04認知症コラム
もの忘れと認知症の違いは?老化との
見分け方や症状と対策を比較して紹介
2024.11.13
最近もの忘れが増えて「もしかしたら認知症?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。実は、加齢によるもの忘れと認知症は根本的に異なります。違いを正しく理解しておけば、認知症の初期症状を見過ごさず、早めの対応ができるでしょう。この記事では、もの忘れと認知症の違い、それぞれの症状、もの忘れの対処法について解説します。
「老化によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」は何が違う?
もの忘れと認知症は根本的に性質が異なるものです。適切に対応するためにも、違いを正しく理解しておく必要があります。
老化による もの忘れ |
認知症による もの忘れ |
|
---|---|---|
忘れる対象 | 自分が体験した一部分 | 自分の体験そのもの |
忘れる範囲 | 一部のため、指摘があれば思い出せる | 体験そのものを忘れているため、指摘されても思い出せない |
進行 | 進行・悪化しない | 進行する |
日常生活への影響 | 対策を行えば支障は少ない | 支障がある |
自覚 | ある | ない |
老化によるもの忘れの特徴
老化によるもの忘れは、体験した一部分を忘れ、忘れている自覚があるのが特徴です。たとえば、約束した内容の一部を忘れたり、物の置き場所を一時的に思い出せなくなったりすることがあります。多くの場合は自分でもの忘れに気づいており、ヒントがあれば思い出せます。日常生活においても、大きな支障をきたすことは少ないでしょう。
これは老化に伴い、記憶力や判断力が低下することが原因です。もの忘れをする頻度が増えることはありますが、症状自体が悪化することはありません。
- 老化によるもの忘れの例
-
- どんな約束をしたか思い出せない
- 昨日食べた夕食の内容を思い出せない
- 人の名前が出てこない
認知症によるもの忘れの特徴
認知症によるもの忘れは、体験したこと自体を忘れ、忘れている自覚がないのが特徴です。 たとえば、約束したこと自体を忘れてしまったり、物の置いたことを忘れてしまったりすることがあります。多くの場合、本人はもの忘れに気づかず、周囲から指摘されても思い出せません。日常生活においても、大きな支障が生じる可能性があります。
これは、脳の神経細胞が何らかの原因で萎縮し、認知機能が低下することなどが原因です。さらに進行すると身体の動かし方なども忘れて、生活が困難になることもあります。
- 認知症によるもの忘れの例
-
- 約束したこと自体を忘れる
- 夕食を食べたこと自体を忘れる
- 人の顔を認識できない
もの忘れの原因は「自覚の有無」で見分ける
老化か認知症のどちらがもの忘れの原因なのかは、忘れたことに対する自覚の有無で見分けられるでしょう。前述の通り、忘れているという自覚があれば、老化現象によるもの忘れだといえます。しかし、忘れたことを忘れてしまった場合は、認知症かもしれません。
しかし、もの忘れの自覚があったとしても、気になる場合は専門機関を受診しましょう。別の病気が潜んでいる可能性があります。
もの忘れは老化や認知症以外で起こる
ケースもある
もの忘れは老化や認知症以外で起こる場合も多く、原因を特定して適切な対策を講じることが重要です。
たとえば、ストレスや睡眠不足は脳の機能を低下させ、一時的な記憶障害を引き起こす原因となります。また、アルコールの過剰摂取や特定の薬物の副作用が、記憶力に悪影響を及ぼすケースも少なくありません。ほかにも、ビタミンB12や葉酸の不足が原因となる場合もあります。
老化・認知症以外のもの忘れの原因例
ストレス 睡眠不足 アルコールの過剰摂取 特性薬物の副作用 ビタミンB12・葉酸などの不足 高次機能障害 うつ病
もの忘れは認知症を早期発見するためのポイント
