“飲むサプリ”はなぜ生まれたのか――サントリー「ロコモアWATER」「セサミン1000」が広げる健康習慣の選択肢

サントリービバレッジ&フード株式会社 SBFジャパン ブランドマーケティング本部 中野未菜さん

2026年4月、サントリーは、サプリメントブランド「ロコモア」「セサミン」から、「ロコモアWATER」「セサミン1000」を発売しました。いずれも、サプリメントで培ってきた知見を生かし、500mlの飲料で手軽に取り入れられるようにした“飲むサプリ”です。
背景にあるのが、サントリービバレッジ&フード株式会社が2025年4月に新設した「新価値創造部」を中心に進める「新価値創造プロジェクト」。ブランドやカテゴリーの枠を超え、生活者が飲用によって得られる価値を起点に、国内外で新たな市場づくりを目指しています。海外ではタイで3月に水分補給飲料「Hy! WATER LOCK」を発売しており、その国内第一弾となるのが今回の2商品です。
なぜサプリメントを飲料にするという発想が生まれたのでしょうか。本商品のブランド担当である、サントリービバレッジ&フード株式会社 SBFジャパン ブランドマーケティング本部の中野未菜さんに、開発の背景や商品設計の工夫、発売後に見えてきた反応などについて聞きました。

サプリメントを飲料という新しい形に

国内のサプリメント市場は約1.1兆円規模(富士経済調べ、2025年見込み)。一方で、サントリーの推計(MDB健康ニーズ調査2023より)では、サプリメントを利用している人は約3割にとどまります。サントリーが行った調査でも、特に40〜60代には、サプリメントを飲むこと自体にハードルを感じている人や、飲み始めても継続に至らない人が一定数いることがわかりました。
「健康への関心はあっても、『サプリメントを飲むのはもう少し年齢を重ねてから』『まだ自分には必要ない』と感じている方がいらっしゃいます。また、毎日決まった数の粒を飲み続けることを負担に感じる方もいます」(中野さん、以下同)
実際、既存のサプリメント「ロコモア」は1日6粒、「セサミンEX」は3粒が目安。さらに、サントリーウエルネスのサプリメントは通信販売が中心のため、初めて利用する人にとっては、通販で最初から1カ月分を注文することにも、一定のハードルがあるといいます。
そこで考えたのが、サプリメントの価値を、より日常に取り入れやすい「飲料」という形で届けることでした。

2026年4月に発売された「ロコモアWATER」「セサミン1000」

「飲料であれば、普段の買い物の中で目に触れ、量販店などで1本から購入できます。サプリメントにはまだ手が伸びない方にも、まずは気軽に試していただける。健康習慣の新しい入口をつくれるのではないかと考えました」

発売前の2025年10月に行った定性調査でも、「おいしく飲めるのが新しい」「ドリンクなら飲んでみたい」といった声が寄せられました。

数あるサントリーウエルネスのブランドの中から「ロコモア」と「セサミン」が選ばれたのは、いずれも同社を代表するブランドだったからです。「ロコモア」は、2013年の発売以来、累計販売本数が5,000万本を超える主力ブランドの一つで、関節・筋肉サポートカテゴリーでサプリメント売上No.1(富士経済調べ)です。一方、「セサミン」は30年以上の歴史を持つ商品です。40代以上の認知率は、「ロコモア」が70%超、「セサミン」が80%超(同社調べ)に達しています。サントリーでは長年にわたりごまの研究もしています。新しい形でお客様との接点を広げていくうえで、まずはこの2つからスタートしました。

そして、“飲むサプリ”と呼ぶ所以は、中味にもあります。
「『セサミン1000』は、1本にサプリメント『セサミンEX』の1日分と同量となるセサミン10mgを配合。これはごま約1000粒分に相当する量で、商品名の『1000』もここに由来しています。また『ロコモアWATER』も、配合量がすべて同じではありませんが、4つの成分はサプリメントと基本的に同じものを使っています」
「ロコモアWATER」の4成分は、ケルセチン配糖体、アンセリン、グルコサミン塩酸塩、コンドロイチン硫酸。「セサミン1000」には、カルシウムとマルチビタミン(ビタミンB6、パントテン酸)も配合されています。

