04認知症コラム
認知症の方が入所できる施設の種類と
タイミングを解説―費用相場や選び方まで―
2024.09.24
認知症の進行や介護負担の増加など、さまざまな理由で施設入所を検討するタイミングがあるでしょう。この記事では、入所のタイミングや費用相場、施設探しのポイントなどを詳しく解説。また、利用できる制度についても解説するので、お金がないという方もぜひチェックしてください。
認知症の方の施設入所を検討する4つのタイミング
まだ施設へ入所するタイミングではないと思っていませんか。
ここでは、認知症の方が施設へ入所するタイミングを解説するので、該当した場合は検討しましょう。
本人が自宅での生活に不安を感じたら
介護者の負担が
大きくなったら
介護者が近くにいないと危険になったら
介護者の心身の状態に不安を覚えたら
本人が自宅での生活に不安を感じたら
本人が自宅での生活に不安を感じたときは、施設入所を検討するタイミングです。認知機能や身体的な能力に衰えを感じると、本人が自宅での生活に不安を抱くようになります。常に見守ってもらえない、自宅の設備で過ごしにくい点があるなど、不安要素はさまざまです。
介護者の負担が大きくなったら
介護に疲れる前に、負担が大きくなったら施設への入所を検討してください。終わりの見えない介護生活では、介護者に大きな負担がかかります。介護者に余裕がなくなると、本人にきつく当たりかねません。たとえ入居を決断できなくても、「介護が辛い」と感じ始めたら施設に相談してみましょう。負担の軽減につながります。
介護者が近くにいないと危険になったら
一人にしておくと危険だと判断したときも、施設へ入所するタイミングです。認知症が進行すると正常な判断ができず、危険な目に遭う機会が増えます。最悪の事態を避けるためにも、施設への入所を検討するのがよいでしょう。専門的なケアを受けられ、介護者の負担も軽減されます。
介護者の心身の状態に不安を覚えたら
施設へ入所するタイミングとして、介護者の心身の状態が悪化も挙げられます。足腰が弱った人の介護には、かなりの力が必要な場面も多いです。とくに介護者も年齢を重ねている場合、自身が思っている以上の負担が身体にかかっています。まずは介護者自身の体調を考え、今後のケアを考え直すのが先決です。
認知症の方が入所できる施設・費用相場
認知症の方が入所する施設は複数あります。それぞれに特徴や入居条件がことなるため、違いを押さえて、適したところを選択しましょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は、公的介護施設の中でも終身にわたって利用できるため、長期入所を希望する方には安心です。要介護度が高い方のための施設であり、比較的手厚い介護が受けられます。
公的施設のため、費用が比較的安く、入居一時金もありません。
介護保険が適用されるため、経済的な負担を軽減できます。
特徴 |
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サービス | 介護サービス、食事、生活支援サービス、レクリエーション、看取り(※施設ごとに異なる) |
入居条件 |
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費用 | 入居一時金 | 原則不要 |
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月額利用料 | 目安 旧型5~16万、新型15~22万 ※サービス内容などにより、施設ごとに異なる |
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、レクリエーションやアクティビティに力を入れているところも多く、認知症の進行緩和に努めている施設が多くあります。また、医療スタッフが24時間常駐している施設もあり、安心して生活を送れるでしょう。
民間企業が運営しているため、施設やサービス内容によって費用が大きく異なります。充実したサービスや設備を提供している施設は高額になる傾向があります。
特徴 |
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サービス | 介護サービス、食事、生活支援サービス、レクリエーション、健康管理、機能訓練 |
入居条件 | 60歳以上で自立や要介護、要支援など (※施設によって異なり、混合型も有) |
費用 | 入居一時金 | 0~数千万 |
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月額利用料 | 目安 15~30万 ※サービス内容などにより、施設ごとに異なる |
グループホーム
グループホームとは、認知症高齢者を対象とした少人数制の共同生活施設です。家庭的な雰囲気のなかで、介護スタッフのサポートを受けながら、入居者同士が協力して家事などを行い自立した生活を目指します。
グループホームの費用は、入居一時金と月額利用料に分かれます。入居一時金は施設によって異なり、数十万円かかることもありますが、不要な場合もあります。
特徴 |
