04認知症コラム
認知機能とは?種類と機能低下の原因、
早期発見のポイントを解説
2025.05.30

認知機能とは、情報を理解・処理し、適切に判断・行動する能力のことです。私たちの脳の働きを支える重要な能力であるといえるでしょう。この記事では、認知機能と認知症との関係や種類、低下する原因についてまとめました。また、認知機能の低下を早期発見し、予防するためにできることについても紹介します。
認知機能とは?
認知機能とは、記憶・判断・思考など、
私たちの脳の働きを支える重要な能力です
認知機能とは、受け取った情報を理解・処理し、その情報を基に行動を決定する能力のことです。理解力や記憶、判断力などはいずれも認知機能に含まれます
認知機能は脳の健康と密接に関連しているため、病気やストレス、加齢によって脳の健康が悪化すると認知機能も低下する点に注意が必要です。とくに高齢者は認知機能が低下しやすく、日常生活に支障をきたすこともあります。

認知機能と認知症の関係性
認知症とは、認知機能が継続的に低下し、日常生活に支障をきたすようになった状態のことです。認知機能には情報処理や言語操作、学習、記憶、計算といった生活に必要な能力が多く含まれているため、低下すると生活へ多大な影響を与えます。
記憶力
記憶力とは、過去の経験や情報を覚えておくことや、新しい情報を覚える能力のことです。
記憶力は短期記憶と長期記憶に分けられます。短期記憶とは一時的な情報保持に役立つ能力です。たとえば、スーパーに行くときに買うものを覚えておく際には、短期記憶が使われます。
一方、長期記憶は長期間にわたって情報を保存し、必要に応じて取り出す能力です。たとえば、以前出会った人の名前を思い出し、挨拶するときに口に出すなら、長期記憶が活用されていると考えられます。
言語能力
言語能力とは、言葉を使って他者とコミュニケーションを図る能力です。言葉を理解し、文章として話すこと、適切な文脈で適切な言葉を使用することなどが含まれます。
高齢者は言語能力が低下しやすく、円滑なコミュニケーションを取りにくくなるケースも珍しくありません。そのため、言語能力を維持するために継続的に学習したり、脳の言語領域を刺激したりすることが推奨されます。
また、適切な言語能力を維持することは、精神的な健康維持のためにも必要な要素です。言語能力が低下すると、言葉を理解できなくなったり文字が書けなくなったりといった失語状態に陥ることもあります。
判断力
判断力とは、情報を分析し、適切な結論を導き出す能力のことです。状況を正しく把握する力や、一つのことに集中する力も含まれます。私たちは日常生活のなかで、選択や決断をする際に判断力を活用しているのです。
しかし、加齢による脳機能の低下は判断力にも影響を及ぼします。とくに高齢者は、徘徊や反社会的な行動、ミスの増加といった問題が起こりやすくなります。さらに、詐欺に引っかかりやすくなったり、危険な判断ミスをしたりすることもあるため注意が必要です。
計算力
計算力とは、数値を用いて問題を解決する能力のことです。たとえば、買い物をしたり、家計を管理したりする際には計算力が欠かせません。時間を管理して無理のないスケジュールを立てたり、約束に遅れないように逆算して行動したりすることも、計算力に基づきます
計算力はほかの認知機能とも密接に関係しているため、脳の健康を総合的に維持することが計算力維持に不可欠です。また、認知機能のなかでも計算力は比較的早期に衰える傾向にあるため、若いときから鍛えておくようにしましょう。
遂行力
遂行力とは、計画を立てて実行する能力のことです。目標を定めることや行動を調整すること、結果を評価することなども遂行力に含まれます。
加齢により認知機能が低下すると、2つ以上の作業を並行して実施することが難しくなったり自発的な行動が減ったりすることが珍しくありません。社会生活だけでなく日常生活に支障をきたすこともあるため、注意が必要です。
認知機能に関連する脳の主な部位
人間の脳のなかでは、前頭葉が言語産生を、側頭葉が言語理解を担っています。また、大脳辺縁系の海馬(かいば)は記憶の形成に関わる部位です。そのため、海馬や周辺に障害が生じると、新しい記憶を形成できなくなることがあります。
ただし、認知機能は、脳の特定の部位が作用して適切な機能を維持しているのではありません。各部位が相互に連携することで認知機能を維持しているため、ある一つの部位が障害を生じることで、複数の認知機能に影響を及ぼす可能性があります。
脳の部位 | 主な機能 |
---|---|
前頭葉 | 実行機能、計画立案、意思決定、言語産生 |
頭頂葉 | 空間認知、感覚情報統合、計算能力 |
側頭葉 | 聴覚処理、言語理解、長期記憶、物体認識 |
後頭葉 | 視覚情報処理、色彩・形状認識 |
大脳辺縁系 | 感情処理、動機付け、記憶形成 |
小脳 | 運動学習、バランス制御、認知機能調整 |
認知機能が低下する原因は?
認知機能を低下させる原因は加齢だけでなく、病気の影響も考えられるでしょう。ここでは、人気に脳の低下を招く原因を詳しく解説します。

