
【発表会レポート】日本初!食品介入で“老化スピード抑制”の成果を出した森永乳業の最新研究
【最新研究発表】HRB(ヒトにすむビフィズス菌)の老化速度に関わる日本初の研究報告

最新研究発表では、森永乳業株式会社 研究本部 バイオティクス研究所長の小田巻俊孝氏が「ビフィズス菌BB536は老化速度に働きかけるのか?~日本初の臨床試験から見えてきた新たな可能性~」と題して登壇しました。
そのテーマは、「老化速度が測定できる時代へ」、「ビフィズス菌配合ヨーグルトを含む介入による検証」、そして「なぜビフィズス菌が老化速度に関わるのか」の3つです。
冒頭に、同社が行った老化に関する意識調査の結果に触れ、「加齢は暦年齢の変化であって生物学的な老化とは意味が異なること」、そして「抑制できないのは加齢であって老化ではない」という点を強調しました。暦年齢と生物学的年齢の差を埋めようとするのではなく、ここから先の老化速度を緩やかにし、より健康な人生を長くすることが大切だと語りました。

1つ目のテーマは「老化速度が測定できる時代へ」。DNAのメチル化測定により、実際の老化を数値として捉えられるようになってきた現状とともに、老化速度に影響を与える要素について世界各国で研究が盛んに行われていることを説明しました。
たとえば、米国や日本での観察研究では、身体活動量が高いほど、あるいは心肺機能が高い人ほど、老化速度が遅いことが示されています。しかし、これは観察研究であるため、因果関係までは明らかになっていません。また、別の研究報告では、25%のカロリー制限を2年間行うと、老化速度が2〜3%ほど低下するという事例も紹介しました。

プロバイオティクスをはじめ、日本人を対象とした食事等の介入による研究報告はこれまでありませんでした。そこで、老化のホールマークに対し、ビフィズス菌がその基準をクリアできるかどうかを解説しました。
このうち、基準1である「加齢依存性」という観点では、日本人のビフィズス菌保有率が加齢とともに低下することをすでに発表しているため、条件を満たしていることになります。
一方、基準2である「老化促進性」という観点では現時点では合致しません。
そして、基準3の「可逆性」という観点では、何らかの影響を与えられれば老化速度を減速できるのではないかという仮説のもと、調査を行ったと話します。

ビフィズス菌が老化指標に与える影響を世界中の研究で調べたところ、ホールマークに挙げられる12のすべての要素について、直接的な作用ではないにせよ、間接的な作用のかたちで関連が見出されていると言います。

こうした研究論文の集積を受け、同社が保有するビフィズス菌BB536を用いて探索的な臨床試験に臨んだ結果について解説しました。これが2つ目のテーマである「ビフィズス菌配合ヨーグルトを含む介入による検証」です。
試験ではBMI25以上の50歳から74歳までの男性を対象とし、半数は普段通りに生活する対照群、残りの介入群はビフィズス菌BB536が配合されたプレーンヨーグルトを1日100g、12週間にわたって摂取しました。あわせて、実施しやすい運動や食事に関する指導も行われました。たとえば、1日30分以上のウォーキングを週3回以上、食事面では偏りや食べすぎ、間食などの習慣が多い場合は見直すように指導します。
評価項目としては、採血によるDNAメチル化の測定で老化関連指標を調査するとともに、体重や健康状態などを測定しました。

その結果、普段通りの生活を送った対照群の老化速度は変わらなかった一方、介入群は対照群と比べて老化速度が2.3%有意に低下したことを説明しました。介入群の中には、最大9.8%と大きく老化速度が減少した人もいたと言います。この2.3%という数値は、前述した「2年間の25%カロリー制限」によって得られる老化速度の低下とほぼ同じレベルです。
試験期間が12週間という短い期間であるにも関わらず、こうした結果が得られたことは、ヨーグルトの摂取を含む取り組みが老化速度の低下に十分な影響を及ぼしうる可能性を示唆していると述べました。

また、運動や食事などの生活習慣に対する指導をあわせて実施したことについて、BMIや運動回数の変化と老化速度の変化の関連性を分析した結果、両者に明確な関連性は認められなかったことを付け加えました。しかし、ビフィズス菌BB536が老化速度に単独でメインに働きかけているとも断言できず、BMIや運動回数の変化だけで老化速度の変化を説明することもできません。
つまり、ビフィズス菌BB536が含有されたヨーグルトと運動習慣・食事習慣の組み合わせによって、今回の老化速度の低下が認められたと考えられると説明しました。この研究成果こそが、食品による老化速度低下の可能性を示した日本初の報告です。

