04認知症コラム
認知症の方が同じ話を繰り返す原因は?
知っておきたい対処法も紹介
2026.01.30
認知症の方が同じ話を繰り返す行為は、ご家族にとって戸惑いやストレスの原因となりがちです。なぜ何度も同じ話をするのか、認知症の症状としてどのように進行するのか、疑問に感じる方もいるでしょう。この記事では、認知症の方が同じ話を繰り返す原因、否定せずに対話するための対処法を具体的にご紹介します。
目次
- 記憶障害により「話したこと」を忘れてしまうから
- 見当識障害により時間の感覚が曖昧になるから
- 思考の切り替えが難しくなる「保続」症状があるから
- 不安や孤独感を紛らわせたい気持ちがあるから
- 感情に結びついた記憶だけが残りやすくなるから
関するよくある質問 共感と自己ケアで穏やかなコミュニケーションを
同じ話を繰り返すのは認知症のサイン?
同じ話を繰り返すのは認知症の初期症状の一つ
同じ話を何度も繰り返すのは認知症のサインとして、とくに初期によく見られる症状です。単なる「もの忘れ」ではなく、出来事そのものを忘れてしまい、思い出す手がかりも残っていないことがあります。「話したこと自体を覚えていない」ため、繰り返し同じことを話してしまうのです。
もの忘れとの違いは?
日常生活への影響があるかどうかが判断のポイント
単なるもの忘れと認知症による症状の大きな違いは、生活への影響の度合いです。単なるもの忘れは、思い出せないことがあっても生活に大きな支障をきたすことはほとんどありません。
一方で、認知症の場合は、食事や服薬、約束など、日常の行動にも影響が出始めます。繰り返しの頻度や内容に注目することが、早期発見の手がかりになります。
認知症の方が同じ話を繰り返す5つの原因
なぜ、認知症の方は同じ話を何度も繰り返してしまうのでしょうか。そこには、単に記憶が失われること以外にも、認知症特有のさまざまな要因が関係しています。ここでは、その繰り返し行動の背景にある5つの具体的な原因について解説します。
記憶障害により「話したこと」を忘れてしまうから 見当識障害により時間の感覚が曖昧になるから 思考の切り替えが難しくなる「保続」症状があるから 不安や孤独感を紛らわせたい気持ちがあるから 感情に結びついた記憶だけが残りやすくなるから
記憶障害により「話したこと」を忘れてしまうから
認知症の代表的な症状である記憶障害により、とくに短期記憶がうまく保持できず、直前に話した内容をすぐに忘れてしまうことがあります。
本人にとってはその話が毎回「初めて話す」感覚であるため、同じ話を繰り返しているという自覚がないケースがほとんどです。
見当識障害により時間の感覚が曖昧になるから
認知症の症状である見当識障害は、「今がいつなのか」「この話をするのは何回目なのか」といった時間軸の認識を難しくさせ、同じ話を繰り返すことにつながります。
時間の流れが断片的になることで、話の順序や回数を本人が正確に把握できなくなり、結果として同じ話題を新鮮なものとして繰り返してしまうのです。
思考の切り替えが難しくなる「保続」症状があるから
脳の前頭葉機能が低下すると、思考の柔軟性が失われ、話題の切り替えがうまくできず同じ話を続けてしまうことがあります。これは「保続」(ほぞく)と呼ばれる認知症の症状の一つです。
保続は、自分から話すときだけでなく、質問に対して同じ答えを繰り返すなどの行動にも現れます。
不安や孤独感を紛らわせたい気持ちがあるから
同じ話を繰り返す行為は、単なる記憶の問題だけでなく、不安や孤独感を紛らわせたいという心理的な要因が関わっている場合もあります。同じ話題を話すことで、誰かに聞いてもらえる安心感を得ようとしているのです。
とくに、家族とのつながりを求める気持ちが強いと、慣れた話題を通じて交流を図ろうとし、結果として話が繰り返されることがあります。
感情に結びついた記憶だけが残りやすくなるから
認知症の方の記憶は、出来事の詳細は忘れてしまっても、そのときの「楽しかった」「怖かった」といった気持ちや感情だけが鮮明に残っているという特徴があります。その感情に結びついた話題は、本人にとって重要で安定した情報源となるため、何度も繰り返されることがあります。
この場合、話の中身そのものを伝えたいというよりも、残っている感情を誰かと共有したい、共感してほしいという心理的な欲求が背景にあることが多いです。
認知症の方が繰り返す話の内容には
どんな傾向がある?
