アイスタイルが拓く、インナーケアの未来――サプリを売るのではなく、“続ける文化”を育てる@cosme+の挑戦

株式会社アイスタイルプロダクツ 寺田麻佑子さん

日本最大のコスメ・美容のプラットフォーム「@cosme」を運営する株式会社アイスタイル(以下、アイスタイル)。同社は2025年7月、初のインナーケアブランド「@cosme+(アットコスメプラス)」を立ち上げ、サプリメント市場に参入しました。スキンケアやメイクアップの情報を提供してきたプラットフォーム企業が、なぜ自社プロダクトを開発したのでしょうか。そこには、生活者の「選びにくい」「続けにくい」という悩みに向き合うだけでなく、自らが主体者となってインナーケア市場そのものを育て、美容習慣の一つとして根づかせたいという考えがあります。

ここでは、アイスタイルグループの株式会社アイスタイルプロダクツの寺田麻佑子さんに、ブランド立ち上げの背景や商品開発、継続のための仕組みづくり、今後の展開について聞きました。

生活者の声から生まれたインナーケアブランド

@cosme+は、@cosmeに集まる生活者の声から生まれたインナーケアブランドです。「未来の自分から、ありがとうと言われる習慣を。」をメッセージとして掲げています。

現在の商品ラインナップは2つ。2025年7月1日に発売した第1弾の「@cosme+ The Basic Supplement」は、『肌のうるおいを守るスキンケアサプリ』です。こんにゃく由来グルコシルセラミドを機能性関与成分とする機能性表示食品で、セラミドと7種類のビタミンを配合しています。フレーバーはピュアセラミド、フレッシュピーチ、ビターオレンジの3種類です。

セラミドやビタミン7種類をベースに、白玉乳酸菌、L-シスチン、アスタキサンチンなどを配合した「@cosme+ The Basic Supplement CLEAR」

2026年5月に発売した第2弾の「@cosme+ The Basic Supplement CLEAR」は、透明感ケアに着目した栄養機能食品です。セラミドやビタミン7種類をベースに、白玉乳酸菌、L-シスチン、アスタキサンチンなどを配合し、シャインマスカット味で展開しています。紫外線を浴びた後の美容ケアや年齢による肌印象の変化が気になる方に寄り添った商品です。

「土台ケアだけをしたい場合は第1弾の商品、透明感ケアまでしたい場合は新しいCLEARという考え方です。サブスクでは組み合わせもできるので、自分の悩みや気分に合わせて選んでいただけます」(寺田さん、以下同)

いずれも、水なしで飲める顆粒タイプを採用しました。サプリメントを美容のために続けるものとして日常に取り入れてもらうため、成分だけではなく、味、形状、パッケージ、購入後のコミュニケーションまで設計しているのが特徴です。

自らプロダクトを届け、市場を育てる主体者へ

@cosmeは、化粧品や美容に関する情報提供、クチコミ、購買接点を通じて、生活者とブランドをつないできました。一方で、美容への関心はスキンケアやメイクアップにとどまらず、インナーケア、美容医療、フェムケアなどへ広がっています。

その中で、@cosme+はインナーケア領域における新しい取り組みとして立ち上がりました。情報提供やクチコミの場として確固たる地位を築いてきた@cosmeが、なぜ自社プロダクトを立ち上げたのか。寺田さんは、生活者の声を聞く中で、インナーケアには特有の難しさがあると感じていたと言います。

「インナーケアは続けていくこと、習慣になっていくことが大切ではないかと思います」

「もちろん、情報を発信していくという選択肢もありました。ただ、お客様の声を聞いていると、サプリメントは商品選びが難しいという意見が多くて。成分で訴求する商品が目立ち、自分に必要なものをどう見極めればよいか分からない。実際に買っても続けにくいという声も少なくありません。情報提供だけでは解決できない部分があり、ならば自らプロダクトを開発・提供することで解決できないか、と考えました」

