
【発表会レポート】日本初!食品介入で“老化スピード抑制”の成果を出した森永乳業の最新研究
【基調講演】老化研究の新領域「Geroscience/Geromedicine」京丹後コホートも次の段階へ

基調講演では、京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授の内藤裕二氏が「老化研究(Geroscience)最前線~京丹後長寿研究から見えてきたこと~」と題して登壇しました。講演内容は、「老化のホールマーク」「バイオロジカルクロック」、そして「京丹後コホート」の3つです。

いま、老化研究は「Geroscience(ジェロサイエンス)」と呼ばれ、そこから「Geromedicine(ジェロメディシン)」という創薬などの新しい領域も誕生し、非常に大きな領域になっていることを説明しました。これは、正常及び病的な老化の分子機構の理解を進めるとともに、これまで代謝やがんといった各領域で捉えられてきた課題を「すべて加齢関連疾患ではないか」という観点から捉え直し、老化のアプローチからその問題を解決しようとする概念です。
すでに海外では専門誌も登場し、日本でも日本抗加齢医学会が「NPJエージング」というジャーナルを立ち上げたことを紹介しました。そこには多くの関係者による投稿があり、閲覧数の増加を見ても、いかにこの分野が注目を集めているかが分かると語ります。

内藤氏は、ジェロサイエンスの必要性について「病気のもぐら叩きからの脱却」と表現し、老化を起点に捉えることでさまざまな病気の全体像が見えてくると指摘しました。具体例として、大腸がんでは内臓脂肪の老化が最初に起きているため、その進展を考える上では老化研究も欠かせないと解説。つまり、「大腸がんを考えるには、大腸だけを見ていても解決できない問題がある」と述べました。

講演1つ目のテーマである「老化のホールマーク」とは、2013年にロペス・オティンらが発表した老化の特徴を示す概念で、これが当時の老化研究を大きく促進したと説明します。この概念により、複雑な老化研究を幅広い領域での検証に耐えうる一連の細胞・分子過程として整理し、あらゆる分野の共通言語として研究を進めていくことが可能となりました。
あれから10年が経過し、当時9つだった特徴は2023年に3つ加わり、12個に増えています。新しく加わったのは、「オートファジー不全」「慢性炎症」「ディスバイオシス」の3つです。このうち、慢性炎症とディスバイオシスは密接にリンクする現象で、ディスバイオシスの結果として慢性炎症が起きている可能性が十分考えられると話しました。また、ホールマークにおける3つの基準である「加齢依存性」「老化促進性」「可逆性」についてもあわせて解説しました。


腸内細菌の関与する「ディスバイオシス」は介入によって改善が目指せる反面、加齢とともに変化し、食事や栄養、内外からのストレスの暴露によっても大きな影響を受けます。近年、話題を集める「ブレインヘルス(脳の健康)」に対しても、腸内細菌の果たす役割は少なくありません。こうした背景には、腸内細菌の分類に関する研究だけでなく、その代謝物に関する研究の目覚ましい進展があると語りました。

腸内細菌が産生する代謝物の短鎖脂肪酸のうち、酪酸はノーベル医学生理学賞でも話題を集めた制御性T細胞を誘導する作用で知られています。また、「百寿者研究」も進展し、日本人の百寿者の二次胆汁酸には非常に稀な代謝物である「イソアロLCA」が含まれることが明らかになっています。
ビフィズス菌はBSH(胆汁酸塩加水分解酵素)と呼ばれる抱合型胆汁酸を変化させる機能を持つことからも、胆汁酸とビフィズス菌に関する研究はいま非常に重要なテーマであると強調しました。
さらに、研究が進んでいるトリプトファン代謝物についても言及しました。ヒトがタンパク質を利用するように、腸内細菌もトリプトファンを利用するため、両者がアミノ酸を取り合う腸内環境が存在すると解説します。トリプトファン代謝物は腸脳相関を説明する重要な物質としても位置づけられ、今この領域が非常に大きな広がりを見せていると言い添えました。

講演2つ目のテーマである「バイオロジカルクロック」では、現在ゴールドスタンダードとも言える第1世代の「エピゲノム年齢(DNAのメチル化)」に加え、第2世代の「エピジェネティック時計」、そして第3世代の「DunedinPACE」について解説しました。
それぞれ測定方法に微妙な違いがあるなかで、何らかの介入による老化スピードの変化を捉えるという意味では、現在「DunedinPACE」が世界的に認識されていると話します。

さらに、生物学的年齢を測る時計は既存のエピジェネティッククロックにとどまらず、「プロテオームクロック」や「遺伝子発現クロック」、さらには「臓器クロック」といったものまで続々と登場し、簡単な採血で脳や腎臓の老化が分かる時代に突入していると述べました。

続いて3つ目のテーマである「京丹後コホート」の現況へと移り、解説を続けました。今年10年目を迎える本研究では、フレイルの進行具合だけにとどまらず、個々のエピジェネティッククロックの変化を縦断的なデータとして捉えられる時期に入ってきたと説明します。
2025年1月から約100名を対象に、日本人向けに開発されたエピジェネティッククロックを用いて測定したところ、同じ65歳以上であっても、京丹後の高齢者は東京の高齢者に比べてそのエピジェネティック年齢が若いことが示されたと話しました。

さらに、京丹後市の長寿者が保有するビフィズス菌の種類を調査した結果、一般に子どもが保有していない種類のビフィズス菌が多くを占有していることが分かりました。その理由はまだ明らかになっていません。酢酸や乳酸を産生するというシンプルなメカニズムは多くのビフィズス菌に共通しているものの、ヒト体内におけるビフィズス菌の動態や変化のメカニズムには、まだ多くの謎が残されています。これらの解明に向けて、内藤氏はより一層、多様な測定法を用いた詳細な解析に取り組んでいると進捗を語りました。
















