
【サイエンス】Akkermansia mucliniphila菌発酵チコリが抗肥満を示す可能性
Akkermansia muciniphila菌で発酵したチコリ根エキス由来のファイトポストバイオティクス(植物由来ポストバイオティクス)は、抗酸化作用および抗炎症作用を兼ね備え、肥満を防ぐ可能性を持つことがフランスの研究で示唆された。
Universite Clermont-Auvergneなどの研究チームは、発酵させたチコリやセイヨウトチノキから抽出したファイトポストバイオティクスと腸内の善玉菌10株の特徴づけや比較を目的とした研究を行った。10株の細菌には、L reuteri DSMZ 20016、L gasseri DSMZ 20604、L crispatus LMG 12005、B coagulans LMG 6326、B longum CIP 64.62T、B bifidum(Greencell株)、B breve CIP 64.69T、A muciniphila DSMZ-DSM 22959、F prausnitzii DSMZ-DSM 17677、R intestinalis DSMZ-DSM 14610が選ばれた。どの株も発酵後、加熱処理で不活化しており、したがってポストバイオティクスエキスを産生している。
In vitro 試験では、チコリ根とAkkermansia muciniphila(C-Akm)の発酵物は、白血球における活性酸素種(ROS)を減少し、炎症促進マーカーであるTNF-α、IL-6の遺伝子発現を低下させたことがわかった。また、C-Akmは脂肪細胞とマクロファージとの相互作用を促進し、炎症を軽減する効果を見せた。
研究者は「C-Akmエキスは、炎症とアディポカイン生成を低減することで肥満をコントロールする可能性が大きいことを示した」と結論付けた。Akkermansia muciniphilaは、腸内に住むグラム陰性、偏性嫌気性菌で、人の腸内腸内細菌叢の約3%を占めるという。主に腸の粘膜層に存在し、BMIや1型糖尿病、腸疾患と負の相関関係を示している。この菌は、腸の粘膜層を作る細胞に供給する栄養を生成し、健康な腸壁機能を維持し、腸の透過性をコントロールする。韓国の研究(2021年)では、Akkermansia muciniphila菌は、経口ブドウ糖負荷試験直後の GLP-1の穏やかな増加を刺激するたんぱく質を分泌する可能性があることが示された。同研究はCurrent Research in Food Scienceに掲載されている。
「GNGグローバルニュース 2025年5月12日号」より