40Hz周期の変調音は聴きづらく、長時間継続して聴くには精神的な負担も大きいとされています。しかし、この共同研究により、テレビなどの日常の生活音を自然なかたちで40Hz周期の変調音にして出力するという、まったく新しいガンマ波変調技術を実現しました。

先行研究などでわかっていること

  • アルツハイマー型認知症の患者には、40Hzすなわちガンマ波の脳波が減弱している
  • しかし、40Hz周期の音刺激で、脳内に40Hzのガンマ波の脳波が発生する ⇒ 認知機能改善の可能性

*…通常、ガンマ波の脳波は、記憶の想起など認知機能を発揮したときに発生

国内の取り組み
【2024年11月発表】日本発の最新臨床研究 40Hz変調音声のBPSD*1(認知症の行動・
心理症状)改善を確認

介護老人保健施設 国立あおやぎ苑による40Hz変調音声を使った臨床研究

介護老人保健施設 国立あおやぎ苑(東京都)が、認知症患者に対する40Hz変調音声の効果を検証したところ、DBD-13*2の数値が有意に改善し、暴言、不安など認知症に伴う行動・心理症状であるBPSDの緩和が見られました。

認知症専門棟患者25人に対して、テレビなど日常の音を40Hz変調音声に変換する40Hzガンマ波サウンドスピーカーを6か月間使用し、DBD-13等の検査を経時的に実施して症状の進行度を比較する試験を行いました。その結果、DBD-13において数値的に有意に改善が確認されました。これらのことは、40Hz変調音声の刺激が前頭葉にガンマ波を生じさせる働きがあるため、BPSDに対する効果を示していると考えられます。
さらに、現場では患者・スタッフ共に朗らかな表情が生まれ始め、険しくなりがちだった環境が良い状態へと著しく変化しました。

この臨床研究は、2024年11月に行われた第35回全国介護老人保健施設大会 岐阜にて発表されました。

40Hzガンマ波サウンドスピーカーを6カ月間使用した
2F(認知症フロア)の認知症群の変化

*1…BPSD:徘徊、介護拒否、焦燥、無気力、睡眠障害、食行動異常など、認知症患者にしばしば生じる、知覚認識、思考内容、気分、行動の障害による症状状
*2…DBD13:認知症行動障害尺度。認知症の周辺症状(行動・心理症状)を簡潔に評価するためのスケールで、DBDとして発表されたものを、13項目の短縮版としたもの

出典:第35回全国介護老人保健施設大会 岐阜、講演情報

国内の取り組み
【学会発表】 生活に溶け込んだ40Hz変調音でも脳内のガンマ波が同期

パルス音などよりも不快度の低減が期待される40Hz変調音(40Hz周期で音量を増減させた音)を聴くことでヒトの脳内にガンマ波が発生あるいはガンマ波が同期することが確認され、複数の学会で発表されました。これらの研究により、テレビなどを音源にした40Hz変調音が認知機能改善のための新たなケア方法になる可能性が示唆されます。

認知症予防学会学術集会で発表 40Hz変調音を聴取することで
「ヒトの脳にガンマ波が発生することを確認」「変調対象の音素材の任意選択の可能性」

PxDTと塩野義製薬は、「ガンマ帯域周波数で変調した音刺激聴取時のヒトの脳におけるガンマ波惹起」について、第11回認知症予防学会学術集会で発表しました。先行研究などで40Hz周期のパルス音で40Hz脳波(ガンマ波)が発生することが示されていましたが、それ以外の音でも40Hzの脳波を発生させることができないかを検討した研究です。ヒトを対象に、変調周波数や変調関数等を変化させた音刺激をランダムにヘッドホンで聴かせて脳波を測定したところ、40Hz変調を施した音刺激(図中#3)で40Hz同期成分が見られました。他方で、変調されていない40Hz低周波音(#1)や、20Hz変調音(#2)、80Hz変調音(#4)の聴取ではガンマ波の同期はほとんど見られませんでした。つまり、この結果は「40Hz変調」が40Hzのガンマ波同期に有効であることを示すものです。

この研究結果は、「ガンマ波発生に変調音が有用であること」に加えて、「変調対象の音素材を任意に選択できる可能性」も示唆しており、認知機能の改善あるいは悪化の抑制に向けて臨床応用に期待が持てる結果です。

