
「栄養状態を見える化する」——ファンケル「パーソナルワン」が見つけた、サプリメントの本来あるべき姿とは

株式会社ファンケル マーケティング戦略統括オフィス 健康食品事業本部 ウェルエイジングブランド 健康サポートG 主査 三原 千延さん
株式会社ファンケル(以下、ファンケル)は1981年創業の化粧品・健康食品メーカーで、日本にサプリメントの習慣を根付かせたパイオニアの一社です。同社は2020年から、尿検査とアンケートで個人の栄養状態を分析し、必要な種類・量のサプリメントをワンパックで届けるサービス「パーソナルワン」を始めました。サービス開始から6年、当初の想定を超えるユーザー層の広がりと、訴求軸の変化が生まれていたそうです。企画・開発を担当したマーケティング戦略統括オフィス 健康食品事業本部の三原千延さんに話を伺いました。
「サプリメントはどれを摂っていいかわからない」——そこから始まったサービスの原点
「パーソナルワン」の出発点は、ファンケルが日々届けるサプリメントに対して寄せられる声にありました。
「もともと弊社でサプリメントを提供する中で、『結局、どれを摂っていいかわからない』『自分に最適なサプリメントを知りたい』という声が多かったんです。そこがまず出発点でした。食生活や生活習慣は一人ひとり異なるので、必要な栄養素も違ってきます。そうした中で、個人の栄養状態や必要な栄養素を可視化し、必要なものを必要な量だけ提供できれば、という思いがありました」(三原さん)
こうした発想の背景には、三原さん自身の経験もあります。研究員として長年サプリメントの処方開発に携わり、「自分ではいい処方を作っているつもりなのに、なかなか継続してもらえない」というジレンマを感じていたといいます。
「体の中が変わっていくことを可視化できれば、自分が作っているサプリメントにも『飲んだほうがいい』と感じてもらえるのではないか。そう考え、『見える化』の技術を学ぶためにアメリカの大学院へ留学しました」(三原さん)
その後、ファンケル創業者である池森賢二氏が「最終形はパーソナルサプリだ」という意志のもとプロジェクトが発足。2017年に開発がスタートし、2020年のサービス開始に至りました。

個包装された1回分のオーダーメイドサプリメント。初回お届け時には丸い形の専用ケースが届く
「オーダーメイドサプリ」より「まず栄養状態を見ましょう」
「パーソナルワン」は、45問のアンケートと尿検査を組み合わせ、日本人が不足しがちな10種の基本栄養素(ビタミン5種、ミネラル4種、DHA)について現在の充足度や不足の原因を分析し、最適なサプリメントを提案するサービスです。身体の基盤を整える『ベースサプリ』と、健康の悩みに対応する『健康悩み対策サプリ』を提案しており、その組み合わせは10億通り以上にのぼります。ただ、三原さんが強調するのは、「オーダーメイドサプリ」という言葉以上に、まず伝えたいメッセージがあるということです。
「『オーダーメイドサプリ』と聞くと、『高い』という印象が先に立ってしまいます。だからこそ、『まずは尿検査で自分の栄養状態を見てみましょう』という提案から、サービスを知っていただきたいと思っています」(三原さん)

「尿検査の結果」と「食習慣+生活習慣」アンケートの分析結果をもとに各基本栄養素の充足度をグラフで算出
この「入り口」の設計が、想定を超えるユーザー層の広がりにつながりました。
「ユーザーの声を聞くと、やはり『栄養バランスを整えたい』というニーズから入ってくる方が多いんです。オーダーメイドであること以上に、まずは今の自分の栄養状態を尿検査できちんと見てみたい。そうした関心から、申し込んでくださっているのだと思います。栄養バランスが整うことは、体調管理や生活習慣の改善にもつながると捉えられているのではないでしょうか」(三原さん)

