04認知症コラム
認知症の問題行動とは?種類や行動パターン、
家族ができる対処法を解説
2026.07.17
認知症になると、記憶障害だけでなく、徘徊や暴言、介護拒否などの問題行動を起こすようになるケースが少なくありません。しかし、問題行動には本人なりの理由や不安が隠れている場合があり、適切な対応が必要です。本記事では、認知症で見られる主な問題行動の種類や原因、対処法、入院や施設入居を検討すべき目安について解説します。
認知症の問題行動とは?
認知症の問題行動とは、徘徊や暴言、介護拒否など、認知機能の低下に伴って現れる行動上・心理面の変化を指します。これらの行動は、記憶障害などの中核症状に加え、不安や混乱、本人の性格、生活環境など複数の要因が重なって生じる「周辺症状(BPSD)」と位置付けられています。
そのため、単に困った行動として捉えるのではなく、背景にある理由を理解することが重要です。近年では「問題行動」という表現自体も見直されており、本人の視点に立った対応が求められています。
「問題行動」という言葉が使われなくなっている理由
認知症の方に見られる徘徊や暴言などの行動は、理由なく生じるのではなく、不安や混乱、環境への戸惑いなどに対する自然な反応として捉える考え方が広がってきています。
そのため現在では、「問題行動」という否定的な表現ではなく、「認知症の行動」や「心理症状(BPSD)」という呼称を用いるのが一般的です。
認知症で見られる主な問題行動の
パターンと原因
認知症では、認知機能の低下に伴ってさまざまな症状が現れ、問題行動につながることがあります。ここでは、認知症で見られる主な問題行動のパターンと、その背景にある原因について解説します。
徘徊
徘徊は、認知症で見られる代表的な問題行動の一つです。
見当識障害や記憶障害によって現在の場所や時間がわからなくなってしまうことで、家にいても「家に帰らなければならない」と不安を感じて外へ出てしまう場合があります。
とくに夜間の徘徊は、転倒や交通事故、行方不明につながるリスクが高く、介護を担う家族にとって負担になりやすいといわれています。
暴言・暴力
認知症の方は、脳機能の低下で感情のコントロールが難しくなり、不安や怒り、混乱をうまく整理できなくなって暴言や暴力という形で表出する場合があります。
また、何気ない冗談や声かけを攻撃的に受け取ったり、過去の嫌な記憶が突然よみがえったりすることも、暴言・暴力の引き金になりやすいとされています。
不潔行為
排泄物を触ってしまう「弄便(ろうべん)」や、入浴・着替えを拒むなどの不潔行為を行う場合もあります。認知機能の低下によって排泄の手順がわからなくなったり、失禁による不快感や混乱が強くなったりすることが主な原因です。
汚れた衣類を着替えようとしない場合には、汚れを認識しにくくなる感覚の鈍麻に加え、自尊心の低下、羞恥心からくる隠匿心理が背景にあることも少なくありません。
介護拒否
入浴や着替え、服薬などの介助を拒むようになるケースも多いです。認知機能の低下によって介助の必要性や状況を十分に理解できなくなり、不安や混乱が強くなることで起こりやすくなります。
また、介護者に突然体を触れられることへの恐怖、「何をされるのかわからない」という不安が拒否反応につながるケースも少なくありません。
異食
異食とは、食べ物ではない物を口に入れてしまう行動を指します。認知機能の低下で、目の前にある物が食べ物かどうか判断できなくなる「失認」が主な原因です。
また、空腹や喉の渇きをうまく伝えられないもどかしさや、手持ち無沙汰になる不安から、身近にある物を無意識に口へ運んでしまう場合もあります。異食、誤飲は窒息につながる危険もあるため注意が必要です。
認知症の問題行動への対処法
―ご家族の負担を軽くするために
認知症の問題行動に対しては、行動そのものを否定するのではなく、背景にある不安や混乱を理解したうえで対応することが重要です。ここでは、本人と家族の負担を軽減するための対処法をご紹介します。
行動の背景にある原因を探る
