「NNB10キートレンド」はこうやって読み解く!
日本人が知っておきたい食品健康ビジネス最先端【後編】

キートレンド3「植物を便利に」、キートレンド4「スイッチが入った動物性プロテイン」

キートレンド3の「植物を便利に」についてご解説ください。

これはプラントベースやビーガンなどの話ではなく、皮をむいたり切ったり調理しないと食べられないような野菜や果物を手軽に食べやすくするという意味のトレンドです。メガトレンド2の「天然の機能性」による健康ハロー効果も持ち合わせ、中でもボタニカル製品は静かに成長するチャンスがあると言ってよいでしょう。
これがトレンドである理由は米国での消費者調査からも明らかで、約3割の消費者が野菜や果物を含む食品が健康的であると回答し、その割合は良質なたんぱく質を含む人とほぼ同等かつ、天然や食物繊維などの要素よりも上位でした。このトレンドはプラントベース乳代替品と同じ、あるいはプラントベース肉代替品よりも大きな市場に発展するだろうと予測されています。

決して野菜や果物を肉や魚よりも多く摂るということではありません。一言でいうと、どちらも食べつつ、パンやスナック、おかずといった中に野菜や果物を取り入れたり、一部を植物に置き換えたりする方法です。

「植物を便利に」の戦略と具体的な事例には、どのようなものがありますか?

4つの戦略と5つの関連するキートレンドがあり、賢い企業経営者たちはプラントベース食が消費者にとって、嗜好のレパートリーの中の一部に過ぎないということを知っています。大切なのは、利益に焦点を当てて健康ハロー効果を持つ素材を再認識する必要があるということです。「プラントベース」や「ビーガン」というメッセージは、これまでの経緯からかえって良くない印象を消費者へ与える可能性があることに注意してください。

1つ目の「ヒーローとしての植物」は、今やスーパーでは一般的な戦略です。事例としては、“ご褒美”を前面に打ち出したクリーミーかつ贅沢な味わいで野菜が主役のディッシュシリーズ「Bake®」(Birds Eye社、米国)や、本来なら廃棄されるはずだった野菜を使って作られたチップス「Confetti®」(シンガポール)などがあります。
そして2つ目の「炭水化物を本物の野菜に置き換える」は、パスタやライスなどを野菜に置き換える戦略です。日本で言うなら牛丼のご飯がブロッコリーになるようなものでしょう。2014年に登場したこの戦略は米国で着実な成長を見せ、欧州やその他の地域にも広まってきています。

3つ目の戦略で「ボタニカルの健康ハロー効果」はハーブやスパイス原料など、消費者も理解しやすいため注目されています。例えば、ココナッツヨーグルトやウコンと黒胡椒を使ったショット飲料、シナモンのバー、ターメリックのパスタなどその多くが昔から身近にあるような素材です。
さらに4つ目の「収益性の高いパウダー」という戦略は、日本のもので言うなら青汁みたいなものでしょう。色々な料理に加えてアレンジの幅が広いだけでなく、腐りにくいのも重宝します。そして、野菜や果物にありがちな個体差がないために保証された量を計って摂取することができるのも指示されている理由です。
このふたつの戦略を組み合わせたものは「スーパーフードパウダー」と呼ばれ、世界で約45億ドル市場と推定されています。

キートレンド4の「スイッチが入った動物性プロテイン」についてご解説ください。

動物性プロテインは欧米やアジアでの需要を拡大しながら、特に乳製品のカテゴリーが好調です。一方で、食肉生産企業も着実な伸びを見せています。例えば、牛のコラーゲンがプラントベース食品を好む若い消費者(特にZ世代とミレニアル世代)の間で需要が急増しているのは、より良い肌や髪などを作るために動物性プロテインが有用だということを理解しているからでしょう。
未だに畜産や酪農は地球環境によくないというネガティブな風潮はあるものの、消費者にとって魅力的なメリットがあれば受け入れられるというのが一般的になってきました。その一環として食肉生産業者のカーボンゼロへの取り組みなど、より良いサステナビリティの実現に向けて動き出しているのも注目すべき部分です。

「スイッチが入った動物性プロテイン」の戦略と具体的な事例には、どのようなものがありますか?

戦略は8つあり、7つのキートレンドと関連しています。2016年頃から業界を含めて消費者は、植物性たんぱく質の強い戦略に惑わされてきました。しかし、米国で2020年から2022年の間に調べた売上高を比べると、プラントベース肉代替品は減っているのに対して動物性の肉類は成長し、はっきりと消費者の好みを示した形です。これには、食料品店で最も成功しているカテゴリーがミートスナックだというのも頷けます。
ここで成功するには、動物性プロテインを摂ることが消費者にとって健康面と精神面の両方に、複数のメリットがあるということを伝えると良いでしょう。

動物性プロテインには他にない強力な優位性が存在します。それは食感やおいしさを始め、汎用性の良さや栄養素密度が高いことは言うまでもありません。これに付け加えたいのが、動物福祉や地球にも優しいグラスフェッド、そしてサステナビリティです。極めつけは来歴で、文化は戦略にも勝るとの言葉にある通り重要なメッセージとなります。

ウェルネス総研レポートonline編集部

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