いま改めて考える「間食の栄養学」
間食は肥満の原因となる一方、効果的に摂ることで健康に近づくことも可能です。8月23日に開催された国際おやつ(OYATSU)研究会 (代表理事 早稲田大学 矢澤一良氏)の第3回オンラインセミナーでは女子栄養大学の香川靖雄副学長が登壇され、「洋菓子、和菓子、中華菓子のNRF(高栄養素食品指数)の増加法」をテーマにご講演されました。現代人の食生活の問題点を補完する、“間食の栄養学”の視点が必要とされてきています。
栄養学の視点で考える間食の重要性
栄養学では、朝食・昼食・夕食以外で摂取するエネルギー源となる食べ物や飲み物のことを間食と言います。菓子類を含むおやつもその一つです。間食は摂り過ぎると肥満の原因となりますが、不足している栄養素を補う役割も担っています。加えて、摂取回数や質、量を考慮することで、さらに健康に寄与することも明らかになっています。
例えば、日本人女性で比べたときに、間食を毎日摂る人はそうでない人よりもフレイル状態になりにくいことがわかっています。また、スポーツ選手は試合開始までの残り時間に合わせて間食の量や内容を変更して体力の増強を図ったり、運動中に飲むスポーツドリンクの炭水化物の濃度や摂取タイミングを調整して運動中の疲労を予防したりしています。さらに、高齢者の健康もアスリートのパフォーマンスも、間食にたんぱく質を追加することでより効果が上がることが明らかになっています。
こうした情報は少しずつ健康に関心の高い層に広がり、タイミングや栄養成分を意識した間食へのニーズは広がっています。この流れをさらに大きくしていくために、一目でわかる指標の導入が効果的ではないでしょうか。
質の良い間食に重要なGI値やNRFとは?
健康に寄与する間食は、食後血糖値の上昇が緩やかです。なぜなら、血糖値の大幅な上昇は多量のインスリン分泌につながり、体への負担が大きくなるからです。この食後血糖値の上昇具合を食品ごとに示した指標がGI値です。質の良い間食選びには、GI値が重要な視点となります。
また、不足している栄養素を補うという間食の役割に注目したときに重視したいのがNRF(Nutrient-rich food index:高栄養素食品指数)です。NRFとは、100kcalの中に含まれる推奨したい栄養素の量と制限したい栄養素の量から、その食品がどれくらい体にいいかを相対的に評価した指標です。例えば同じ穀類であっても、そばのNRFは68であるのに対して、塩分や飽和脂肪酸が多く含まれる即席中華麺は-3.7と低い値を示します。
健康を意識した間食への関心を高め、その価値をアピールする手段として、このGI値やNRFを活用して間食の商品開発に取り組み、わかりやすく表示することで、消費者はひと目でその価値を理解することができることから、他商品との差別化が容易となり、新しい市場を広げることができるかもしれません。消費者にとっても、自分に足りない栄養素を補える間食が市場に増えることはメリットとなるでしょう。
健康的な間食の開発には時間栄養学の視点も重要
健康的な間食の商品開発には、GI値やNRFなどの指標の活用だけでなく、時間栄養学の視点を活かすことも重要です。
たとえば、たんぱく質、食物繊維、カテキン、咀嚼に時間がかかる成分などは、血糖値の上昇を緩やかにします。
また、血糖値を上昇させやすい糖分や脂肪分の多い食品であっても、10時から15時の間に摂ると血糖値の上昇が緩やかになることがわかっています。商品の摂取時刻を指定することは薬機法(医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で禁止されているため行えませんが、栄養士が商品の摂取時間をアドバイスすることは可能です。このように、時間栄養学の視点を活用して商品の開発・企画を検討するのもよいでしょう。
間食は「知らないうちに健康に」を実現できる
間食は、健康にいい成分を加えることが可能です。そのような視点で開発された商品を摂ることで、多くの人が知らないうちに健康になることができます。
例えば現代の日本人では、特に朝食を欠食する人で、カルシウム、ビタミンB2、鉄分の摂取量が推奨量に達していないと言われています。このように不足しがちな栄養素を加えた間食を開発することで、日本の栄養課題に貢献することが可能です。新しい間食市場の拡大には、こういった視点も有効ではないでしょうか。