幸福度と健康関心度の関連も!「ウェルネストレンド白書」徹底活用法

一般社団法人ウェルネス総合研究所は、10代~70代、約4800名の生活者の健康・ウェルネスに関する意識と行動分析に基づき、今後予測されるヘルス・トレンドシナリオを洞察した調査レポート『ウェルネストレンド白書 Vol.1』を2021年12月7日に刊行しました。本白書ではプロファイリング分析により、生活者を「7つの健康セグメント」に新たに分類。各健康セグメントの特性を明らかにするとともに、各セグメントによる興味関心をヘルスベネフィット、素材・成分の観点から分析しています。本調査の設計、調査、分析を行った監修をつとめたウェルネス総合研究所の主席アナリストである青木健氏と白井俊行氏に、今回の調査における発見や活用法についてうかがいました。

因子分析を繰り返して浮かび上がってきた「7つの健康セグメント」

「ウェルネストレンド白書」の最大の特徴は、生活者を「健康ストイック層」「健康コンシャス層」「コツコツ健康層」「ラクして健康層」「まだ大丈夫層」「トレーニング大好き層」「健康無関心層」の「7つの健康セグメント」に分類したことだと思います。分類にあたってどんなご苦労がありましたか?

【青木】日常生活で感じている健康へのこだわりとか、運動するかしないか、ナチュラルなものを摂りたいかといった要素を因子分析していったのですが、最初は「健康コンシャス層」と「健康ストイック層」の両方に入ってしまう人が出てきたりして、うまく分かれませんでした。

【白井】表には出していませんが、健康セグメントの分類のために調査票では何十問も価値観の話を聞いていたりします。それを因子分析にかけるのですが、おもなプロセスだけでも3~4回は繰り返して試行錯誤しながら、全員が納得感のある内容にしていきました。

図:健康セグメントの分布

「7つの健康セグメント」に関してはどんな発見がありましたか?

【青木】まずは健康リテラシーの高い層と言える「健康ストイック層」(9.0%)と、「健康コンシャス層」(7.8%)、「コツコツ健康層」(17.2%)に関して言えば、「健康ストイック層」と「コツコツ健康層」は似ています。健康になることって、運動しなければらないとか、食べたいものを我慢しなければならないとか。そういうことに対してある程度受容ができ、やっていきたいと思っている人たちです。

図:健康ストイック層のプロファイル

そして、「健康ストイック層」と「コツコツ健康層」は下記のグラフのように、年齢が高くなるにつれて増えていくという特徴があります。
一方、「健康コンシャス層」は年齢に比例して増えていくかというとそうではなく、一定の割合でどの年齢層にもいます。どういう人たちかというと、特徴的なのは健康行動に対してあまり満足していないので、何かいい方法はないかと常に探しています。だから比較的新しい方法や最新の健康アプローチなどの情報を常にとっていて、自分に合った方法であれば続けたいと思っている人たちです。こうした上位のヘルスリテラシーの高い人たちの傾向の違いがわかったことは大きな発見でした。

図:年代別構成比

中から低程度のヘルスリテラシーのセグメントは全体の66%を占めています。その中で「トレーニング大好き層」(6.1%)は「健康ストイック層」に近いですが、能動的に接触している情報に偏りがあることがわかりました。日本人に一番多いのが「まだ大丈夫層」(27.3%)と「ラクして健康層」(19.5%)です。この人たちをどうターゲットにしていくかというのが、素材メーカーや食品メーカーなどが考えていかなければならないことなのかなと思っています。最もヘルスリテラシーが低い「健康無関心層」(13.1%)は、おそらくいろいろな事情があって、健康に対する優先順位を上げられない層ですね。「健康無関心層」は幸福度がすごく低い人が多いです。
こうしたセグメントの細かさが今回、われわれがこだわったところで、ぜひ活用していただきたいと考えています。

健康であることと幸福であることは相関していた

今回の調査の大きな特徴の一つは「幸福度」を打ち出したことにあります。「幸福度」に関してはどんな発見がありましたか?

【白井】意外だったのは、健康であることと幸せであることは独立だと思っていたら、結構一緒ということが、今回の調査でわかったことです。健康であることと幸せであることが相関するというのはおもしろいと思いました。

図:健康生活度と幸福度

例えば、どの素材をニーズとして持っている人が幸福度が高いのか、逆に幸福度が低い人はどのへんに渇望感があるのか。例えば飲み物を買うときは「のどの渇きを止めたい」というニーズがあると思いますが、それと近い形で、自分が幸福でなかったり健康でないから、もっとよくしていくためにはここを満たさなければというところが、素材やヘルスベネフィットがどう結びつくのか。ぜひここは今後、個別で見ていきたいと思います。また、日本全体で、素材とかヘルスベネフィットという切り口で見たときに幸せな人が増えているのかということも、引き続き見ていきたいと思っています。

「幸福度」の判断材料についてもセグメントごとに見ています。

【青木】幸福度と健康の関係は、「健康ストイック層」がずば抜けて高いです。つまり、健康であることが幸せであると考える人たちです。一方、健康に関するアプローチによって幸福度を上げていく余地があるのは「健康コンシャス層」と「コツコツ健康層」ではないかと思います。この人たちはもっと健康のために頑張りましょうという課題啓発よりも、すでに何かしらの行動をしているので、自分が正しい行動をしているのだと実感できるアプローチをすることが重要ではないかと考えられます。罪悪感をなくすとか、おいしく健康だとか、ストーリーで引き上げられる余地がある人たちですね。

図:自身の幸福度の判断材料

所得と幸福度や健康リテラシーとの相関についてはいかがですか?

