【サイエンス】腸内細菌叢の臨床研究の課題:Yakultシンポジウム

アムステルダムで開催されたYakultシンポジウムのパネルディスカッションで、腸内細菌叢に関する臨床研究の課題が取り上げられ、専門家や業界関係者からさまざまな意見が提示された。席上、科学と消費者の理解のギャップを埋めるため、堅牢な方法論、正確な研究上の疑問、適確なコミュニケーション戦略の必要が強調された。

Yakult UK、アイルランドのサイエンス担当、Emily Prpa博士は、腸内細菌叢の臨床研究が抱える難解さを説明した。まず、個人の細菌叢は独自のもので、遺伝、食事、ライフスタイル、ストレス、環境などの影響を受ける。プレバイオティクスやプロバイオティクスに対する反応が研究の被験者によってまちまちなため、この変動性が臨床研究を複雑なものにしている。

さらに、不均一性も問題である。同氏は「株による特定の効果や商品間の違いがさまざまな結果を導き出す。つまり、明確な因果関係を示すことが困難になる。これは、商品のヘルスクレーム認可を得る際に障害となる。認可に際しては、一般集団での効果を示すことが必要だが、欧州食品安全機関(EFSA)基準の下では、リスクを抱えている亜集団での効果を提示する方が容易と考えられるため、リスク集団データが多くなり、却下される可能性が増える」と説明した。

栄養コンサルタントのHans Verhagen教授は「EFSAの認可を得るための研究に取り組む際、適切なリサーチクエスチョンを設定することが必要。特に、ヘルスクレーム規制の業務では、EFSAは常に適切なリサーチクエスチョンをし、科学的厳密さの確保に重点を置いていた」と説明した。また、University of AberdeenのKaren Scott教授は、研究者は学術的期待と規制上の期待の間で矛盾に直面しており、新しい研究をインパクトのある学術誌に発表するよう迫られ、規制機関は繰り返し行われる研究から得られる再現性を優先すると指摘した。産業は研究の繰り返しに資本を投入しがちで、データの完全性への懐疑的な見方を生むことになる。

マインツメディカルセンターのGwen Falony博士は「最初から焦点を絞ったリサーチクエスチョンをすることで、必要なサンプル数を減らし、統計的誤差を最小限に抑える可能性」を指摘した。YakultヨーロッパのBruno Pot博士は、研究結果の説明など、産業は、健康効果について消費者に伝える、つまりコミュニケーションの機会を失っていることを懸念し、健康効果を評価するのに時間と費用の掛かる臨床研究ではなく、別の、例えば、コホート研究やメンデルランダム化といったアプローチを模索することを提案した。

「GNGグローバルニュース 2024年12月25日号」より

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