老化の原因として注目のサイトカイン。腸内細菌叢の制御が老化予防のカギ

老化の原因として、サイトカインの上昇を伴う軽度の慢性的な炎症が注目され、炎症を腸内細菌叢の制御で抑える研究が進んでいます。老化予防がプロバイオティクスなどの新たな価値となるかもしれません。今回はサイトカインについて解説します。

サイトカインは炎症反応を司る情報伝達物質

サイトカインとは、主に免疫細胞が産生・分泌するタンパク質のことです。さまざまな細胞に情報を伝達して、免疫細胞の分化・増殖・活性化などの反応を誘導する役割を担います。サイトカインはその機能に応じて、炎症を助長する「炎症性サイトカイン」と、炎症を収束に向かわせる「抗炎症性サイトカイン」の2種類に分類されます。
サイトカインの働きに問題が生じて免疫細胞が過剰に活性化されたり、不要な免疫応答が起きたりすると、自己免疫疾患やアレルギーの原因となることがあります。このほかにもサイトカインは、がん細胞の増殖や骨代謝など、さまざまな生体反応の調節で重要な働きをしています。

老化の本質は炎症性サイトカインの上昇を引き起こす細胞老化

いま、サイトカインが老化と深く関わりがあることが判明し、注目されています。
炎症反応には感染や怪我などで起こる急性炎症と、体や組織への持続的なストレスによって起こる慢性炎症があります。近年、高齢者は健康であっても軽度の慢性的な炎症が全身で起きており、サイトカインがわずかに上昇していることが明らかになりました。これを「inflammaging(inflammation+aging)(インフラメージング)」と呼びます。inflammagingは気管支喘息、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチのような自己免疫疾患だけでなく、動脈硬化、心不全、糖尿病、認知症、がんなどの老化関連疾患や老化そのものとの関連が指摘されています。

inflammagingの原因として有力視されるのが「細胞老化」です。細胞老化とは、細胞が増殖促進刺激に抵抗性を持つために細胞周期が停止し、新たに細胞分裂をしなくなった状態です。老化した細胞は加齢とともに増加し、さらに炎症性サイトカインなどを分泌して全身で軽度の慢性的な炎症を持続させます。これが「老化の本質」と考えられるようになりました。

腸内細菌叢の制御が老化予防のカギ

細胞老化によるinflammagingを引き起こす要因の一つとして注目されているのが、腸内細菌叢の変化です。
腸内には免疫細胞の約70%が集まっており、腸内免疫と呼ばれています。腸内免疫の働きは腸内細菌の構成割合が変化することで悪化し、炎症反応を促進することで健康や加齢の質に影響を与えています。肥満による非アルコール性脂肪肝炎によって肝臓がんを発症した患者を調べたところ、3割の人で、肝臓細胞が細胞老化によって炎症性サイトカインなどを分泌していました。この機序を調べると、高脂肪食を長期間摂取することで腸管免疫の働きが弱くなり、その影響で腸内細菌の代謝物が肝臓に運ばれて細胞老化を引き起こすことが明らかになりました。

腸内細菌叢を良好な状態に制御することで慢性炎症を回避し、細胞老化を防げることが可能になるかもしれません。今後さらなる研究成果の蓄積によって腸内細菌が老化に及ぼす影響が明らかとなれば、腸内細菌を通した老化機構の制御が期待されます。腸内細菌を直接摂取するプロバイオティクスや、腸内細菌のエサを摂取するプレバイオティクスなど、腸内細菌叢を整える食品はこれまでも健康意識の高い層に支持され、市場規模を拡大させてきました。老化制御という新たな価値を示せるようになれば、さらに新しい市場の開拓が期待できるかもしれません。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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