認知症の問題行動には、不安や混乱、身体的不調など本人なりの理由がある場合が多いため、まずは行動の背景にある原因を丁寧に探ることが重要です。
たとえば、徘徊には「家に帰りたい」という強い不安が隠れているケースがあります。
原因を十分に把握しないまま行動だけを制止すると、本人のストレスが強まり、症状の悪化や別の問題行動につながるおそれもあるため注意が必要です。
- 具体的な対応
-
- 行動が起きる時間帯・場所・直前の出来事を記録し
パターンを把握する - 「何をしたか」でなく「なぜそうしたか」の視点で
心理状態を推測する - 食事・排泄・睡眠など基本的な生活面や体調の変化を確認する
- 複数の介護者間で情報を共有し、多角的に原因を分析する
- 行動が起きる時間帯・場所・直前の出来事を記録し
本人の気持ちに寄り添った声かけをする
認知症の方へ声かけする際は、本人の言動をすぐに否定せず、まず気持ちを受け止める姿勢が重要です。不安や混乱を抱えていることを理解し、共感的な態度で接することが安心感につながります。
一方で、強く叱ったり頭ごなしに否定したりすると、自尊心が傷つき、問題行動がさらに悪化してしまう可能性があります。
- 具体的な対応
-
- 事実と異なる発言でもいったん受け止めてから対応する
- 穏やかな声のトーンとゆっくりした話し方を心がける
- 一度に多くの情報を伝えず、短い言葉で一つずつ伝える
- 不安や緊張が見られたら無理に続けず時間を置く
生活環境を整える
生活環境の調整は、認知症の行動・心理症状を和らげるための基本的かつ有効な対処法です。室内の安全を確保・整備したり、生活リズムを安定させたりすることで、不安や混乱の軽減につながります。
ただし、急な模様替えや転居など環境が大きく変わると、強いストレスになり、徘徊や興奮といった問題行動を誘発するおそれもあるため注意が必要です。
- 具体的な対応
-
- 家具の配置を大きく変えず慣れ親しんだ空間を維持する
- 馴染みのある写真や愛用品を身近に置く
- 日中の活動量を確保し規則正しい生活リズムを保つ
- トイレや居室にわかりやすい目印をつけ動線を整える
- 危険物の撤去や段差の解消など安全面を確保する
専門機関に相談する
認知症の問題行動は、家族だけで抱え込まず、早い段階で医師やケアマネジャー、地域包括支援センターなどの専門機関へ相談することも重要です。専門家の助言を受けることで、症状の背景にある原因や適切な対応方法を把握しやすくなります。
その結果、介護サービスや医療支援につながれば、本人の症状改善だけでなく、介護を担う家族の心身の負担軽減にもつながります。
- 具体的な対応
-
- かかりつけ医や認知症疾患医療センターに症状相談する
- 地域包括支援センターで介護サービスや制度の情報を得る
- ケアマネジャーと連携しケアプランの見直しを検討する
- デイサービスやショートステイを活用し介護者の休息を確保する
認知症の問題行動で入院や施設入居を
検討すべき目安
認知症の症状が重くなり、ご家族だけでの対応が困難になることもあります。入院や施設入居は、本人とご家族の安全を守るための前向きな選択肢です。ここでは、検討すべき具体的な目安を見ていきましょう。
自傷・他害行為があり家庭での安全確保が困難なとき 介護を担うご家族が心穏やかに過ごせる時間を確保しづらくなってきたとき 医学的な治療や専門的なケアを優先すべきと考えられるとき
自傷・他害行為があり家庭での安全確保が困難なとき
激しい暴言・暴力や、自分自身を傷つける自傷行為が見られる場合は、家族だけで対応することは困難です。とくに、夜間の深刻な徘徊や火の不始末など、命に関わる危険を家庭内で防ぎきれなくなったときは、入院や施設入居を検討すべきタイミングといえます。
認知症疾患医療センターなどの専門医療機関では、薬の調整や行動観察を通じて、認知症の行動・心理症状に対する集中的な治療やケアを受けることができます。対応が難しいと感じた場合は、早めに相談を検討しましょう。
介護を担うご家族が心穏やかに過ごせる時間を
確保しづらくなってきたとき
