【マーケット】超加工食品への懸念は一時的なトレンドで終わるのか
どの業界でもブームやトレンドというものはめまぐるしく変化する。食品業界においても同様で、時代とともにさまざまな食のブームが 現れては消えていった。
例えば、1990年代に流行した低脂肪食品、2000年代初期の 低炭水化物アトキンスダイエット、さらにパレオダイエットなどが、メ ディアを騒がせた。そして最新の健康トレンドは、超加工食品 (Ultra-processed food、UPF)を避けることであるが、これも過去 のブームと同様に、短命に終わるのだろうか。
市場調査会社Mintel社がフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポーランドで 16歳以上の消費者1,000 人以上を対象に行った調査によると、UPFへの懸念は年齢と結びついているのだという。若い世代は、UPF 騒動は一時的なものとうけとめており、特にフランスの 16~24歳の49%はそう感じて いる。この年齢層は、短期的なものの考え方をする傾向にあり、常に楽しくて心地よい経験を求めている。
そもそも、UPFの一般的な定義とは、Nova分類によると、第4のグループ、工業的に加工された食品のことである。欧州の消費者は、UPFは「生活に浸透している」と考えており、約3 分の1 は「ヘルシーな食事方法の一つ」と答えた。だが、UPF摂取が「がんの発症率を上げる」、「死亡率を高める」といった結果を示唆する研究は増え続け、世界保健機関(WHO)も、UPF摂取や飲酒、喫煙などは、欧州における数百万の死亡に関連するという警告を発している。
だが、UPF研究のすべてが、UPF摂取を全否定しているわけではない。朝食用シリアルやパン、プラントベース代替食品などの摂取と死亡率上昇との間に関係はないと示唆する研究もある。ただ、消費者の回答の多くは「簡単便利なパッケージ食を使うより、なるべく家で料理したい」というもので、 特にフランスやスペインではそれぞれ、71%、68%と高いものだった。英国の54%も「ゼロから調理したい」と答え、UPFを「大いなる脅威」ととらえているようだ。
だが、栄養価に関していうと、また見方は異なる。欧州(フランスを除く)の約半数は「どれだけ加工されているかより、たんぱく質やビタミンがいっぱい詰まっているほうが重要」と答え、スペインでも57%は同じ意見を示している。子どもを持つ忙しい親などは、たとえ、超加工されていても、野菜や果物など子どもに必要な栄養素を満たしていれば、喜んで受け入れるとしている。消費者のUPFへの意識は高いが、知識はそうでもなさそうだ。YouGov社が行った 2021年の調査では、UPFにはどんな食品が含まれるのか、ほとんど理解していなかったことが明らかとなった。Nova 分類でUPFグループにリスト入りされている、缶入りベイクドビーンズを選んだのは8%、アイスクリームは12%、 スーパーで売られている食パン19%、調理済みパスタソース26%、朝食用シリアル28%と低い数字が報告された。
「GNGグローバルニュース 2024年7月25日号」より