構想が動き出したのは2024年頃。タスクフォースとしてマーケット調査やビジネスモデルの検討を始め、その後正式に子会社を設立し、ブランド化へと進みました。

「スキンケアは外からのケアというイメージが強いですが、中からのケアも組み合わせることで、より相乗的なアプローチができると考えています。美容のためのインナーケアを実践している人はまだ少数派だからこそ、スキンケアの延長線上に中からのケアがあることも啓発していきたい」

自らメーカーになることは、他の出品ブランドとの競合を招くリスクもあります。ただし寺田さんは、インナーケアという領域を選んだこと自体に、前向きな意味があると話します。

「インナーケアの領域は、生活者の関心が徐々に高まっているものの、市場全体としては、今後さらに成長していくものだと感じています。だからこそ私たち自身が一メーカーとなり、主体者として市場そのものを底上げしたいと考えました。市場のパイを広げることができれば、ブランドさんの不利益にはなりません。課題を共有し、ともに市場を育てていく。また、他社のスキンケアブランドの製品と組み合わせて提案できる存在になれると考えています」

市場の入口を見極める――データから導き出した「うるおい」ケア

市場を育てる第一歩は、生活者が最初に手に取りたくなる商品を見極めることでした。@cosmeの閲覧・検索データを分析すると、肌の悩みとして最も多かったのは「乾燥・うるおい」で、次いで「シミ・くすみ」「ハリ・弾力」。当初はこの3つの悩みに応じた商品展開も検討しましたが、店舗美容部員の教育を担当してきたプロフェッショナルたちとの議論を経て、最初に注目すべきは「うるおい」だという結論に至りました。

アットコスメトーキョーのインナーケアの棚に並べられた商品と店頭ポップ

「肌の構造を改めて学び、悩みの根源をたどると、結局はうるおい不足に行きつくと気づいたんです。うるおいを失ってバリア機能が低下すると、様々な肌トラブルの引き金になってしまう。だからこそ、まずは肌のバリア機能(保湿力)を高め、土台を整えるケアから始めようと決めました」

こうして生まれたのが「@cosme+ The Basic Supplement」でした。セラミドとビタミンを組み合わせ、肌の土台をケアするという設計思想が込められています。

「続かない理由」を解消し、習慣として根づかせる

インナーケアが市場として育つには、生活の中に習慣として根づく必要があります。そのため成分に加えて重視したのが「続けやすさ」です。開発ではアンケートに加え、サプリメントのヘビーユーザー層・ライトユーザー層双方へのフォーカスグループインタビューも実施しました。

「どれだけ成分が良くても、続かないという声が多く寄せられました。粒が大きくて飲みづらい、味やにおいが苦手、薬を飲むような義務感がある。ヘビーユーザーは我慢して飲めても、ライト層にとっては毎日の苦痛になってしまう。大きな一つの課題というよりは、小さな違和感の積み重ねが続かない理由だったんです」

錠剤ではなく顆粒タイプを採用したのはそのためです。原料のにおいをマスキングし、複数のフレーバーで飽きも防ぎました。パッケージも、箱を自立させ上部を切り取ってそのまま置ける仕様にし、キッチンや洗面所など目につく場所に置けるよう工夫しています。

「収納の奥にしまい、買ったこと自体を忘れる人もいます。日常の小さな行動が、続けられないことに関係している。そうしたユースケースを洗い出し、一つひとつ解消していきました」

コミュニティとともに「継続する文化」を育てる

@cosme+の強みは、@cosmeが長年培ってきたユーザー基盤にもあります。商品を売って終わりではなく、続ける人たちの輪を広げていく――それ自体が市場を育てる取り組みです。ローンチ当初から続けているのが、毎月開催するオンラインお試し会です。

「インスタライブやオンラインお試し会を通じて、ワクワクとした気分を届けられたらと」

「サプリメントは化粧品と異なりテクスチャーがなく、変化が緩やかで分かりにくかったり時間がかかったりすることから、多くの人が途中で挫折してしまいます。だからこそ、なぜその成分を入れているのか、どのような考えで設計したのかを直接伝え納得して始めていただける場が必要でした」

当初はオフラインでも開催しましたが、参加人数に限りがあったため現在はオンライン中心です。@cosme内で参加者を募集し、Zoomで配信。ウェビナー形式で顔が見えないため、参加者はリラックスして参加できます。

