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04認知症コラム

認知症の方のおしゃべりが止まらない場合の
対処法とは-原因についても解説

2025.11.28

認知症の方のおしゃべりが止まらない場合の対処法とは-原因についても解説

認知症でおしゃべりが止まらない場合、記憶の混乱や不安感など、さまざまな要因が関係しています。本記事では、認知症でおしゃべりが止まらない原因や、対応する際にやってはいけないこと、効果的な対処法をわかりやすく解説します。

おしゃべりが止まらないのは
認知症の進行のサイン?

認知症が進行すると、記憶の混乱から不安、孤独感を抑えるために口数が増えてしまう場合があります。また、過去の記憶が鮮明になって昔話を繰り返すケースや、環境が落ち着いて安心しているときに言葉が増えることも多いです。

ただし、感情表現の一環としてのおしゃべりは、むしろ本人の心が安定しているサインでもあり、必ずしも認知症の進行を意味するわけではありません。

認知症の進行を疑うサインの例
  • 同じ話を何度も繰り返す頻度が急に増えた
  • 話の内容が支離滅裂になってきた
  • 会話中に混乱や怒りが見られる
おしゃべりが止まらないのは認知症の進行のサイン? イメージ

認知症の方でおしゃべりが止まらない4つの原因

認知症の方がおしゃべりを続ける背景には、いくつかの心理的・認知的な要因があります。ここでは、主な4つの原因をみていきましょう。

記憶が混乱するから

認知症では短期記憶の保持が難しくなるため、同じ話を何度も繰り返すことがあります。本人は話した内容を覚えておらず、再確認のつもりで再び同じ話題を口にしてしまうのです。

また、自分の状況や記憶の混乱を言葉で整理しようとする心理も働いています。こうしたおしゃべりは、混乱の表れである一方、安心感を得るための行動でもあるため、焦らず穏やかに聞いてあげる姿勢が大切です。

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状況の把握ができておらず確認したいから

見当識障害の症状があると、時間や場所、人の認識があいまいになり、自分の置かれた状況を確認するためにおしゃべりが増えることがあります。「ここはどこ?」「今日は何曜日?」といった質問を何度も繰り返すのは、その不安や混乱を言葉で表そうとしているためです。

周囲から見ると同じ会話に感じられても、本人にとっては確認行為であり、安心を求める自然な反応です。落ち着いて優しく答えることが、不安の軽減につながります。

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不安や孤独を感じているから

認知症の方は、「何かを忘れているかもしれない」という不安を常に抱えており、その不安を和らげるためにおしゃべりが増えることがあります。安心感を得ようとして同じことを何度も尋ねたり、話しかけたりする健常者にも見られる自然な反応です。

また、「もっとかまってほしい」という気持ちの表れでもあります。こうしたおしゃべりには心のサインが隠れているため、穏やかに受け止め、安心できる環境づくりが大切です。

昔の記憶が鮮明になり話したくなるから

認知症の方は、最近の出来事よりも昔の記憶のほうが鮮明に残っていることが多く、思い出を語りたくなる衝動にかられる傾向があります。懐かしい話を繰り返すのは、過去を思い出すことで安心感や自己肯定感を得ようとしているためです。

また、家族や知人の名前を口にすることも、心の安らぎを求める行動の一つです。こうしたおしゃべりは、本人にとって前向きな感情の表れであり、穏やかに耳を傾けることでより安心した時間を過ごせます。

認知症の方に最後まで残る記憶について
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認知症でおしゃべりが止まらない方に
やってはいけないこと

認知症の方がおしゃべりを続けていると、対応に困ってしまうこともあるかもしれません。しかし、対応の仕方によっては本人を不安にさせたり、症状を悪化させてしまったりする場合もあります。

怒る・感情的になる

認知症の方に対して怒ったり感情的になったりすると、恐怖心や不安が強まり、症状が悪化する恐れがあるため注意が必要です。否定的な言葉を浴びせることで信頼関係が崩れ、以後のコミュニケーションが難しくなることもあります。

また、介護する家族側も感情を抑えきれずにストレスを抱えてしまうケースが少なくありません。おしゃべりが止まらないときほど冷静に受け止め、穏やかに対応することが、双方にとって大切です。

無視する・放置する

認知症の方のおしゃべりを、無視したり放置したりすることは避けましょう。強い孤独感や不安を感じさせてしまい、精神的なストレスの原因になります。自分が受け入れられていないと感じることで信頼関係が崩れ、心を閉ざしてしまうこともあります。

さらに、不安や怒りが募ると、言動がエスカレートして暴言や暴力的な行動につながる危険も高いです。たとえ対応が難しいと感じても、無視せず穏やかに寄り添う姿勢が大切です。