認知症の方が繰り返す話には、いくつかの一定のパターンがあります。とくに、「昔の記憶」や「家族とのつながり」に関する話題は、感情と強く結びついているため、安定した情報として繰り返されやすい傾向があります。
また、「今日は何日か」「ご飯はまだか」など、日常生活の不安や確認事項も、記憶の不確かさから安心を求めて話題に上がることが多いです。
話の内容で、本人が何に安心を求めているのか、あるいはどのような気持ちを伝えたいのかという心理的な背景が見えてくることも多いため、注意深く観察することが大切です。
認知症の方が同じ話を繰り返すときの対処法4選
ご家族が同じ話を繰り返すとき、どのように対応すれば良いのか悩んでしまう方は多いでしょう。本人の気持ちを尊重し、お互いにストレスなく穏やかなコミュニケーションを続けるために、ここでは効果的な4つの対処法をご紹介します。
否定せずに共感を示す
同じ話を繰り返されても、否定せずにまずは受け止める姿勢が本人の安心感につながります。重要なのは、話の内容の真偽ではなく、本人の気持ちに寄り添うことです。
本人は話を繰り返している自覚がなく、注意したり指摘したりすることはかえって逆効果になることがあります。「そうだったんですね」「それは大変でしたね」など、共感的な返答を心がけましょう。
話に出てくるキーワードから話題を広げる
同じ話が始まったら、その話のキーワードを上手に拾い、別の話題へと自然につなげるのも効果的です。
たとえば、話に出てくる地名、人名、出来事など、本人が話しやすいテーマに展開することで会話がスムーズに広がります。話題を広げることで、繰り返しのループから自然に抜け出せることは多いです。
上手に聞き流す
同じ話に対して無理に毎回反応しようとせず、適度に聞き流すことも大切です。これは、介護する側の負担を軽減することにもつながります。
ただし、完全に無視するのではなく、「うんうん」「そうなんですね」といった簡単な相づちを打ちながら、穏やかな態度で対応することが重要です。本人の安心感を保ちながら、適度にやり過ごす術を身に付けましょう。
視覚的な情報を活用する
視覚的な情報として情報を見える形で残しておくと、繰り返しの頻度が自然と減る場合があります。「薬は飲んだ?」「今日は何するの?」など、確認事項の繰り返しにはとくに視覚的な情報が効果的です。
メモやカレンダーなどに予定や確認事項をわかりやすく書いておくことで、本人の記憶の掘り起こしを助け、不安を減らすことにもつながります。
認知症の人が同じ話を繰り返すときにやってはいけないこと
認知症の方の繰り返しの行動に対して、善意で対応したにもかかわらず、かえって本人の不安を増したり、症状を悪化させたりする原因になることもあります。ここでは、わたしたちがついやってしまいがちな、避けるべき3つの行動についてみていきましょう。
繰り返しを指摘する
「さっきも話したよ」と繰り返しを指摘することは、本人が傷ついたり、混乱したりする原因になります。
認知症の方は、その話をあくまで「初めて話している」と思っているため、注意や指摘は逆効果です。繰り返しを止めようとするのではなく、共感し、受け止める姿勢を意識することで、本人の安心感を与えましょう。
話を遮る・無視する
同じ話を途中で遮ったり、無視したりする行為は、認知症の方の孤独感や不安を強めてしまう原因になります。同じ話をすること自体が、本人にとっての安心材料になっている場合もあるため、内容が繰り返しであっても傾聴の姿勢が大切です。
受け止めて聞くことで、信頼関係が保たれ、精神的な安定につながります。
感情的に反応する
同じ話を聞き続けることに対するイライラをぶつけてしまうと、その感情は本人にも伝わり、不安が増したり、症状が悪化したりすることがあります。
また、感情的な対応は、介護する家族自身の疲労や、後悔による罪悪感にもつながりかねません。一度深呼吸をするなど冷静に対応し、穏やかな関係を保つように努めましょう。
認知症介護と向き合う家族の心の守り方
認知症の方の介護は、長期にわたり家族の心身に大きな負担をかけることがあります。介護を続けるなかで、ご自身の心と健康を守り、無理なく向き合うために知っておきたい4つの大切なポイントを押さえましょう。
完璧を目指さず「できる範囲」で向き合う
介護は、すべてを完璧にこなす必要はありません。他人と比較せず、自分たちのペースで向き合うことが、介護を長く続けるための何よりのコツです。
「うまくできない日があってもいい」と自分を許容するだけで、心の余裕が生まれ、結果的に穏やかな対応につながります。
- ポイント
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- 介護に完璧という考えは不要。他人と比較せず、自分たちのペースを守る