【白井】所得については年収レンジではなく、「家計状況が自分の幸福度を左右するかどうか」ということが重要だと考えています。上のグラフで言うと「家計状況(所得・消費)」と「精神的なゆとり、ストレス状況」ですね。これを見ると「健康無関心層」はそのどちらも、他のセグメントと比べて幸福の判断材料として重要視していることがわかります。

ヘルスベネフィットごとの潜在需要にも注目

本白書では、各ヘルスベネフィットにどんな人がどのように関心を抱いているか、また、どのように対処しているかが明らかにされています。ここはどのように活用していけばよいでしょうか。

図:へルスベネフィットから見た顕在、潜在市場の指標

【青木】あるヘルスベネフィットに対して今、対策している人だけではなくて、対策したいけれど今は行動していない人の割合がどのぐらいいるかということを出しています。これは潜在市場を表す指標ですが、それを上位で並べてみたら結構面白くて。たとえば「疲労回復」とか、「たるみ」とか、潜在市場の指標が高いベネフィットは、想像ですが「使用したけど効果がなくてあきらめている、だから今はやっていない」というところがあるのではないかと思います。一方、顕在化していて潜在市場の指標が低いベネフィットは「高血圧」とか「尿酸値」とか、すでに症状が出ているものが多い。つまり顕在/潜在市場の指標は、単に市場の大きさだけではなくて、開拓の余地がどうあるのかといった判断に使えるのではないかと思います。

【白井】潜在需要の市場規模がわかるレポートは他にもあると思いますが、本白書はニーズベース、調査ベースなので、他の素材と比べてとか、このベネフィットに対してどうかといった見え方も参考になるのかなと思います。

【青木】さらに性年代別で、誰が求めているのか、たとえば「疲労回復」でいうと30代女性が非常に高いですが、その人たちが何で対処しているか。食で対処したいのか、運動で対処したいのか、生活習慣で対処したいのか。また、その人たちの疲れをわかってあげる。よく寝ましょうとか運動しましょうと言われても、忙しく働いている30代女性にそれは難しいですよね、というふうに共感してあげた上で、そんなあなたのためにこんな新しい素材やサポートがありますよ、とストーリーを考える際の、一つの検討材料になると思います。

インサイトを活用して“生活者が幸せになる”素材・製品開発を

本白書は素材メーカー、食品メーカーの方にどのように活用してもらいたいですか。

【白井】今回の白書が、性年代別ではないインサイトの掘り方を、ちょっと違った目線で見てみる気づきになればと思っています。40代女性とか50代女性といったターゲットを設定することが多いと思いますが、その中にもいろんな人がいますので、今回「健康セグメント」で見ていただいたように、こういうニーズや価値観で行動する人は、もちろん性年代別もありますが、単純に性年代だけで説明できるものではないです。40代女性の中にもこんな人がいる、という形で、お客様をリアルにイメージしやすくなると思います。

【青木】素材名やヘルスクレームで差別化するのが難しくなっている中で、特に素材メーカー様には、お客様に売りたいものがどうすれば伝わるか、どういう切り口だったら誰が喜んでくれるのかを考えるきっかけになればいいと思っています。また、この素材ってこんなお客さんだったら喜んでくれそう、こんな生活だったら良い、もしくはこのヘルスクレームを解決するような素材として打ち出していきたいとか、より生活者が気持ちよく使える、幸せに使えるようなアイテムを開発していく助けになればと思います。

ウェルネストレンド白書の詳細はこちら

⻘⽊ 健 氏 プロフィール

株式会社インテグレート パーセプション/ビヘイビアデザイン戦略部ストラテジックディレクター 兼 ウェルネス総合研究所 主席アナリスト。マーケティングリサーチ領域における定量・定性調査設計/および分析の経験と、生活者インサイトをベースとした戦略プランナーの両方の経験をもつ。担当領域は主にFMCGの商品開発支援、ブランド戦略⽴案、新規事業開発支援など多岐にわたる。

白井 俊⾏ 氏 プロフィール

株式会社インテグレート 戦略コンサルティング部プロジェクトマネージャー データアナリティクス担当 兼 ウェルネス総合研究所 主席アナリスト。CRM/デジタル領域におけるアナリスト経験と、クライアントのビジネス課題をコミュニケーションで解決する戦略プランナーの両方の経験を持つ。担当領域は、KPI策定、調査設計、⾏動ログ分析、予測モデル構築など多岐にわたる。

ウェルネス総研レポートonline編集部

関連記事一覧