脳波の同期度(PLI)の時間-周波数特性(22名の平均)
※PLI:Phase Locking Index(脳波の同期度合いを示す値)

出展:第11回日本認知症予防学会学術集会 抄録集, p.206 (2022) (当該学会にて発表したデータについて同期度を可視化)

米国の耳鼻咽喉科学研究に関する学会(ARO)で発表 新たな技術で40Hz変調したテレビ音を聴くだけで、
ヒトの脳の40Hzのガンマ波が同期

上記の研究などで使用されていた40Hz変調の操作をニュース番組や音楽番組の音に適用した音源を聴取した場合にもヒトの脳内のガンマ波が同期されるか検証した結果について、学会発表をおこないました。

この研究では、テレビで放送されたニュース番組や音楽番組の音をヒトの声とそれ以外の部分に分離し、それぞれの変調の強さを個別に調整した音源を用意して脳波測定をおこないました。この技術により、例えばアナウンサーの音声やボーカリストの声は変化させずに、BGMや楽器音などのみに変調を施すことができるようになりました。

結果、背景音のみを40Hz変調した場合でも40Hzの脳波の同期が確認されました(各図の中央)。ただし、この場合には、声の部分も含めて変調した場合(各図の右端)に比べると、脳波の同期度が低いことも確認されました。

この結果は、期待される効果と音の自然さのバランスを考慮して聴取音を選択できる可能性を示しています。例えば、臨床応用時に、音声の聞き取りやすさを維持した状態で変調音を聞き続けることが可能になることなどが期待される結果です。

測定した脳波の同期度(PLI)(17名の平均)
※エラーバー:SD

出展:2023 Association for Research in Otolaryngology Midwinter Meeting Abstract Book, pp.443-444 (2023).

ガンマ波について
私たちの脳から発生しているガンマ波とは?

私たちの脳からは常に脳波が発生しています。脳の活動状態によって脳波の周波数は異なっており、およそ30~100Hzの周波数帯域であるガンマ波の脳波は、感覚情報処理や認知・注意・記憶といった認知機能を発揮する際に増大します。また、アルツハイマー型認知症では脳から発生するガンマ波が減弱していることが知られています。

*… 諸説あり

「脳波」は、脳の活動によって常に発生している

脳波は、私たちの脳からいつでも発生しています。脳には1,000~2,000億個もの神経細胞が存在していてネットワークをつくっており、見たり、聴いたり、考えたりなど、何らかの刺激を受けると、複数の神経細胞が同期的に活動して電気信号を伝達し、情報を処理します。その過程であらわれるのが脳波です。

運動や勉強など心身が意識的に活動しているときだけでなく、眠っている時にも脳波は発生しています。

脳の状態によって、さまざまな周波数(Hz)の脳波が発生
感覚情報の処理(認知)を司るのがガンマ波

脳波にはさまざまな周波数があります。周波数とは、脳波が振動する回数を示すもので、単位はHz(ヘルツ)です。周波数の帯域によって脳波は分類されており、どんな脳波が発生しているかで、緊張やリラックス、焦りや集中など、その時の脳の状態がわかります。例えば、静かにくつろいでいるときや何かに集中しているときに増大するのが8~13Hzのアルファ波です。

前頁の研究で、音や光の刺激によって発生していたのは、40Hz、すなわちガンマ波に含まれる周波数の脳波です。ガンマ波は、感覚情報の処理と関係しており、認知機能を発揮している時に出現します。また、アルツハイマー型認知症の患者では、ガンマ波の脳波が減弱していることが、これまでのさまざまな研究から明らかになっています。

特徴的な周波数の脳波と精神機能
出典:マクニカHP「脳波とは何か」を参考に改編
ガンマ脳波と記憶獲得・保持の関連
連続した10個のアルファベットを聴き、後半5個を記憶するタスク。該当するアルファベットを聴いて覚える瞬間(encoding)と保持期間(maintenance)にガンマ脳波が増強する。

出典:Jensen et al.,TRENDS in Neuroscience 30.7 (2007)

認知症とは?予防は可能?症状や対処法について解説

認知症の割合はどのくらい?人口・年齢・種類・地域別の割合を解説

認知症予防の方法を紹介!よくあるトレーニングは効果ある?