話を遮る・否定する

認知症の方の話を遮ったり否定したりすると、混乱や不安、さらには怒りを引き起こすことがあります。話の途中で、「違う」「もうその話は聞いたよ」といった否定的な言葉を使うと、本人は傷ついたり、孤独感を強めたりする可能性があります。おしゃべりが止まらないと感じても、途中で遮らず、まずは最後まで聞いて受け止めてあげましょう。

認知症の方にやってはいけない11のことについて
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認知症でおしゃべりが止まらない方にやってはいけないこと イメージ

認知症でおしゃべりが止まらない方と
接するときの4つの対処法

認知症の方がおしゃべりを続ける場面では、本人を不安にさせない、不快な気持ちにさせないための適切な対応が必要です。ここでは、具体的な4つの対処法をご紹介します。

会話を切り替える

認知症の方がおしゃべりを続ける際には、会話の話題を自然に切り替えることが効果的です。新しい話題を提供することで、会話を楽しみつつ気持ちを落ち着けられます。

また、ほかのことに意識を向けさせる工夫や、趣味や日常の楽しみに関心を引き寄せることも有効です。こうした対応により、本人の不安を和らげつつ、スムーズに会話を進められます。

おしゃべりが止まらないときの
会話の切り替えテクニックについて詳しくはこちら

聞いたことのある話にも初めて聞いたような返しをする

認知症の方に対しては、同じ話を繰り返す場合でも初めて聞いたかのように受け答えするのが適切な対応方法です。「さっき答えましたよ」と指摘すると、不安やいらだちを引き起こす原因になりかねません。

相手の目を見て、うなずきながら話を聞くようにすれば、安心感を与えつつ会話がスムーズに続きやすくなります。たとえ同じ会話でも、本人の気持ちを尊重する大切なコミュニケーションの一部と捉えることがポイントです。

上手に聞き流す

認知症の方のおしゃべりを上手に聞き流す対応も必要です。すべてを真剣に受け止めるのではなく、軽く受け流すことで、本人が話し疲れて自然に会話が終わることもあります。

「話を聞いてもらえている」と安心感を与えられれば、オウム返しで簡単に返答するだけでも構いません。ただし、あまりおざなりにするとないがしろにされていると感じることがあるため、相手の気持ちに配慮しながらバランスよく対応することが大切です。

不安や不満を解消してあげる

認知症の方がおしゃべりを続ける原因が不安や不満である場合、原因を解消することで落ち着くことがあります。大切なのは、寄り添う姿勢で接することです。「私がそばにいますからね」「一緒にお茶でも飲みながらゆっくりしましょう」といった不安を和らげる声かけが安心感につながります。

本人の気持ちを受け止めながら、安心できる環境を整えることで、おしゃべりが穏やかに収まることが期待できます。

おしゃべりが止まらないときに役立つ会話の切り替えテクニック

前述したように、認知症の方のおしゃべりが止まらないときは、会話の切り替えが効果的です。ここでは、自然に話題を変えながら安心感を保つための具体的なテクニックをご紹介します。

質問返しで話題を自然に変える

認知症の方の会話を自然に切り替えるには、質問返しが有効です。質問形式で別の話題に誘導したり、興味の方向を変えたりするといった対応は効果があります。季節や天気などの話題に切り替えると、本人も抵抗なく会話に乗りやすく、穏やかに話を進めることができるでしょう。

音楽や写真を使って話題転換する

音楽や写真を使うと、自然に会話を切り替えられます。昔好きだった曲を流して思い出話に誘導したり、家族写真を見せて会話の方向を変えたりするのもよいでしょう。映画やテレビの話題で本人の気分転換を図るのも効果的です。穏やかに会話を続けられるよう本人の趣味・嗜好などを踏まえて工夫しましょう。

手作業や活動に誘導する

おしゃべりが止まらないときは、手作業や運動など会話以外の行動に誘導するのも効果的です。たとえば、編み物や塗り絵を一緒に始めたり、散歩や軽い体操に誘ったりするのもよいでしょう。また、一緒にお茶を淹れるなどの生活動作に切り替えると、会話以外に注意が向いておしゃべりが止まりやすくなります。

おしゃべりが止まらないときに役立つ会話の切り替えテクニック イメージ

おしゃべりが止まらないときも
寄り添いの姿勢で対応しよう

認知症になるとおしゃべりが止まらなくなるケースは多いです。同じ話を何度も繰り返されると、周囲はイライラしたりストレスを感じたりすることもあるかもしれませんが、原因を理解し、うまく対応することが大切です。介護が負担にならないようストレスケアも忘れてはいけません。

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