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【RDのヒント】「機能性表示食品」のメリット最大化に必要なノウハウとは?─消費者に選ばれる商品開発のために

2015年から始まった「機能性表示食品」制度は、日本再興戦略の一つに掲げられ、すでに特定保健用食品(以下特保)を大きく上回る件数が届出されています。ここでは制度スタートから6年半を経て改めて見えてきた、この制度をより有効な商品開発の手段として活用するためのポイントについて解説します。

「機能性表示食品」制度は、消費者が自主的で合理的に商品を選ぶことのできる機会を確保するために、2015年から始まりました。世界で唯一の事前届出制として運用され、その届出数はすでに4,000件を超えました。その中で、これまで難しいと考えられていた「免疫」を謳う表示が公表されるなど、まだまだ新たな市場創造へのきっかけとなる可能性も秘めています。
既存の制度である特保や栄養機能食品がある中で、あえてスタートした意味や、現在の市場を取り巻く状況の中で取り組むメリット、数多ある機能性表示食品の中で“選ばれる”ために欠かせない要件、さらには届出ノウハウを体系的に学べる方法について、グローバルニュートリショングループ代表の武田猛氏にうかがいました。


消費者にも企業にも新たなメリットをもたらした「機能性表示食品」制度

「機能性表示食品」制度が生まれた背景には、どのようなことがありますか?

機能性表示食品とは、事業者の責任において科学的な根拠に基づいた機能性を表示した食品のこと。とくに専門的な知識がなくても安全性や機能性の点から、消費者が自分にあったものを合理的に選べる食品と定義されます。
既存制度の栄養機能食品は対象となる成分が限られる、また特定保健用食品は臨床試験が必須であることで、中小企業や農業の生産者などにとってハードルの高いものでした。
そのような中、2013年1月に国の成長戦略のひとつとして、規制改革会議が発足。「一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備」について、それまでの制度における手続きや費用といった課題が指摘されたのです。検討では、民間が有しているノウハウを活用する観点から、米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にすることとされていました。
そして同年6月、保健機能を有する成分をふくむ加工食品と農林水産物について、機能性の表示を認めるあらたな方策が結論付けられ誕生したのが、「機能性表示食品」制度です。

機能性表示食品の届出情報検索画面。すべての機能性表示食品の届出情報に誰でもアクセスできる。

機能性の表示により、消費者が得られるメリットはどのようなものでしょうか。

いちばんのメリットは、自分にあった食品を選びやすくなったことでしょう。「機能性表示食品」制度が施行されるまでの健康食品は、キャッチコピーや誰かの体験談など科学的根拠のはっきりしない情報を売り文句にするものも多く、それらの情報は断片的で、誰にどんな効果をもたらすものなのかが曖昧でした。
足りなかった情報は、その機能性が科学的な根拠に基づくものか、また、どのような条件でおこなわれた臨床試験なのかということ。これについて今まで、消費者が自ら確認するための表示や、信頼できる検索サイトがなかったのです。

国の審査がないことによる、安全性の問題はどのようにとらえられていますか?

販売前に消費者庁へ届け出る資料は、企業が自由に作成できるわけではなく、食品および企業に関する基本情報や、機能性や安全性を説明する根拠のほか、品質管理における情報、健康被害に対する情報収集の体制など必要な項目が決まっています。なかでも、ヒトにおける十分な食経験や医薬品などとの相互作用については、試験を実施するかデータベースを用いて、安全性の根拠を明確にすることが求められています。
販売後には「機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)」があります。さらに、業界団体である、規制改革推進会議などからの意見書で2020年より導入された「事後チェック指針」があり、消費者庁が続けて監視をおこないます。つまり、表示そのものは企業の責任ですが、消費者庁の確認および社会によるモニタリングにより、制度の健全性が維持されているのです。

安全性の根拠とは、どのようなものをいいますか? 

もっとも信頼できるのは、やはり食経験です。しかし、多くの国で同じことが言えますが、食経験の期間や人数について明確なボーダーラインは示されていません。長いものでは親子2~3世代にわたる期間が必要な国もあれば、20~30年間で良いとされる国も。その人数もまちまちです。また、リンゴやバナナといった昔ながらの食品なら、世界各国で長年にわたる食経験のデータがありますが、その経験がない食品もあります。
その場合でも、必ずしも自社ですべての試験をおこなう必要はありません。他社がおこなった、安全性試験や過剰摂取試験のデータを用いて安全性を評価することで届け出ることができます。ただし、その場合は成分の同等性について考察する必要があることに注意する必要があります。

ばらつきのある生鮮食品では、どのように表示すればよいでしょうか?

