【サイエンス】高齢者の認知の健康維持にはパーソナライズド・プロバイオティクス補給が重要

個人のニーズにぴったり合わせたプロバイオティクス補給は、加齢関連の認知低下にうまく対応する可能性が台湾の研究で示唆された。認知障害患者のプロバイオティクスプロファイルは、一般集団のプロファイルとは異なることも併せて報告された。

National Yang Ming Chiao Tung University 研究チームは、北台湾の地域社会、病院に居住する50歳以上の被験者297人を対象とした。被験者は、認知的に正常、軽度の認知障害(MCI)、認知症の3グループが選出されている。研究チームは認知的に正常な被験者189人の糞便サンプルとDNA分析を基に、ラクトバチルス属およびビフィドバクテリウム属のそれぞれで3つの微生物シグネチャーを特定した。

Lactobacillusシグネチャー(LS1)は、Lactobacillus ruminisやLactobacillus salivariusなどを含む Ligilactobacillus subtypeが多く存在していることが特徴である 。LS2は、Lactobacillus fermentumなどの良く知られたプロバイオティクスを含むLimosilactobacillus subtypeを主に含んでおり、LS3はLactobacillus, Latilactobacillus, Limosilactobacillus subtypesなどの複雑なブレンドで構成されている。

Bifidobacteriumシグネチャー(BS)は、BS1がBifidobacterium adolescentisとBifidobacterium bifidum の組み合わせであり、BS2は主にBifidobacterium pseudocatenulatum含んたものとなっている。また、BS3はBifidobacterium longum、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium dentiumの混合である。

認知的に正常な189サンプルは N1~N5の5群に分けられ、N1、N3、N4 はそれぞれ主にBS1、BS2、BS3が主流となり、N2はシグネチャーの多様な組み合わせがあり、N5はLS1とBS1が主流となる。N1とN3は主に、高学歴を持つ比較的若い世代で構成され、N2とN5では、喫煙者と飲酒者が多かった。N1およびN4では非喫煙、飲酒しない人が多い。N5は、学歴の低い高齢者が主だった。

研究者によると、N5 の高齢者はN3とN1に比べ、DSST(数字符号置換テスト)およびVF(言語流 暢性)のスコアが低かった。DSSTは脳の機能を、VFは特異的な緊張下での発言能力を測定する。脳の画像では、N2およびN5の被験者はN1に比べ、脳室が肥大し、アルツハイマー病シグネチャー皮質はN5で薄く、N2は厚かったことがわかった。脳室の肥大と皮質が薄くなることは、脳細胞の消失を示す。また、MCI群は M1~M4にカテゴリー分けされ、M1はLSが不在でBSが主流となり、M2群はLS3が優勢だった。LS2とLS1はM3およびM4を決定づける特徴になった。ただ、サンプルサイズが小さいため、唯一有意な結果となったのはカラートレイル検査1(CTT1)で、M2群が最も高いスコア180.2を示し、その他の群は94~119と差が生じた。

以上から研究者は「我々は、ラクトバチルス属とビフィドバクテリウム属を分析して、明確に異なる微生物シグネチャーを持つ高齢者群を特定した。加齢関連疾患や機能低下に対応するため、個人に合わせた微生物補給の実用性は大きな意味を持つ」と結論付けた 。本研究はBriefings in Bioinformaticsに掲載されている。

「GNGグローバルニュース 2024年9月25日号」より

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