グループの知見をつないだ商品開発

「ロコモアWATER」と「セサミン1000」は、さまざまな事業の知見や資産を横断的に活用する中で生まれました。サプリメントを飲料にするというアイデア自体は比較的早く出てきた一方、難しかったのは、それを実際の商品として形にすることだったと中野さんは話します。
その難しさの一つが、サプリメントに使われてきた成分を飲料に配合するための技術です。
たとえば「セサミン1000」のセサミンは、ごまに1%未満しか含まれない希少な成分。まずはごまから効率よく取り出さなければなりません。それを可能にしているのが、サプリメントで積み重ねてきた研究です。さらにセサミンは油溶性のため、水が主体の飲料に溶け込ませるには乳化が欠かせません。

「サントリービバレッジ&フード、サントリーウエルネス、サントリー生命科学研究所の三者の意見が詰まっています」

「油と水は本来なじみませんが、それを飲料に溶かし込み、しかもおいしく仕上げる。中味開発部門とサプリメント側、それぞれの知見を融合してできたものです」

もう一つの難しさが、「ロコモアWATER」の原料由来の特有の風味やクセです。筋肉由来成分や軟骨由来成分は、魚や豚の軟骨などから得られるもの。
「そのまま水に入れると、独特な風味、クセがそのまま出てしまいます。そこをマスキングや中味の調合技術によって、レモン風味の爽やかな味わいにし、デイリーにおいしく飲めるものに仕上げました」

セサミンの乳化も、「ロコモアWATER」の味づくりも、一つの部門だけで実現できたものではありません。開発にはサントリービバレッジ&フード、サントリーウエルネス、サントリー生命科学研究所の三者が参加。中味開発や研究部門も初期段階から加わり、それぞれの強みを持ち寄って商品化を進めました。新価値創造部は、マーケティング、生活者理解、R&Dを一体で動かす体制をとっており、グループの研究機関やウエルネス事業とも“スクラム体制”を組んでいます。

サプリメントの成分と「おいしさ」を両立

商品設計で最も重視したのが、飲料としての「おいしさ」です。
「どれだけサプリメントの成分が入っていても、おいしくなければお客様に手に取っていただけませんし、その後も続けて買っていただけません。飲料としてのおいしさとサプリメントの成分を両立させるところが、商品開発の腕の見せどころでした」(中野さん)
ただ、前例のない商品だけに、目指す味の基準がありません。何をベンチマークにするのか、チームで時間をかけて検討したといいます。
「『ロコモアWATER』は、味を決める以前に、どの飲料カテゴリーにするのかというところから議論しました。日常的に飲んでもらうなら、お茶がよいのではないかという案もあったほどです」

味わいの候補も、花椒や柑橘ピール、ブラッドオレンジ、グレープフルーツなど多岐にわたりました。決め手になったのは、「どんな場面で飲んでもらうか」という視点です。
「ウォーキングや日々のちょっとした運動から、しっかり体を動かすときまで、幅広いシーンを想定しています。そうしたときにスポーツドリンクが飲まれているところに、新しい選択肢として入っていけたらと考え、爽やかですっきりとしたレモン味を選びました」

「朝食時やスポーツ時など、様々なシーンでお飲みいただければとおもいます」

具体的には、後切れのよいグリーンレモンに、ほのかにハーバルな余韻を残すレモンブロッサムの香りを重ねた組み合わせ。一般的なスポーツドリンクより甘味と酸味を高めに設計し、クセのあるサプリメント原料を感じさせない仕上がりにしています。味の検証には、中高年以上の社員を対象にした社内インタビューも活用しました。

「セサミン1000」は、比較的早い段階からヨーグルトテイストという方向性が定まっていたといいます。イメージしたのは、一日の始まりや、ちょっとひと息つきたいときです。
「朝起きたときに『今日も一日頑張ろう』というタイミングなどを想定しました。実際には、夕方や午後のおやつ休憩に飲まれている方も多く、そうしたときにも手に取っていただける味わいを意識しています」
開発でこだわったのは、酸味と甘味のバランス。満足感がありつつ、後味はすっきりと飲みやすく仕上げています。

