【マーケット】健康はフィジカルからメンタルへ、今の消費者意識を探る:HMTレポート

Covid-19パンデミック以降、メンタルヘルス分野への興味、関心が急速に高まった。機能性食品やサプリメント産業において、イノベーションにこの領域を加えることを無視できない。このトレンドの波にうまく乗るためにメーカーやブランドが注意すべきことを、Health Marketing Team(HMT)のトレンド専門家が解説したレポートが、Mental Wellbeing に掲載されている。これによると、「消費者の健康への関心は身体的なものから精神的なものへ移行している」と説く。

きっかけとなったのがCovid-19の世界的流行で、Boston Universityによると、パンデミック発生の一年目で、うつ病発症率が3倍に増加したという。また、第二の要因は気候変動で、Bath Universityの調査によると、若者の75%が「将来に危機感を覚える」と回答、45%は「気候変動 問題は、日常生活にマイナスの影響を与えている」、約60%が「将来について心配、あるいは極度に心配している」と回答した。

パンデミックをきっかけとして、免疫系商品が爆売れしたが、体と心の繋がりや、心身のバランスへの関心の高まりも最近のトレンドである。消費者は今、ストレスを避けるため、十分な睡眠、 より良い食、適切な休憩の重要性に目を向けている。特に、心と体のバランスは腸を通して免疫系を向上させるだけでなく、ストレスを緩和し、ムードや睡眠の改善に働くという考え方に傾倒している。不安感やストレスが中心的テーマになるメンタルヘルスは、ブランドが特に力を入れるべき商品カテゴリーである。

HMTはこのトレンドに沿って発表された幾つかの例を挙げている。Nue CoやRebalance社(英国)は、プレバイオティクスやプロバイオティクスをブレンドし、全身の健康をサポートする微生物のバランスを取り戻す商品を発表している。また、Bio-Kult Mind 社(英国)は、プロバイオティクスとフラボノイドを配合し、消化器官と認知機能の両方を対象にした商品を販売する。スポーツニュートリションの分野も同様で、アスリートも体の健康と同じくメンタルヘルスを重視している。心を研ぎ澄ませるため、トレーニング前にヌートロピックサプリメントを摂取する割合が増えているという。

Fitbiomics 社(米国)は、プロバイオティクス商品の「Nella」を開発、体力や持久力を維持するため、プロテイン、エネルギー代謝から最適な免疫パフォーマンスを引き出す優秀な商品と宣伝している。Pillar Performance社(オーストラリア)は、「Ultra B Active Peak Performance」を販売開始、活性化ビタミンB がエネルギーレベルを向上させ、健全なストレス応答や神経系をサポートしながら、疲労からの回復を謳っている。アスリートだけでなくビジネスマンも回復が重要だと考えている。「クリーン」で「ナチュラル」な成分への関心が高い。Innermost社(英国)は、ヌートロピックとアダプトゲンを配合した「Recover」サプリメントを販売、筋肉を回復、ホルモン活性を改善し、心身のストレスに対する体の自然な応答力を増強する。「セルフケア」も関心が高まる分野で、特に睡眠の改善がトレンドとなっている。HMT によると、最も人気を集めている成分が、メラトニン濃度を高めると考えられる、アミノ酸の一種であるLテアニンやマグネシウム、さらにカモミールやラベンターもリラクゼーション成分として有名で、メラトニンが豊富なカゼインやチェリーも注目されている。Feel社(英国)は、植物とミネラルを配合した「Sleep」サプリメントを開発しており、これには、 セロトニンやメラトニンに転換する5-HTPの生成に使われるトリプトファンも配合されている。また、アミノ酸の一種、グリシンは脳の鎮静効果があるとして関心を集める。

市場での成功を勝ち取るには、マーケティング戦略に「消費者の物語」を組み込む必要があると、HTM は分析する。消費者の多くは、商品から、企業が何者なのか、そのモラルなどをくみ取りたいと考えている。従って、ブランドは、消費者のパーソナリティやライフスタイルを反映するブランドの物語を作り上げなければならない。幸福といった感情も重視する消費者には、ブランドの信念や情動的価値を提示する必要がある。また、多くの消費者は、食品にルーツや伝統、思い出といった感情的なものを抱いており、ブランドは、長い歴史を持つ成分やフレーバーによって消費者の心を動かすこともできる。HMT は、「消費者の物語」にぴったり添えるストーリーを選ぶことだと、説明した。

「GNGグローバルニュース 2022年11月25日号」より

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