- 「うまくできない日があってもいい」と許容することで心の余裕が生まれる
自分の感情を否定せず受け止める
介護の負担から「イライラしてしまった」「つらい」と感じることは、ごく自然な反応であり、否定する必要は全くありません。「こんなこと思ってはいけない」と感情を押し込めるのではなく、「そう感じている自分」を認めることが何よりも心のケアにつながります。
ネガティブな感情も含め、自分の気持ちを言葉にするだけでも感情が整理され、心の疲弊を防ぐことができます。
- ポイント
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- 介護で感じるイライラや疲労感は自然な反応。「そう感じている自分」を否定せず認める
- 感情を押し込めず言葉にすることで気持ちが整理され、心の疲弊を防ぐことにつながる
一人の時間を意識的に確保する
自分の時間を持つことは、わがままなどではなく、介護を続けるうえで必要なセルフケアです。散歩、読書、趣味など、たとえ短時間でも「自分に戻れる時間」を意識的にスケジュールに組み込みましょう。
気持ちがリセットされれば、介護への集中力や穏やかに向き合える力が再び戻ってきます。
- ポイント
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- 自分の時間を持つことは必要なケアであり、わがままではない
- 短時間でも「自分に戻れる時間」を意識的に作り、気持ちをリセットすることが大切
外部の支援を積極的に取り入れる
一人で抱え込まず、必要に応じて介護サービスや施設入所なども選択肢に入れましょう。デイサービスや訪問介護に加え、状況によってはグループホームや特養(特別養護老人ホーム)などの入所も検討する価値があります。
外部の専門的な力を借りることで、家族の心身の負担が軽減され、結果として本人にもより安定した環境が提供できるようになります。
- ポイント
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- 一人で抱え込まず、介護サービスや施設入所も選択肢に入れる
- 外部の力を借りることで本人だけでなく家族の心身の負担も軽減される
認知症の方が同じ話を繰り返すことに関するよくある質問
家族や介護者にとって、認知症の方が同じ話を繰り返すという悩みは少なくありません。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。
認知症の症状として同じ話を繰り返すことはどのように進行しますか? 認知症以外に同じことを繰り返す理由はありますか? 認知症の方との会話の中で注意すべきことは何ですか?
Q認知症の症状として同じ話を繰り返すことは
どのように進行しますか?
同じ話を繰り返す行動は、認知症の初期段階から中核症状として現れる症状です。進行に伴い、話した内容を記憶し続けることがより困難になり、繰り返しの頻度が増す可能性があります。
また、見当識障害や思考の切り替えの難しさ(保続)といったほかの症状も加わり、会話や状況の理解が難しくなることで、生活への影響が大きくなっていきます。
Q認知症以外に同じことを繰り返す理由はありますか?
加齢に伴う一時的な記憶力低下のほか、不安障害や強迫性障害などの精神疾患の症状として同じ行動が見られる場合があります。また、強いストレスや孤独感から安心感を得たいという心理的な欲求で繰り返すケースもあります。
Q認知症の方との会話の中で注意すべきことは何ですか?
「なぜ忘れたの?」と追及したり、間違いを指摘したりすることは避けましょう。否定せず、笑顔で共感的な姿勢で接し、一文を短く区切ってゆっくり話すことが大切です。また、話の内容より「気持ち」を受け止めることが、本人の安心感につながります。
共感と自己ケアで穏やかなコミュニケーションを
認知症の方が同じ話を繰り返す原因は、記憶障害だけでなく、不安や保続といった複数の要因が絡み合っています。大切なのは、否定せず共感し、話を遮らないことです。また、介護者は無理をせず、外部の支援を活用することも重要です。記事でご紹介した対処法を取り入れ、認知症の方と介護者双方でストレスの少ない関係を築きましょう。
認知症ケアや介護では、症状の進行メカニズムを理解することも重要です。近年では、脳の「ガンマ波」と認知機能の関連性について、興味深い研究が進められています。この機会に「認知機能ケアプロジェクト」で、認知機能の維持に役立つ新しい情報を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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