【サイエンス】BCAAサプリメントが認知機能低下を遅らせる可能性を示唆する研究結果

大規模な遺伝子データベースを利用して、分岐鎖アミノ酸 (BCAA)濃度の低下とアルツハイマー病(AD)の因果関係を証明する新しい双方向無作為化試験が実施された。

ADは、2050年までに患者数が3倍になると予測されており、現在、全世界で5,000万人以上がこの症状に悩まされていると言われている。認知症の中でも最も一般的な病気で、細胞外のアミロイドB(AB)プラークや神経原線維のもつれが特徴的である。しかし、その病態は未だ解明されておらず、治療法も確立されていない。

この研究グループは、BCAA量とADリスクとの潜在的な関係を調べるために、遺伝子変異を用いてリスク因子とアウトカムを評価できる双方向無作為化試験を実施した。

本研究では、BCAAとADに関する研究から得られた遺伝データを利用した。AD群21,982人、対照群41,944人の情報を国際アルツハイマー病ゲノムプロジェクト(IGAP: International Genomics of Alzheimer’s Project)より入手した。因果関係を立証するために、逆分散加重法(IVW 法)、MREgger 法、加重中央値などの解析手法が用いられた。

その結果、BCAAの総量と ADリスクとの因果関係は認められなかったが、逆解析では、ADとBCAAの減少との間に有意な関連があることが示された。BCAA量が減少する背景として、研究グループは以下のような仮説を報告した。

第一に、ADマウスモデルでは、消化管機能の変化が観察されており、ADでは食事からのBCAAの吸収が悪くなっている可能性がある。第二に、ADまたは軽度認知障害(MCI)患者は通常、潜在的な栄養失調を経験し、タンパク質予備能とタンパク質分解レベルが低下する。第三に、近年の一連の研究により、ADにおける腸内細菌叢のアンバランスが実証されている。BCAAの代謝に関連する腸内細菌叢の存在量に変化をもたらし、最終的に循環BCAAsのレベルを低下させる可能性があると説明した。

「GNGグローバルニュース 2023年4月25日号」より

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