加齢
認知機能を低下させる最大の要因は加齢といわれています。加齢とともに脳細胞が変性し、少しずつ脱落して脳の萎縮をもたらすと、記憶力や判断力の低下がみられることも少なくありません。個人差はありますが、もの忘れが生じたり、動作が緩慢になったりすることもあります。
加齢のほかに認知機能が低下する原因
生活習慣病が認知機能の低下を引き起こすことも少なくありません。たとえば、神経変性疾患や脳疾患は、生活習慣病が原因となることもあります。
また、運動不足や不規則な生活、栄養の偏りなども認知機能低下の原因の一つです。普段の生活を見直し、生活習慣病を予防することが、認知機能の低下を予防することにもつながるでしょう。
神経変性 疾患 |
アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、ピック病、レビー小体型認知症(レビー小体型認知症)など |
---|---|
脳疾患 | 脳梗塞・脳出血(血管性認知症)など |
感染症 | クロイツフェルト・ヤコブ病 |
内科系疾患 | 甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、脱水など |
精神疾患 | 統合失調症、うつ病など |
認知機能の低下を早期発見する方法
認知機能の低下は誰にでも起こり得ます。しかし、早く気づくことで、低下を遅らせることは可能です。早期に発見する方法を紹介します。
認知機能障害のサインを見逃さない
自分を客観的に観察し、「もの忘れが増えた」「同じことを指摘される」といったちょっとした異変を見逃さないことが大切です。一般的に高齢の方や脳卒中などの既往歴のある方、喫煙や飲酒の習慣がある方、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症の方は、認知機能障害の発生リスクが高いといわれています。
また、買い物や金銭管理が難しくなったときは、もしかしたら認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)のサインかもしれません。早めに医療機関を受診しましょう。
認知機能検査を受ける
定期的に認知機能検査を受けることも大切です。たとえば、HDS-RやMini-Cog、MMSE、MoCAなどの検査により、認知機能の低下を客観的に評価できます。また、血液検査や脳のCT・MRIにより、認知機能の低下につながる治療可能な病気を発見できることもあります。
認知症の診断を受ける
認知症の診断には、DSM-5やICD-10、11などの診断基準に基づく専門医による総合的評価が必要です。自己診断して悩んだり、機能低下を見逃したりしないためにも、気がかりなときは早めに専門機関を受診することが望ましいといえます。
認知機能の低下を防ぐためには?
認知機能の低下は、ある程度予防することが可能です。認知機能の低下を防ぐためにも、今すぐ実施したいことを紹介します。
生活習慣病を予防・治療する
高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病は、認知機能の低下に深く関わっています。認知機能を維持するためにも、生活習慣病の予防に努めること、生活習慣病を早期治療することが大切です。
生活習慣病の予防・治療には、健康的な生活が欠かせません。認知機能を維持し、活力ある日々を過ごすためにも、生活習慣を見直してみましょう。
定期的な運動を心がける
定期的な運動は認知機能低下の予防に効果的であることは、さまざまな研究により証明されてきました。運動すると血流が促進され、脳の神経細胞の成長を助けます。有酸素運動や筋力トレーニングを組み合わせ、認知機能の維持・向上に努めましょう。
また、ウォーキングやジョギング、サイクリングといった比較的負荷の少ない運動でも、週に数回取り組むことで、脳の健康維持に役立ちます。
日常生活で達成感を味わう
日常生活で達成感を味わうことは、認知機能の向上に寄与するといわれています。小さな達成感であっても脳細胞を刺激し、ポジティブな感情を引き出すことが可能です。たとえば、趣味や仕事で目標を設定し、一つひとつ達成することで、自己肯定感を高めてみてはいかがでしょうか。
認知症予防のための脳トレを行う
脳トレーニングも、認知症の予防に効果的といわれています。たとえば、クロスワードパズルや数独、記憶力を使ったゲームなどは、新しい神経経路を形成し、脳の活性化を促進する活動です。また、演奏したことがない楽器にチャレンジする、新しい言語を習得するといった活動も脳機能の向上に役立ちます。
認知機能を定期的にチェックしよう
認知機能の低下は誰にでも起こりうることです。しかし、新しいことにチャレンジしたり生活習慣病の予防・改善に努めたりすることで、ある程度予防できます。
認知機能を定期的にチェックすることも大切です。もの忘れや判断力の低下などが気になったときはもちろんのこと、定期的に専門機関を受診し、認知機能を客観的に調べてみるようにしましょう。
また、認知機能や認知症に関する新しい情報を入手することも大切です。ぜひ最新研究にも注目し、認知機能低下の予防に活かしていきましょう。