「サプリらしさ」と「飲料らしさ」を伝えるパッケージ

パッケージでも課題となったのが、サプリメントブランドの商品であることと、飲料としてのおいしさをどう両立させるかという点です。
「『ロコモアWATER』『セサミン1000』は、いずれも一般食品で、機能性表示食品ではありません。そのため、機能性表示食品のように商品の機能をうたうことはできず、既存のサプリメントブランドとのつながりをどう伝えるかが重要になりました」(中野さん)
さらに、500mlで希望小売価格は170円(税別)。店頭でほかの飲料と比較したときにも価格に納得してもらえるよう、パッケージではサプリメントブランドであることを前面に出したといいます。
商品名も、ブランド発の飲料であることが一目で分かる「ロコモアWATER」「セサミン1000」というシンプルなネーミングに。「ロコモアWATER」では、「筋肉由来成分」「軟骨由来成分」を大きく表示し、既存の「ロコモア」でも使われている赤い歩行のピクトグラムを配置しています。

一方で、サプリメントらしさを強く出しすぎると、別の問題も生まれます。
「健康やサプリメントの印象が強くなりすぎると、どうしても飲料としておいしそうに見えなくなってしまいます。逆に、嗜好性を高めすぎると、今度はなぜ170円なのかという商品の価値が伝わりにくくなる。そのバランスはチームで何度も話し合いました」

「パッケージにもこだわりの要素が詰まっています」

その結果、「ロコモアWATER」にはレモンと水しぶき、「セサミン1000」にはヨーグルトテイストをイメージさせる乳清のしずくをデザインに取り入れ、おいしさも表現。「ロコモアWATER」は果汁を使わないレモン味ですが、レモンのビジュアルで爽やかさを演出するなど、“おいしそうに見せる”ことに長けた飲料開発の知見が生かされています。また、共同研究を行った「サントリー生命科学研究所」の名称をパッケージに入れたのも、商品の確かさを伝えるための工夫です。ブランドロゴと成分表示で「信頼と納得感」を、シズル表現で「おいしさ」を、研究所名で「お墨付き」を伝える。この3つが、パッケージ設計の柱になっています。

発売後に見えてきた新たなユーザー

当初のターゲットは40〜60代。なかでも60代が中心になると見込んでいましたが、発売後は60〜70代の購入も目立っているといいます。
「サプリメントに興味はあったけれど、なかなか手が出なかったという方には、想定通り関心を持っていただけていると感じています。その一方で、定性調査などでお客様の声を聞いてみると、『以前はサプリメントを飲んでいたけれど、続かなくてやめてしまった』という方が、思っていた以上にいらっしゃいました。そうした方がまた戻ってきてくださっているのは、意外な反応でした」
さらに「セサミン1000」では、30代を中心とした比較的若い男性が手に取っていることも、発売前には想定していなかった動きだといいます。
「『セサミン』という名前を聞いたことがあり、健康によさそうというイメージを持っていただいていることに加えて、乳性飲料というカテゴリーも関係しているのではないかと考えています。これはあくまで仮説ですが、思っていたより若い男性にも手に取っていただいています」

健康習慣の選択肢を広げる

「飲むサプリ」が目指しているのは、サプリメントに代わるものをつくることではありません。それぞれの生活に合わせて、健康習慣を選べるようにすることだといいます。
「毎日決まった数の粒を飲むことにハードルを感じている方にも、好きな時間や場所で、手軽に、おいしく取り入れていただけるものを提供したいと思っています」
飲料をきっかけに「ロコモア」や「セサミン」を知り、サプリメントに関心を持つ人が出てくれば、それもグループにとっては喜ばしいこと。サプリメントブランドの力を借りて生まれた飲料が、今度はブランドへお客様を送り返す。グループ内にそんな好循環を生むことも、期待される役割の一つです。

ピクトマークと数字が目立つパッケージ

もっとも、現在の商品に満足しているわけではありません。サプリメント由来の価値と、飲料としての嗜好性。そのバランスには、まだ改善の余地があると中野さんは考えています。来年以降も工夫を重ねていく方針です。

「『飲むサプリ』の取り組みは、まだ始まったばかりです。『ロコモア』『セサミン』に限らず、サプリメントの成分をより多くの人が気軽に取り入れられる形にすることには、今後も挑戦していきたいです」

新価値創造部は、国内外で「1,000万ケース級」の新価値創造を目指しています。サントリーウエルネスが育ててきたブランド、サントリー生命科学研究所の研究知見、そして飲料開発で磨いてきた“おいしさ”の技術。それぞれを事業会社の枠を越えてつないだことで、これまでサプリメントに手が伸びなかった人にも届く、健康習慣の新しい入口が生まれました。「新価値創造」の国内第一弾となった2商品には、サントリーグループの総合力が詰まっています。

取材・文/坂本アヤノ 写真/関大介


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