ストレス社会に進化し続ける「アダプトゲン」の今を知る!
ストレスに対し適応力を高めるハーブや生薬の総称「アダプトゲン」は、ホメオスタシスを最適に維持するとして現代のストレス社会で注目を集めています。その歴史は古く、作用機序は謎に包まれていましたが少しずつ分かってきました。今回は、アダプトゲンの今と注目を集める成分について解説していきます。
「アダプトゲン」とは、適応力を高めるハーブや生薬の総称
アダプトゲン(Adaptogens)とは、ストレスに対する適応力や抵抗力を高めるハーブや生薬の総称です。その歴史は古く、世界最古の長寿医学ともいわれるインド・スリランカ発祥のアーユルヴェーダや、日本独自で発展した漢方医学にも取り入れられてきました。
代表的なものには、朝鮮人参(別名オタネニンジン)や黄耆(オウギ)、甘草(カンゾウ、別名リコリス)といった医療用で処方される漢方薬としても見かける生薬から、マカ、ロディオラ(別名イワベンケイ)、チャーガ(別名カバノアナタケ)、霊芝(レイシ、別名マンネンタケ)のような食品や化粧品として活用されているものまで様々です。
ひも解かれつつあるアダプトゲンの有用性と注意点
作用機序について謎が多いとされてきたアダプトゲンですが、近年では少しずつ、成分に関する研究結果が増えてきています。
例えば、ストレスに対する適応力の向上や不安の軽減、滋養強壮に良いといわれるアシュワガンダ(別名インド人参、学名;Withania somnifera)。これにはストレスホルモンとされる血液中のコルチゾールと、自己評価によるストレス評価アンケートのスコアを有意に減らしたという研究結果があります。
ただし、含有する成分「ウィザフェリンA」における毒性が懸念され、わが国では2013年から薬に区分されたという事実も無視することはできません。適切な量で摂取すれば問題はないとされながらも、この背景が示すものは、人類が経験的に積み重ねてきたアダプトゲンは、サイエンスでその作用が立証され始めたということ。私たちは、ホメオスタシスに悪影響を及ぼさない範囲で、これを有効活用することが重要だと言えるでしょう。
進化し続けるアダプトゲン、期待と展望
ほかのアダプトゲンに関する成分においても研究が進み、細胞の生存とアポトーシスにおいて重要な役割を果たす「ストレスセンサー」タンパク質“HSP70”に注目するなど、分子レベルで検証されています。
このうち食品として摂ることが出来るロディオラは、精神的な疲労状態にあるときの耐久性を高めるという、ストレス保護効果において有益だとする結果が出ました。また、頭髪ケア成分として注目されているチャーガは、毛乳頭細胞の増殖を促す育毛剤でPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の承認を得ることにより、効果だけでなく安全性も立証されているのです。
古くから人類にとってアップレギュレーションをもたらしてきたアダプトゲンは、近い将来で食やスキンケアに留まることなく、さらなる進化をとげていくかもしれません。
ストレス社会における、アダプトゲンの取り入れ方
現代では昨今のコロナ禍もあり、ストレス社会への適応力やメンタルヘルスが注目を集めています。中でも「食」は、身体を維持するための基本的な機能から、不安やストレスを和らげるというようなプラスアルファの機能へと期待が高まってきました。
最近、耳にするようになった「ムードフード」は、アダプトゲンと少し似ているかもしれません。緑茶に含まれるテアニン、発酵食品や発芽玄米に含まれるギャバなど、私たちの周りには抗ストレス作用を期待する食品(ムードフード)が数多くあります。
対するアダプトゲンは、精神的ストレスに加えて身体的ストレスにもアプローチ。ある成分はエネルギー産生経路に関与することで、疲労時における持久力を増加するとの報告があります。また、アーユルヴェーダの考え方に基づき、ストレスを特定の部位に限定せずホメオスタシスを最適に維持するという点でも異なるものです。
心身における様々なストレス社会を楽しく過ごすために、基本となる食やスキンケアに加えて、アダプトゲンなどの機能的な成分への関心が高まっていくでしょう。そしてこれらはトレンドを作り、いずれ人々はストレスの有無に限らず、日常的にアダプトゲンを摂取する時代がくるのかもしれません。