さらに重要なのは、商品説明にとどまらず、参加者がインナーケアを始めようと納得しモチベーションが高まった瞬間に、公式Instagramのフォローを促し、継続的なコミュニケーションへつなげることです。

「購入者限定の定期イベントや、月1回のインスタライブを開催しています。『今月は皆さん、ちゃんと飲めましたか?』と問いかけ、画面越しにみんなで袋を開けて『乾杯!』をして飲む。商品の良さを楽しく学ぶクイズ大会を行うなど、参加型のコミュニティ形成を目指しています」

この発想の原点は、寺田さんがかつて担当したコスメのサブスク「BLOOMBOX by @cosme」での学びにあります。「毎月何が届くか分からないワクワク感が継続につながっていた。サプリは毎月同じものが届くので、そのワクワクをフレーバーの選択やイベントに落とし込みました」

スタッフや他ブランドとともに、市場の裾野を広げる

市場を育てる姿勢は、店舗スタッフへのアプローチにも表れています。寺田さんは商品発売前にスタッフ向け研修を美容部員教育チームと合同で作成・実施し、商品特徴だけでなく、どのような顧客にどのような言葉で紹介するかまで共有しました。
「スタッフ自身が『良い』と思わないと、商品はただ棚に置かれているだけになってしまいます。トークパターンも含めてインプットし、飲んだことがないものは紹介できないため、一定期間飲み続けられる量を配布し、自分の体験として語れる状態を目指しました」

興味深いのは、@cosme+が自社ブランドだけで閉じていない点です。Instagramではブランド情報の発信に加え、インナーケアそのものを盛り上げる場としても活用し、他ブランドとのコラボイベントも実施しています。

@cosme+のインスタグラムではインナーケア全般の投稿もされています(ランキング集計期間:2026/3/4~2026/6/3)

「@cosme+は一つのブランドにすぎません。インナーケアが少しずつ盛り上がってきている段階だからこそ、他のブランドさんとも一緒に、当たり前の習慣にしていきたい。競合というより、文化形成を一緒に進めたいという気持ちです」

紫外線シーズンや秋冬をテーマにした勉強会では、サプリメントだけでなく睡眠・食事・生活習慣も含めた情報を届けています。プラットフォーム、店舗、スタッフ、ユーザーコミュニティを持つアイスタイルならではのブランド育成であり、市場を育てる主体者としての取り組みと言えそうです。

インナーケアを、当たり前の美容・健康習慣へ

現在の購入者は30代以上の女性が中心です。ただし、ブランドとして女性に限定しているわけではありません。男性のスキンケア意識も高まり、プロテインなどを日常的に取り入れる人も増えています。サプリメントは、外側からのスキンケアよりもハードルが低い可能性があります。

歴代のベストコスメが並ぶ、@cosmeベストコスメアワードコーナーの前で

「今は@cosmeをメインに使いながら情報を届けているので、どうしても女性が中心です。ただ、男性にも使っていただける商品ですし、デザインもユニセックスにしました。伸びしろとして期待しています」

今後は、店頭の棚づくりやイベントを通じて、既存のスキンケア商品と組み合わせた提案にも取り組みたい考えです。外側からのスキンケアと内側からのインナーケアをどうつなぐか。そこに、@cosme+の次の可能性があります。

インナーケアは、まだ一部の美容感度の高い人たちのものかもしれません。だからこそ、知るきっかけをつくり、選びやすくし、続けられる場をつくることが必要になります。

「中からのケアも取り入れてみたいと思うきっかけをつくりたい。インナーケアを楽しんで続けられる状態をつくることが、私たちの役割です」

@cosme+の挑戦は、単なる自社ブランドの立ち上げではありません。生活者の声を起点に、自らが主体者となってインナーケア市場を育て、美容の選択肢として広げていく試みです。スキンケアを「塗る」ものから、「内側からも整える」ものへ。@cosme発のインナーケアブランドは、美容・健康習慣の新しい入口をつくろうとしています。

取材・文/大正谷成晴 撮影/関大介


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