認知症に気づくきかっけとして、最も多いのが「もの忘れ」だとされています。「加齢のせい」「単なるもの忘れ」と軽視せず、日常生活での小さな変化に注意を払うことが早期発見につながるでしょう。
たとえば「いつも時間はちゃんと守るのに約束をすっぽかした」「温和な性格なのに急に怒りっぽくなった」など認知症の兆候を見逃さないようにしなければなりません。定期的な健康チェックや認知機能検査を受けてもらうなど、周囲のサポートが認知症の早期発見には不可欠です。
- 認知症早期発見の目安の例
-
もの忘れ
- □ 同じことを何度も言う、聞く、する
- □ 財布や衣類などを人に盗まれたと周囲を疑う
判断力・理解力
- □ 料理や運転など、いつもの動作にミスが増える
- □ 話のつじつまが合わない
場所・時間の認知
- □ 慣れた場所で迷う
- □ 約束の日時や場所を間違える
人格の変化
- □ 怒りっぽくなった
- □ 自分の失敗を人のせいにする
…など
もの忘れが増えたときの3つの対処方法
もの忘れの改善・予防は普段から意識して行うことが重要です。日常生活で実践できる対処方法をみていきましょう。
健康的な生活を心がける
健康的な生活習慣を維持することももの忘れの改善・予防につながります。記憶力の低下を防ぐには、十分な睡眠を確保することが欠かせません。バランスの取れた食事も重要です。青魚や緑黄色野菜など脳細胞の働きが良くなる食品を積極的に摂取するようにしましょう。加えて、定期的な運動も記憶力の維持に役立ちます。
コミュニケーションを欠かさない
コミュニケーションは脳の活性化において非常に効果的です。友人や家族との会話を通じて新しい情報に触れると脳が刺激を受け、認知機能が鍛えられます。また、日常的なコミュニケーションは脳の活性化が促されるだけでなく、ストレスを軽減する意味でも有効です。積極的に人と関わり合うようにすれば、自信を無くしたり孤立感を覚えたりすることを防げます。
趣味や習い事を楽しむ
もの忘れを防ぐには、趣味や習いごとに取り組むのもよいでしょう。新しいことに挑戦すると脳が活性化し、記憶力や判断力が向上します。趣味を通じて達成感が得られれば自己肯定感も高まります。習い事や趣味のコミュニティに参加し、新しい人間関係を築くことは、認知症の予防につながる大切な取り組みといえるでしょう。
家族に認知症によるもの忘れが見られた場合の対処法
認知症の方がもの忘れを起こしても、家族は責めたり叱ったりせず冷静に対応する必要があります。認知症によるもの忘れの症状が表れたときの対処法をみていきましょう。
本人にとっては「経験していないこと」だと理解する
認知症の方にとってもの忘れは、単純に忘れているのではなく「経験していないこと」として認識されるため、家族や介護者がその事実を説明しても納得しません。覚えていないことを責めたり、無理に思い出させようとしたりするのではなく、理解と共感を持って接する姿勢が重要です。肯定的な言葉選びをする、話題を変えるなどできるだけ本人のストレスにならないようなコミュニケーションを意識しましょう。
もの忘れを補う工夫をサポートする
日常生活の中でもの忘れを補うための工夫を凝らすことも大事です。例えば、重要な予定や薬の時間をカレンダーやメモに書き留めるなどしておけば、本人にも説明しやすくなります。家の中の目立つ場所に情報を貼り付けておくといった方法も効果的でしょう。これらの工夫により、日常生活における自立を支援することができます。ひとりではサポートが難しい場合もあるので、家族でお互いに協力しながら進めるようにしましょう。
もの忘れと認知症の違いを正しく理解しよう
もの忘れは認知症の初期症状であるケースも多いため、違いを正しく理解し、普段から予防・ケアを行っておくことが重要です。認知症にはまだ有効な治療法が見つかっていませんが、認知機能を維持するための方法はいくつかあり、早期発見できれば症状の進行を遅らせることができます。ぜひ最新の研究をチェックしてみてください。