アルツハイマー型認知症の原因物質「アミロイドβ」とは?

日本では65歳以上の約15%が認知症を患っていると推定され、そのうち最も多いのがアルツハイマー型認知症です。発症原因は不明ですが、アミロイドβと呼ばれるタンパク質の関与が指摘され、注目されています。

アルツハイマー型認知症の発症機序「アミロイド仮説」

アルツハイマー型認知症とは、大脳の全般的な萎縮によって記憶障害、記憶障害、見当識障害、判断能力障害などの認知機能の低下がゆっくりと進行していく病気です。その原因は未だ不明で、「タウ主犯説」や「コリン作動性仮説」など、さまざまな仮説が議論されています。その中で、現在広く支持されているのが「アミロイド仮説」です。

アミロイド仮説では、アルツハイマー型認知症の発症原因はアミロイドβと呼ばれる毒性を持つタンパク質が神経細胞に蓄積することと考察されています。アミロイドβは健康な人の脳でも作られ、通常は分解・排出されます。

一方、アルツハイマー型認知症では何らかの理由でアミロイドβが脳に溜まり、さらに毒性の強い老人斑と呼ばれるシミを作ります。その数十年後、タウ蛋白と呼ばれる物質が異常にリン酸化されて脳に蓄積する神経原繊維変化が発生。老人斑や神経原繊維変化が神経細胞を破壊し、脳の萎縮や認知機能の低下を引き起こします。

現在、高齢者で見られる遺伝性でないアルツハイマー型認知症の主な要因は、アミロイドβの分解・排出機能「アミロイドβクリアランス」の低下と考えられています。

新しい抗認知症薬の開発で注目を集めるアミロイドβ

アミロイド仮説に基づいた新たな抗認知症薬の開発が進められ、注目を集めています。開発されているのは主に3種類。「アミロイドβの産生抑制」「アミロイドβの凝集抑制」「アミロイドβの分解促進」を機序とする薬です。アミロイドβの蓄積は認知症発症の数十年前から起こっているため、これらの薬は認知症の進行期ではなく、発症前やMCI(軽度認知障害)を対象にしたものになると考えられています。

2021年9月にはエーザイが、アミロイドβの分解を促す「抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブ(BAN2401)」について、迅速承認制度に基づき米国FDAに生物製剤ライセンス申請の段階的申請を開始しました。そのほかの薬も開発が進められており、副作用を抑えたまま安全性・有効性を高めることが課題となっています。

アミロイドβの蓄積を防ぐ機能性素材の研究も進む

アミロイドβが蓄積されれば必ず認知機能が低下して認知症の発症を引き起こすのかといえば、そうではありません。また、近年の研究によると、アミロイドβの蓄積を防ぐには、運動や睡眠、日々の食生活が重要な役割を果たすことがわかってきました。

機能性素材分野においては既に積極的に研究が進められており、ヘルスクレームの大きなジャンルとなる可能性を秘めています。「アミロイドβ」は今後、食・薬分野で新たな開発のキーワードとなっていくことでしょう。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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