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サービス | 介護サービス、食事、生活支援サービス、レクリエーション、機能訓練、認知症ケア(※施設ごとに多少異なる) |
入居条件 |
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費用 | 入居一時金 | 0~50万 |
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月額利用料 | 目安 12~25万 ※サービス内容などにより、施設ごとに異なる |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、バリアフリー構造の賃貸住宅で、安否確認や生活相談サービスが提供される高齢者向けの住まいです。介護が必要な場合は、外部の介護サービスと個別に契約する必要があるケースが多く見られます。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の入居一時金の支払い方法は、「月払い方式」と「前払い方式」の2種類です。月払い方式は入居の費用が少なくすみますが、月額の費用が増えるため短期間の入居の場合に適しています。一方で、前払い方式は入居時に全額払うため、長期間の入居に適しているでしょう。
特徴 |
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サービス | 安否確認、生活相談や生活支援、施設によっては食事介助や通院の付き添いなどの介護サービス付きの場合もある |
入居条件 |
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費用 | 入居一時金 | 10~20万 |
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月額利用料 | 目安 5~20万 ※サービス内容などにより、施設ごとに異なる |
認知症の方が入所できる施設探しのポイント
施設の数は多く、どこに入所するのがよいのか迷ってしまうこともあるでしょう。ここでは、施設探しのポイントを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
本人らしい暮らしを継続できるか
認知症の方が入所できる施設探しのポイントは、本人らしい暮らしを継続できるかどうかです。認知症の人は変化に適応することが苦手なため、なるべく本人らしいライフスタイルを守れる環境であるとよいでしょう。施設のスタッフが認知症に対する理解が深く、適切なケアを受けられるかも重要なポイントです。
- チェックポイント
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- 慣れ親しんだ家具などが持ち込めるか
- 散歩や趣味など、これまでの生活習慣を続けられるか
- 静かに居室で過ごせるか
人と関わる機会や活動があるか
人と関わる機会や活動があれば孤独感の解消につながるため、施設のプログラムやイベントもチェックしておきましょう。孤独感は認知機能の健康にネガティブな影響を与えます。ほかの人との交流の機会があれば、症状の進行を緩やかにする効果が期待できます。
認知症ケアに関する専門性があるか
施設の職員がどのくらい認知症についての理解や知識があるか、どのような対応ができるかの確認も欠かせません。認知症の方の症状は個人や進行の度合いによって大きく変わるため、臨機応変に対応する必要があります。施設のケア方針やプログラム内容が共感できるかも大切なポイントです。
スタッフ配置が十分か
スタッフ配置が十分で、手厚いケアを受けられるかどうかも重要です。認知症の方は、本人が病状をうまく伝えられず、疾患の発見が遅れる可能性があります。そのため、24時間の見守り体制が整っていれば、万が一のときでも安心です。さらに医療スタッフがいるとよいでしょう。
認知症の方の施設の探し方
施設へ入所するにあたり、本人と家族の希望がまとまったら施設探しを始めます。最初にどのようなアクションを起こせばよいのか解説します。
ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
まずは、担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターは、現在住んでいる地域の情報も提供してくれます。介護現場をよく知るプロの話を聞けるため、施設選びの参考となるでしょう。
ネットや知人からの情報収集を行う
ネットでの情報収集から始めるのもよいでしょう。広範囲に情報を探すにも、求める条件に絞って調べるにも便利です。気になった施設があれば、施設のサイトからパンフレット等も取り寄せられます。また、実際に介護を経験し、家族が施設で暮らしている知人に話を聞くのも役立つでしょう。
気になる施設は見学や体験入所してみる
気になる施設は見学や体験入所をしてみましょう。実際に施設を訪れて、施設の雰囲気やスタッフの対応を直接確認することが大切です。多くの施設は入居の決断にかかわらず見学を積極的に受け入れています。本人と一緒にいくつかの施設を見に行く予定を立てましょう。
