ウェルネストレンド調査でわかった 生活者と提供者のギャップの衝撃

一般社団法人ウェルネス総合研究所は、10代~70代、4800名の生活者の健康・ウェルネスに関する意識と行動分析に基づき、今後予測されるヘルス・トレンドシナリオを洞察した調査レポート『ウェルネストレンド白書 Vol.1』を12月7日に刊行しました。本白書ではプロファイリング分析により、生活者を「7つの健康セグメント」に新たに分類。各健康セグメントの特性を明らかにするとともに、各セグメントによる興味関心をヘルスベネフィット、素材・成分の観点から分析しています。本調査の監修をつとめたグローバルニュートリショングループの武田猛氏に、調査結果から見えてきた気づきや調査の意義をうかがいました。

商品開発やマーケティングの視点から行った初のウェルネストレンド調査

武田様が今回監修された「ウェルネストレンド白書」は他の調査とはどのように違うのでしょうか。

これまでもさまざまな調査会社が、健康食品についての市場調査を行ってきました。たとえばあるヘルスベネフィットの市場規模が何億円であり、そのトップ企業のシェアは何%である、ユーザーは性・年代別にどの層が多いのかといったデモグラフィックな分析など。こうしたデータは経営判断にはもちろん役立ちますが、製品開発やマーケティング戦略を考えるためにはあまり参考にならないのではないでしょうか。
一方、今回の白書は「ウェルネス業界人による、ウェルネス業界人のためのウェルネストレンド白書」であることが特徴です。ウェルネスの市場でビジネスをする上で誰がお客様なのか、その人たちはどんな行動特性があるのか、その人たちにどのような商品を提供したり、情報発信を行っていけばいいのかを考える上で、具体的に活用していただける内容になっていると思います。

最大の特徴はどのようなところにあるのでしょうか。

生活者を7つのセグメントに落とし込んだことです。7つのセグメントは、マーケティング観点で導き出した仮説をもとに、事前調査で出現率や分布を確認、その結果を因子分析にかけて得られた16因子に基づいて分類されています。主観的な分類ではなく、各セグメントの人たちがどの質問に答えたかという紐づけがしっかりあるものです。

図:健康セグメントの因子分析

商品開発やマーケティングの視点から行った初のウェルネストレンド調査

 7つのセグメントとは具体的にどのようなものでしょうか。

「健康ストイック層」「健康コンシャス層」「コツコツ健康層」「ラクして健康層」「まだ大丈夫層」「トレーニング大好き層」「健康無関心層」の7つです。それぞれの特徴は下記をご覧ください。

図:年代別構成比

分類してみてわかったのは、日本人のヘルスリテラシーは決して高くないということでした。ヘルスリテラシーとは、WHOの定義によると「健康維持、または維持に必要な情報にアクセスし、それを理解して利用していくための、個人の意欲や能力を決定する、認知・社会的なスキル」です。もともと日本は国際的に見てヘルスリテラシーが低いと言われていましたが、それを証明した形になりました。

表の上の方ほどヘルスリテラシーが高い層、下に行くほどヘルスリテラシーが低い層とういことになりますか?

そうです。「健康ストイック層」「健康コンシャス層」「コツコツ健康層」がいわゆるヘルスリテラシーが高い層になりますが、これが全体の34%と、約3分の1しかないわけです。
ここで注意しなければならないのは、ヘルスリテラシーが高い人と、低い人に同じ情報を出しても購買につながらないということ。ターゲットとする生活者のヘルスリテラシーを見極めることが、効果的なマーケティングのためには必要ではないかということです。

図:7つの健康セグメント構成

7つの分類のうち、「トレーニング大好き層」が健康リテラシーが低い部類に位置付けられていることが意外でした。

この層は一見、健康に対してストイックに見えますが、情報源が限られているのが特徴です。筋トレに関する情報については幅広く閲覧していますが、それ以外の情報への接触が少なく、そのことが素材食品の認知率などに顕著に表れているのです。

進みつつあるサプリメント離れや、ヘルスクレームの幻想も明らかに

そのほかに調査結果からどんな気づきがありましたか?