生鮮食品は評価対象(プラセボ)が作れないために、根拠の証明がむずかしいですね。その場合は、成分に関する文献を集めて評価することになります。たとえば、トマトならリコピン、バナナならGABAに関する情報を集めるといった具合です。
2015年におこなわれた買上調査では、成分の分析結果におけるばらつきや、表示値を下回る商品があることが問題となりました。しかし、生鮮食品はばらつきがあることを考慮し、この表示値を下回る可能性もあるという表示が認められているのです。ちなみに加工食品の場合は、そうした下回る可能性の表示は認められていません。買上調査以降、問題のあるものは消費者庁の指導が入り、また、届出時に分析に関する詳細情報の提出が求められるようになりました。

消費者庁の差戻しや不備を指摘された届出について、具体的な例がありましたら教えてください。

わが国では事前届け出制のため、届出公表後は公表後に疑義が生じ届出撤回となった例が少なくありません 公表前に届出をさし戻しされたケースでは、科学的根拠が不十分であったり、消費者を誤認させる表示があったり、分析方法に誤りがあったことや、もう少し詳しい情報を提供するようにといったものがあると聞きます。いちばん多いのは、研究レビューの再現性が低いものや、その内容自体が不適切であると確認されたもの。
ただし、届出公表後、不適切な内容が判明した場合でも消費者庁がその届け出を却下することはできません。あくまでも、企業の責任において、再提出や取り下げ(撤回)などをおこなうことになります。

研究開発をおこなう企業にとってのメリットについて教えてください

特保の許可を受けるよりもはるかに少ない費用と時間で、機能性が表示できる食品として消費者に届けることができることは大きなメリットです。
届出件数のデータからみても(2021年11月17日現在)、トクホが1,070件であるのに対し、機能性表示食品はおよそ4倍の4,218件の届け出がありました。企業数もこれに反映されるように、特保が147社であるのに対し機能性表示食品では1,059社。これらの差から、明らかに企業が取り組みやすくなったと言えるのではないでしょうか。
これまで特保としての許可や栄養機能食品販売実績がある企業や団体だけでなく、農業生産者や地方の中小企業などにとっては、「機能性表示食品」を届出することで話題となり、海外市場を見据えた競争力の向上や地方活性につながるケースもあります。
また、人材育成についてもメリットがあると聞きます。届出資料をつくるために、学術文献を調べたり品質管理の工程を見直したりすることが、従業員のスキルやリテラシーの向上につながっているようです。

機能性表示をすることが、向いていない食品はありますか?

はい、あると思います。この制度では、加工食品に加えて生鮮食品を含めたすべての食品が対象となっていますが、プラセボ比較試験のできないもの、“健康の維持増進”など数値で評価できないものは向いていないといえるでしょう。また、幅広い機能性が期待されるものも不向きといえます。
つまり、狭く的をしぼって働く機能性をもつ食品のほうが向いているのです。たとえば、「加齢とともに低下する認知機能の一部である記憶力が気になるかたに」といった訴求ができる食品が向いています。

企業が、消費者にむけた届出情報を作るときのアドバイスをお願いします。  

この制度は一見、消費者のメリットばかりが表立っているように思えるかもしれません。一方で、企業にとっては大きなアピールのチャンスとも言えるでしょう。なぜなら、届出資料の項目や必要な内容は決まっているものの、その表現方法は企業がルールの範囲内である程度自由に決めることができるからです。
消費者がその食品に興味をもって消費者庁のウェブサイトを訪れた際、より消費者の立場にたった表現や調査方法、管理体制の整備などがあればいいですね。きっと、どのような広告にも負けないアピールとなるのではないでしょうか。
つまり、この制度を活用することで、誰かの体験談やレビュー、キャッチコピーに頼らなくても消費者に対して企業の姿勢を伝える有用なツールとなり得るのです。

体系的にノウハウが学べる「機能性表示食品届出アドバイザー」講座スタート

講師をつとめられる「機能性表示食品届出アドバイザー」認定講座が10月から始まりました。どのようなことが学べる講座なのでしょう?

