三大栄養素の構成比率は健康的な食生活の基本
「PFCバランス」

健康的な体づくりのための食事習慣で大切にしたいのが「量・質・タイミング」。つまり“いつ、何を、どのくらい”食べるかが重要です。体型や活動量に適した量の食事を、良いタイミングで摂る。この時、食事の内容が炭水化物に偏っていたり、油が多かったりしてバランスが悪いと、カラダのバランスも整いません。

今回は、エネルギーとなる栄養素のバランスを整えたいときに役立つPFCバランスの考え方をお伝えします。

PFCバランスとは?

PFCバランスとは、生活活動をしていくために摂取しなければならない炭水化物、脂質、糖質、ミネラル、ビタミンのうち1日の摂取量が多い、たんぱく質(protein)、脂質(fat)、炭水化物(carbohydrate)の頭文字をとったもので、総エネルギー摂取量に占める構成比率を示す指標のことです。

エネルギーは、身体を動かすときはもちろん、睡眠時であっても臓器は常に働いているため消耗しています。そのため、主なエネルギー源となる炭水化物、脂質、たんぱく質は量的に多く摂取する必要があるのです。

自分に合ったPFCバランスを知っておくと外食時のメニュー選びや食事の献立を決めるときに役立つでしょう。

不足も過剰も要注意。PFCバランスの考え方

そもそも、三大栄養のバランスがなぜ重要なのでしょうか。それは、栄養素の働きに違いがあるからです。

例えば、エネルギー源として重要な炭水化物ですが、過剰に摂取すると、脂肪細胞に運ばれ、体脂肪として蓄えられます。逆に、不足した場合は、エネルギーをつくるのに体脂肪や体タンパク質が分解されます。体たんぱく質の大量の分解は筋肉を減少させることにもつながります。

また、たんぱく質は筋肉や臓器を構成する最も重要な成分で、酵素やホルモン、免疫抗体などの原料にもなる一方、過剰に摂取した場合、腎臓に負担をかけることになります。不足した場合は、人体を構成している体たんぱく質が分解されてしまい不足分を補おうとして、体力や免疫力の低下につながります。

脂質は、細胞膜や核酸、神経組織などの構成成分としても重要で、中性脂肪として体内に蓄えられ、必要な時にエネルギーとして利用されますが、過剰に摂取した場合、肥満の原因につながります。逆に、不足の場合は、血管や細胞膜が弱くなる原因にもつながります。

このように、栄養素の役割が異なるため、炭水化物だけで1日のエネルギー必要量を満たそうとするのではなく、三大栄養素をバランス良く摂ることが大切になります。

5年に1度実施される国民健康・栄養調査やその他の健康の保持増進に関する調査などの分析結果を踏まえて定められる「日本の食事摂取基準」では、2015年版より、PFCバランスの名称が「エネルギー産生栄養素バランス」と変更され、生活習慣病やその重症化を予防する目的で目標値が新たに設定されました。

それによると、18~49歳のPFCバランスの目標値は、たんぱく質(P)13~20%、脂質(F)20~30%、炭水化物(C)50~65%とされています。

PFCバランスの計算方法

PFCバランスを計算する際には、アトウォーター(Atwater)係数を用いてエネルギー換算を行います。アトウォーター係数とは、たんぱく質、脂質、炭水化物は、由来する食品によって産生するエネルギー量がわずかに異なるため、消化吸収率を考慮した実用的な栄養素の生理的熱量として1gあたりのエネルギー量をたんぱく質4kcal、脂質9kcal、炭水化物4kcalと表したものです。

脂質1gに含まれるエネルギー量は他の栄養素に比べて倍以上高いため、効率の良いエネルギー源となりますが、過剰摂取にもなりやすいため注意が必要です。

PFCバランスの計算にあたっては、各栄養素の目標値の範囲から適した値を設定します。
例えば、継続的な運動習慣があり、たんぱく質を多く、脂質と炭水化物を少なく摂りたい場合は、Pの目標値13~20%の範囲から20%と設定し、Fの目標値20~30%から20%と設定し、残りの60%をCで補うと良いでしょう。

また、たんぱく質の消化に自信がない場合は、Pを15%に設定し、Fを25%、炭水化物60%とするのも良いでしょう。

例1)
1日のエネルギー必要量が2,000kcalの人で、たんぱく質20%、脂質30%、炭水化物50%に設定したメニューを考える場合

2,000kcal×20%÷4kcal=100g…1日に摂取したいたんぱく質量
2,000kcal×30%÷9kcal=66.7g…1日に摂取したい脂質量
2,000kcal×50%÷4kcal=250g…1日に摂取したい炭水化物量

例2)
摂取した食事(1食600kcal)のバランスをチェックする場合

摂取したたんぱく質g×4kcal÷600kcal×100=1食に対するたんぱく質が占める割合
摂取した脂質g×9kcal÷600kcal×100=1食に対する脂質が占める割合
残りを炭水化物の割合とします。

PFCバランスの活用方法

ネットやアプリを活用すると簡単に自分に合ったPFCバランスを知ることができるでしょう。しかし、計算したPFCバランスを食生活に活かすのは難しいかもしれません。加工食品には栄養成分が表示されていますし、最近では、外食でもメニューに栄養価が表記されていることが多くあります。

まずは、その数値をもとに、バランスの良いメニューを選んでみるのはいかがでしょう。
例えば、牛丼チェーンで食事をする場合、牛丼大盛を選ぶより、牛丼(並盛)にあさり汁と納豆を追加してオリジナルの定食をつくることで、バランスが良くなります。

バランスを意識して食事を選ぶことは、健康的な体づくりに役立ちます。しかし、PFCバランスは、主なエネルギーとなる三大栄養素のバランスを見るもので、全体の量やミネラルやビタミンなどの栄養素のバランスを見ることはできません。PFCバランスの良い食事にカラフルな野菜や発酵食品を上手に取り入れて、オリジナルのバランス栄養食を完成させることをお勧めします。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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