「パーソナルワン」のサプリメント専用ケースは、海外で友人と休暇中に出会った形がヒントになっているという
メインユーザーは40〜50代の働く女性ですが、ファンケルの他のサプリメントと比べて男性比率が高いのも「パーソナルワン」の特徴です。
「正直な話で言うと、意外ではありました」(三原さん)
中でも30代男性の利用が目立つといいます。
「私が見ている限り、男性も30代を過ぎたあたりから、健康への投資をしなきゃいけないと思っている方が増えてくる印象です。一方で女性は、毎回の食事で栄養バランスを整えることの難しさを感じている方が多い印象です。自分に必要な栄養素が尿検査で客観的に分析され、自分に必要なものが、ワンパックで届く手軽さに価値を感じて利用されているのだと思います」(三原さん)
「サプリの断捨離」——必要なものだけを選ぶ
「パーソナルワン」では、おすすめされたサプリメントをすべて購入する必要はありません。予算や食事で補えるかどうかも考慮したうえで、利用者自身が選択できます。
「こちらからは『おすすめのサプリ』を優先度が高いものからご説明し、その中からお客様ご自身で予算などを考慮して選択していただきます」(三原さん)
その結果、利用者から「サプリの断捨離になった」という声も届いているといいます。なんとなく複数飲んでいたものを見直し、本当に必要なものだけに絞れた、という反応です。サプリメントを「増やす」のではなく「最適化する」ことに価値を置いたサービスならではといえるでしょう。
サービスの競合優位性は、提案ロジックだけではありません。複数の異なるサプリメントを1回分ずつワンパックにする技術そのものが、他社には容易に真似できない強みになっています。
「ひとつのパッケージに入れてしまうと粒同士が反応してしまい、変色するなど、安定性を担保するのが難しいんです。製剤の組み合わせの分析など、30年以上にわたる研究の成果がワンパックでのオーダーメイドサプリを可能にしています」(三原さん)

成分が異なるサプリメントが1つのパックにまとめられて届けられる
さらに、粒数の提案には、個人の栄養吸収率まで加味されているといいます。
「その人の生活習慣により、サプリメントの吸収率や栄養素の消費のされやすさは異なります。よって、次の検査をした時に足りていないとなったら、もう1つ粒数を上げるんですね。サプリメントを最適化していくという点も、このサービスの独自性のひとつです。使い続けているユーザーさんに『何が一番良かったですか』と聞くと、『サプリの最適化がよかった』という声が実は最も多いんです」(三原さん)
「パーソナルワン」では、継続利用を支える仕組みとして、サプリメント摂取開始3か月後の栄養状態再チェックの推奨と、年1回は無料で尿検査キットの提供を行っています。
「3か月ほどサプリメントを継続いただくと、体内の基本栄養素の充足度が変わってきますので、3か月後にどう変化したのかを数値で見ていただきたいと思っております。また、食習慣や生活習慣が変わると、最適なサプリメントも変わってきますので、年に1回は無料で尿検査キットを提供することで、サプリメントを見直してもらうことを推奨しています」(三原さん)
継続率は「通常のサプリより圧倒的に高い」といいます。また、一度解約しても戻ってくる利用者も多いそうです。
「一度離れてみると良さに気づいてまた戻ってくる人も結構多いです。もともと『どれを摂ればよいかわからない』という方に向けて始めたサービスなのでこのサプリを摂ったら『今まで不調だったものが改善された』という声も多く寄せられています」(三原さん)
また、始めてから2〜3か月ほどすると、『調子が良くなってきた』という声が寄せられるともいいます。サプリメント初心者が摂り始めると、栄養バランスが整って体調の変化を実感する——その体験が継続の動機づけになっているようです。
運動・睡眠との連携も視野に入れているといいます。「サプリだけ飲んでいればいい」ではなく、食生活・運動・睡眠を含めたトータルなウェルネス支援へとサービスを広げていく構想があります。
「自分に必要なものを、無理なく続けられる形で取り入れること」。ファンケルの「パーソナルワン」は、栄養状態の見える化と個別最適化というアプローチでその問いに答え続けています。2017年のプロジェクト発足から約9年。サービスはまだ進化の途上です。
取材・文/大正谷成晴 撮影/関大介
