これは、「ウェルネス総合研究所」が監修した、機能性表示食品に関するカリキュラムを修了した人を認定するものです。機能性表示食品制度は、運用が始まってからの期間も浅く、さまざまな方々がそれぞれの解釈で普及活動をおこなっているのが現状です。さらに、届出をする上で必要な研究レビューの取り扱いについても、適切な指導や助言を得る環境が十分にありません。透明性が高い制度ではあるのですが、届出の分かりやすさについては一定の知識がないと難しく、課題だと考えています。今まで、ガイドラインや学術文献を見たことのない人にとって、100ページを超える膨大で専門的な資料から情報をさがす作業は、とても苦痛なものでしょう。また、苦労して取得したとしても、売りにつながらないケースもあります。「機能性表示食品届出アドバイザー養成講座」で認定されたアドバイザーの方々が、正しい知識とノウハウを関係者に普及することにより、「機能性表示食品」制度を最大限に味方につけた商品開発をおこなうサポートができると考えています。

どのような人がこの認定講座を受け、活用し得るとお考えですか?

そうですね、とくに企業の開発担当者や営業担当者には活用できるものだと思います。また、自社で開発する以外にも取引先の企業が開発をおこなっている場合には、サポートできる心強い存在となるのではないでしょうか。
素材メーカーや受託製造を担う会社の方々にも活用してほしいですね。自社で作った素材を他社へ提供している企業では、万が一、その素材の届出内容に不適切なことが見つかると提供先の商品にも影響がでることになりますから。
また、企業内で1人だけがノウハウを身に付けるのではなく、複数人で知識を共有するのがよいでしょう。ガイドラインなどは聞きなれない表現も多く、専門的な印象ばかりです。従業員全体の知識を底上げするような目標をもって、取り組んでみてはいかがでしょうか。

受講することで得られるものは何でしょうか?

講座では数々の実例を交えて制度の成り立ちから始まり、陥りがちな失敗や、より有効な表示をする方法までの一連について、体系立てて学びます。これにより、実際に受講した人からは、「実例があるので、ガイドラインの意味がスムーズに理解できた」という声を多く頂いています。オンラインでの受講も可能で、遠隔にいても気軽に参加できます。
さらに、受講生同士の情報交換なども盛んに行なわれており、研究レビューを相互に利用するなど、コミュニティとしての活用といったメリットもあるようです。
届出のための試験デザインはガイドラインに合致したものにする必要があり、そのためには、サイエンスとしての視点とは異なる、制度の特徴を理解して進めていく力が必要となります。講座では独学では難しいそうした力も養うことができるため、これまで届出実績のある会社にとっても、改めて体系的に学ぶことでガイドラインの本質を読み取り、攻めの事業展開の役に立てて頂けると考えています。

わが国における機能性表示食品の展望と制度の在りかた

機能性表示食品制度はわが国で将来、どのような立ち位置になっていくと考えられますか?

この制度は世界で唯一の事前届け出制として誕生しました。ここまで情報を公開しているものは類がなく、透明性の高い制度といえるでしょう。すでに、大手企業だけでなく中小企業や地方の農水業などで実績があり、その届出は増えつつあります。
しかし一方で、発売中止などの理由での届出撤回は、2021年11月4日時点で495件にも上ります。機能性表示食品制度は、変化、進化、高度化しており、行政や市場の動向を踏まえた十分な検証・分析がなされていないものは淘汰されていくでしょう。消費者が自主的かつ合理的に選択するための情報をどのように公開しているか。そういったメーカーの姿勢を見せることが、当たり前になっていくのかもしれません。

この制度に対して、課題や期待していることを教えてください。

すべての健康食品が、機能性表示食品として届け出る必要はありません。科学的な根拠があって、適切に消費者へ情報が届くものであるということが基本です。安全性の確保には色々と経費がかかるものですが、手をぬかずに一つずつ、クリアしていきましょう。
また、この制度は消費者に対して、選択肢の豊富な健康維持および増進につながる機会をもたらすものです。一方、開発企業にとっては、モチベーションアップとリテラシー向上にも寄与することでしょう。
ひいてはこれが、わが国における健康食品の業界全体にとって底上げとなることを期待しています。

武田猛氏 プロフィール

株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役。18年間の実務経験と17年間のコンサルタントとしての経験を積み、35年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わる。コンサルタントとしては国内外合わせて650以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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