自然免疫シンポとLPS

自然免疫と免疫素材「LPS」(リポポリサッカライド:小麦発酵抽出物)を中心に研究開発を進めている自然免疫制御技術研究組合(香川県高松市)は毎年3月に自然免疫シンポジウムを主催しており、今年は3月7日に第13回自然免疫シンポジウムを「認知機能と自然免疫」と題して東京・港区のグランパークカンファレンスにおいて盛大に開催した。4つの講演が行われ、高齢者でもマイクログリア(脳組織マクロファージ)のアミロイドβを貪食しLPSが貪食機能を活性化する研究、LPSと量子医学の統合医療、認知症と糖化ストレスの関係性等多彩な講演が行われ、中でもLPSによる認知機能予防改善研究等が大きな注目を集めた。

シンポの冒頭、同研究組合代表理事の杣源一郎氏、経産省生物化学産業課の新階央氏、バイオインダストリー協会専務理事の塚本芳昭氏、四国産業・技術振興センター理事長の池澤寛氏が登壇し、開会の挨拶を行った。杣代表理事は、「究極の病ともいわれる認知症の予防改善等に資する自然免疫やLPSに関する研究とこれからの展望を理解していただく機会」と挨拶した。

プログラムは①認知機能と自然免疫(麻布大学生命・環境科学部、本田晃子教授)②パントエア菌LPSの臨床試験から見えてきた脳と腸の関係性について(医療法人ふじいやさか表参道ウェルネス総合医療クリニック、森嶌淳友院長)③認知症予防改善におけるLPSの可能性(自然免疫制御技術研究組合、河内千恵理事)④認知機能への影響因子・腸内細菌叢、睡眠、食育(同志社大学生命医科学部、米井嘉一教授)の順に登壇した。

本田教授は、高齢者ではマクロファージ貪食能が低下したという報告があった中で、高齢者でもマイクログリアを活性化して貪食能を維持し、アミロイドβの蓄積を防止することが可能であれば、アルツハイマー型の認知症の発症を予防できるとし、その観点で研究を進めており、LPSの経口摂取によるマイクログリアの貪食能増強効果等を報告、マイクログリア活性化による作用は、自然免疫に基づく新しい認知症治療および発症予防の基盤となるとまとめた。

森嶌院長は、統合医療との出会いから、バイオレゾナンス(ドイツ振動医学)の測定を実施し、今自然がもたらすものが検査できる時代になり、量子医学をクリニックでは進めており、周波数による検査を行うことで、目に見えない自然の叡智が検知できるという。その中でLPSによる治療を行って臨床的効果を得たことや腸脳相関および認知症とLPSの論文報告の話題も提供した。

河内理事は、LPS摂取による認知症予防・改善効果があることを3つのマウス試験で検証したことを報告。老化促進マウスを使った実験系で、老化促進マウスを高脂肪食で飼育するとアルツハイマー病の発症が早まるが、LPSを飲水投与した群は脳内アミロイドβの量が少なく、水迷路試験で調べると記憶力の低下が抑制されることがわかった。他の試験でも学習能力と記憶力が高いことが示唆され、認知症予防および改善を確認した。メカニズムとして、LPSの刺激を受けた粘膜マクロファージが何らかのシグナルにより、膜結合型CSF1を発現したリンパ球に運ばれマイクログリアを刺激・活性化することを推測していた。

米井教授は高齢者の認知症患者の脳内の重要なタンパク質(アミロイドβ 、タウ、αシヌクレイン)が凝集を経て組織内沈着することについて、その要因の一つである糖化ストレスは、糖質由来アルデヒドに加えて脂肪酸由来アルデヒドがダブルパンチのように脳内タンパクを修飾する研究等々、血糖スパイクがアルデヒドスパークを起こすこと、糖化ストレスと認知症と老化について解説した。

「FOOD STYLE 21」2025年4月号 F’s eyeより

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