さらに、老化速度以外で臨床試験から得られたデータに基づき、ビフィズス菌BB536が老化速度を減速させるポテンシャルについて考察しました。これが、3つ目のテーマである「なぜビフィズス菌が老化速度に関わるのか」についての解説です。
同研究において、介入群は対照群と比較し、生物学的年齢である「GrimAge(グリムエイジ)」の値が低い傾向にあったと解説します。そのDNAメチル化パターンの詳細を調べたところ、介入群では特定の場所でDNAのメチル化が低下していることが明らかになりました。メチル化が低下したタンパク質の機能を調べてみると、免疫や腎機能に関与していることも分かってきました。

ヒトの腸内では、腸内細菌が「トリプトファン」から「インドール」という物質を合成します。その後、インドールは肝臓で「インドキシル硫酸」という尿毒素へ変換され、健康な方であれば速やかに排出されるため腎機能へ影響を与えることはほとんどありません。
しかし、腎機能が低下している状態では体内にインドキシル硫酸が蓄積し、腎臓に負担をかけて全身性の疾患を引き起こします。
小田巻氏は、HRB(ヒトにすむビフィズス菌)がインドールをヒトの健康にとって有用な物質である「ILA(インドール-3-乳酸)」へと変換することを、京都大学との共同研究で明らかにしました。実際に、試験管内で大腸菌にインドールを産生させる実験系において、そこにビフィズス菌BB536を加えるとインドールがほとんど消失したという結果もあわせて解説しました。

続いて、12のホールマークに対し、ビフィズス菌BB536が老化指標に影響を及ぼす可能性が世界中の研究で示されていることに言及しました。なかでも、「腸内細菌のディスバイオシス(菌叢の乱れ)」と「炎症反応の持続」に対する作用は注目に値すると話します。
腸内環境が乱れると腸管バリア機能が低下し、腸から有害物質が体内へと移行することは周知の事実です。その後、免疫細胞がそれらをキャッチする際に、炎症性物質を作り出すことが知られています。
ビフィズス菌BB536は、腸内環境の改善作用のほか、腸管バリア機能の改善作用、免疫に働きかけて炎症性物質の産生を抑えるなどの作用があることから、慢性炎症による老化を食い止める可能性があると小田巻氏は述べました。
最近の免疫学的な研究では、こうした一連にとどまらず、その上流に位置する炎症関連物質が免疫細胞に働きかけ、免疫細胞の性質そのものを変化させることで、同じ刺激が来ても炎症性物質を出しにくい性質へと「再プログラム化」するといった研究成果が報告されていることも紹介しました。

さらに、ビフィズス菌による炎症制御メカニズムの一端を解明した研究成果についても触れました。
免疫細胞からはさまざまなサイトカイン(炎症性物質)が分泌されますが、そこには個人差があります。実験では、被検者から免疫細胞を採取し、腸内細菌で刺激した場合の炎症反応を観察しました。その結果、腸内のビフィズス菌の占有率が低いヒトから分離した免疫細胞では、腸内細菌の刺激に対して顕著な炎症反応が起こりました。

この結果を踏まえ、「ビフィズス菌が免疫細胞の一種である単球に対してシグナルの役割を果たすのではないか」という仮説のもと実験が行われました。その結果、ビフィズス菌で刺激した免疫細胞の性質が変わり、炎症を起こしにくい細胞へと変化を遂げたことが推察されました。具体的には、免疫細胞の遺伝子発現やDNAメチル化が変化し、炎症反応が起こりづらい状態へと変わっていたのです。

これらの結果から、ビフィズス菌は、本来なら炎症物質によって刺激されてしまう免疫細胞を、炎症とは逆の方向に教育・誘導できる可能性があることが示唆されました。
小田巻氏は、「今回は慢性炎症の部分が中心であったが、ビフィズス菌の老化指標に対する影響はまだ多く存在する可能性が高い」と語ります。今後は、ビフィズス菌単独による試験でも、今回と同様の老化速度低下のデータを示していきたいと意気込みを語りました。

最後に、日本初となる食品による老化速度低下の可能性に関する研究報告のまとめとして、ビフィズス菌BB536が老化速度に働きかける作用機序には、有用な代謝物への変換作用や慢性炎症の多面的な制御などが深く関与していることを総括しました。
そして、今後もビフィズス菌研究を通じて、人々の健康に貢献できる優れた製品をお届けしたいと抱負を述べて締めくくりました。
今回の発表会では、ヨーグルトなど私たちの身近な食生活に寄り添ってきたビフィズス菌の、さらに奥深い新たな可能性を知る貴重な機会となりました。腎機能の負担軽減や慢性炎症の抑制など、老化速度低下につながるメカニズムの解明は始まったばかりであり、今後のさらなる研究の進展から目が離せません。
