介護を続けるなかで、睡眠不足や慢性的なストレスによって介護者自身が心身の不調を感じている場合は、無理を続けず環境を見直すことが重要です。
「自分が頑張らなければ」と抱え込みすぎると、焦りや疲労から本人への対応が厳しくなり、認知症の症状をさらに悪化させる悪循環に陥りかねません。
長期的にケアを続けていくためには、介護者が十分な休息を取ることが不可欠です。ショートステイの活用や一時的な入院も前向きな選択肢として検討しましょう。
医学的な治療や専門的なケアを優先すべきと考えられるとき
認知症の問題行動が急激に悪化した場合は、その背景に感染症や身体疾患、薬の影響などが隠れていることもあります。精密検査や治療の必要性が考えられるため、まずは医療機関での相談を検討しましょう。
入院が必要になった場合でも、BPSDの原因を特定し症状を安定させるための一時的な措置と捉えるのが基本です。症状が落ち着いたあとは、在宅復帰の可否や施設入居の必要性について、ケアマネジャーなど関係者間で冷静に話し合いましょう。
認知症の問題行動に関するよくある質問
認知症の問題行動に対してどのように向き合えばよいかわからず不安を感じている家族、介護者の方は少なくないでしょう。よくある質問とその回答をまとめましたので参考にしてください。
認知症の種類によって問題行動の現れ方は異なりますか?
認知症の問題行動にはどのような行動パターンがありますか?
認知症の問題行動を改善する薬はありますか?
認知症の問題行動が原因で家族が介護を続けられない場合は
どうすればよいですか?
Q認知症の問題行動にはどのような行動パターンがありますか?
徘徊、暴言・暴力、介護拒否、不潔行為、異食などが代表的なパターンとして見られます。これらの行動には認知機能の低下による混乱や不安、環境への適応困難などが背景にあり、本人の性格や状況によって現れ方が異なります。また、時間帯や体調によっても変動するため、一定のパターンとして理解することが重要です。
Q認知症の種類によって問題行動の現れ方は異なりますか?
異なります。アルツハイマー型では記憶障害、見当識障害による徘徊が比較的多く見られます。レビー小体型では幻視や日内変動に伴う混乱が強く出ることが多いです。また、前頭側頭型では感情や行動の抑制が難しくなり、反社会的な行動が目立つ傾向があります。
Q認知症の問題行動を改善する薬はありますか?
問題行動そのものを直接改善する特効薬はありませんが、症状の背景にある不安や興奮、幻覚などを和らげるために、向精神薬や抗不安薬などが用いられることがあります。ただし副作用のリスクもあるため、医師の管理のもとで症状や状態に応じて慎重に判断する必要があります。また、薬物療法とあわせて環境調整やケアも重要です。
Q認知症の問題行動が原因で家族が介護を
続けられない場合はどうすればよいですか?
早めに専門機関へ相談することが重要です。地域包括支援センターやケアマネジャーを通じて、デイサービスやショートステイなどの介護サービスを利用することで負担を軽減できます。症状が重い場合は、入院や施設入居を含めた選択肢も検討し、家族だけで抱え込まない体制を整えましょう。
認知症の問題行動は原因の理解と適切な対応を
認知症の問題行動は、徘徊や暴言など表面的な行動だけに注目するのではなく、その背景にある不安や混乱を理解することが重要です。行動には必ず理由があり、否定や抑制だけでは改善につながらない場合があります。
本人の気持ちに寄り添った声かけや環境調整、専門機関への相談を組み合わせることで、症状の軽減と介護負担の軽減の両立が可能になります。無理に抱え込まず、周囲に協力を仰いで適切な支援につなげましょう。
認知症ケアでは、日々の接し方や環境調整に加え、認知機能そのものへの理解を深めることも重要です。近年では、脳の働きと関係する「40Hzガンマ波」に着目した研究が進められており、認知機能ケアの新たな可能性として注目されています。
「認知機能ケアプロジェクト」では、脳科学の観点から考える認知症ケアの最新情報を多数ご紹介しています。認知症に関する知識を広げたい方は、ぜひあわせてご覧ください。