- 見学・体験入所時のチェックポイント
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設備・環境の確認…施設の清潔さや安全性、居室の広さや設備が整っているか
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職員の様子…職員の対応や態度、認知症に対する理解度はあるか
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入所者の様子…入所者がリラックスして過ごしているか、活動に参加しているか
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退去のケースの確認…過去入居者がなぜ退去に至ったのか
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認知症の方が入所を嫌がる場合の対処法
認知症の方が入所を拒否するケースも少なくありません。ここでは、入所を拒否してしまった場合、どのような対応をすればよいのか見ていきましょう。
本人の気持ちをきちんと聞く
入居を嫌がる場合、まず本人の気持ちをきちんと聞くことが大切です。嫌がる気持ちには必ず事情があり、負の感情が伴っています。また、介護は子どもがするものという強い固定観念に影響されている場合もあるでしょう。どういった心情から入所を拒否しているのか、お互い冷静な状態で話をすることが大切です。
施設に入所するメリットを伝える
施設に入所するメリットを伝え、納得してもらうことも大切です。施設に対してマイナスイメージを持っている場合も多いですが、利点を説明すると前向きに考えられることがあります。設備が充実している、新しい出会いがある、今よりも安心して暮らせる、新しい趣味に挑戦できるなど、楽しく充実した生活を送れるイメージを持ってもらいましょう。
安心してもらえる声かけを継続して行う
施設に入所する不安感を払しょくできるような声かけを継続して行いましょう。施設に入所するのは家族に見捨てられたため思っている人も少なくありません。見捨てるわけではなく、お互いが安心して健康的に長生きするための手段であることを伝えます。不安が強い方には、なるべく自宅から近い施設や、外出や訪問のハードルが低い施設を検討しましょう。
主治医・ケアマネジャーなどに相談する
どうしても嫌がる場合は、主治医・ケアマネジャーなどに相談しましょう。家族からの声に素直になれず、感情的になってしまう方も少なくありません。第三者が介入し、話をすることで、本人も冷静に考えられる場合があります。担当医師やケアマネジャーなど、信頼できる第三者に介入してもらうことも検討しましょう。
認知症の方が施設に入居する際に活用できる制度
ここでは、認知症の方が施設に入居する際に申請できる制度を解説します。施設に入居する費用を懸念している方は、ぜひチェックしてください。
特定入所者介護サービス費
特定入所者介護サービス費は、所得が低い方が一定額以上を負担した場合、その超えた分が「特定入所者介護サービス費」として支給される制度です。居住費・食費は保険の対象外ですが、この制度を利用すれば所得や資産の状況に応じて一定額以上は支給される可能性があります。
利用者負担軽減制度(社福減免)
利用者負担軽減制度(社福減免)は、一定の所得基準以下の低所得者世帯を対象に、介護保険サービスの利用者負担額を軽減する制度です。市町村民税世帯非課税世帯と生活保護受給世帯の2種類が対象世帯となります。
高額介護サービス費
高額介護サービス費は、介護サービスを利用した際の負担額が一定額以上になった場合に支給される制度です。一般的な所得であれば、一カ月あたりの負担額の上限が44,000円になります。課税所得が380万円~690万円未満の世帯の場合は93,000円、それ以上は140,100円が上限です。
高額介護合算療養費制度
高額介護合算療養費制度は、医療費と介護サービス費用がかさんでしまった場合に、負担を軽減できる制度です。医療保険と介護保険の自己負担額を合計して一定額以上になっていれば、「高額介護合算療養費」として支給されます。
医療費控除
医療費控除は、医療費の負担がかさんだときに確定申告をすることで税金の負担を軽減できる制度です。さらに、特別養護老人ホームなど介護保険の対象になる施設の費用のうち、看護や医学的管理の対価と認められる部分もこの制度の対象となります。
適切な施設選びでよりよい生活を
認知症の施設入所は、本人や家族にとって大きな決断です。正しい知識を持ち、適切なタイミングで入所を検討することで、本人にとっても、家族にとっても、よりよい生活を送ることができるかもしれません。もし、入所について悩んでいたら、一人で抱え込まず専門家や相談窓口に相談してみましょう。
認知症はまだわかっていないことも多く、一度発症したら治療は困難であるとされています。認知症になる前は予防が、認知症を発症した後は進行を抑えることが大切です。認知機能を維持せる研究は日々進んでいます。ぜひ最新の研究内容をご覧ください。