まずはサプリメント離れが進みつつあるのではないか、ということです。現在気になっているヘルスベネフィットについて、どのように予防・対策したいかという質問に対しては、すべてのセグメントにおいてサプリメントの摂取よりも食生活の改善の方がスコアが高くなっています。特に若い層の利用率がやや低くなっており、これはサプリメント先進国のアメリカでも顕著で、ミレニアルやジェネレーションZといわれる若い世代はナチュラルヘルス重視で、サプリメントに関心を示さないという報告があります。年代とセグメントごとにサプリメントの利用率が変わるため、ニュートリション関連商品を提供する場合の形態にも注意を払うことが重要であると考えられます。

図:あるヘルスベネフィットの対策手段

もう一つは「ヘルスクレームの幻想」です。これも欧米でも言われていることですが、今回の調査結果で、素材・成分ごとに気になるヘルスベネフィットのトップ10を聞いています。例えば、乳酸菌という素材で気になるヘルスベネフィットといえば、当然、「整腸や便秘・下痢の改善」がトップに来ると思われるでしょう。ところが、トップは「健康維持」で、「整腸や便秘・下痢の改善」よりも10ポイントもスコアが高かったのです。これは乳酸菌のみならず、他の素材・成分でも同様で、ほとんどの素材で「健康維持」が1位でした(下表参照)。

図:摂取成分ごとの気になるヘルスベネフィット

苦労して機能性表示食品の届出を行い、ヘルスクレームができるようになっても、4700件以上の届出がある機能性表示食品の中で成功しているのは100件程度といわれる一因がここにあるのではと考えられます。生活者が求めているのは「健康維持」であり、その先には「ウェルビーイング=心身ともに幸福な状態」があることを理解し、そこに対するメッセージを出し、プロモーションを行っていく必要があるのではないでしょうか。ヘルスクレームは商品のメリットを伝える手段ではあるが、重要なのは消費者のニーズ・マインドであり、ヘルスクレームはその消費者ニーズやマインドとマッチしなければ心が動かない、購買に繋がらないといえるのかもしれません。もちろん、エビデンスは軽視してはならないものであることは言うまでもありません。
アメリカの市場では10年ぐらい前から、ヘルスクレームからストーリーへと、コミュニケーションの軸足が変わってきました。日本でも機能性表示食品がスタートして6年半がたち、ヘルスクレームはストーリーを伝えるための一つの手段であることを理解し、各社独自のストーリーを作っていくことが必要な段階に入ってきたのかもしれません。

重要なのはストーリーづくり。分析結果×想像力で仮説を立てる

 ストーリーはどのように作っていけばよいのでしょうか。

本白書では、各ヘルスベネフィットにどんな人がどのように関心を抱いているか、また、どのように対処しているかが明らかにされています。すでに対処している人は顕在市場ですが、一方、対処していない人の中にも、対処意向がある人とそうでない人があり、対処意向がある人は潜在市場と見ることができます。自社が提供するヘルスベネフィットごと、あるいは素材・成分ごとに、どの層の人たちにどのようなメッセージを伝えていくかを検討していくことにより、ストーリー設計のヒントが見つかるのではないかと期待しています。

図:へルスベネフィットから見た顕在、潜在市場の指標

ストーリーづくりにこの白書を活かしていく上で、ポイントはありますか。

データはただデータとして見ればそれだけのものですが、大切なのは想像力だと思います。この結果からどんなことが起きているのか、なぜこの健康セグメントではこの年代の人が少ないのかなど、仮説を立てながら読み込むことで、いろいろなプランを立てていただければと思います。各セグメント別に「幸福度」も出していますので、各セグメントが求めるウェルビーイングをイメージするヒントにもなるはずです。
さらに本白書では、54の素材・成分の認知、理解、摂取意向についてファネルモデル(下図)を用いて、各素材・成分の「認知率」「特徴理解率」「関心率」「摂取意向率」「摂取率」を算出し、生活者の性別、年代、健康セグメントとのクロス分析も行っています。こうしたデータを活用しながら、自社の食品機能性がどのようなストーリーで認知から摂取に至るのかを推察することもできるでしょう。

図:素材・成分の認知ファネル

今後の展開について教えてください。

今回が第1回の調査になりますが、初回から非常に興味深い結果が得られたと思います。今後は年2回の調査を行うことで経年的に深めていくとともに、積み重ねていくことでトレンドを見極めていきたいと考えています。また、活用方法についてのセミナーを行ったり、活用していく中での要望をフィードバックいただいたりしながら、より使い勝手のよいレポートに進化させていければといいですね。

ウェルネストレンド白書の詳細はこちら

武田猛氏 プロフィール

株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役。18年間の実務経験と17年間のコンサルタントとしての経験を積み、35年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わる。コンサルタントとしては国内外合わせて650以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」のもとに先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。

ウェルネス総研レポートonline編集部

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