【注目書籍】間違った情報に振り回されず、正しい情報で寿命を伸ばすために

人はなぜ老化していき、死に至るのか……。自分の体力の低下をかみしめながら、考えたことはありませんか? 『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(今井伸二郎著/総合法令出版)では、最新のさまざまな研究結果を挙げながら、科学が苦手な人にでも理解できるように、老化のメカニズムが紹介されています。

一つひとつの細胞が集まってできている私たちの体は、細胞分裂がストップすることで老化が進み、細胞分裂がストップした細胞が増えていくことで死に至ります。その生と死の鍵を握っているのが、DNAの先端にあるテロメアです。

本書では、食品の機能性を長年研究してきた今井伸二郎氏によって、テロメアの減少を抑制し、老化した細胞を修復する方法と、寿命を延ばすことができる食品の最新情報が紹介されています。また、アレルギー、うつ病、認知症などの予防に有効的な食品も明示し、健康寿命を延ばす方法が明らかにされています。

「テロメア」の長さを復活させれば寿命は延びる

ヒトの体を形成する細胞の一つひとつには、DNAが入っています。そのDNAの先端に存在する構造体をテロメアといいます。このテロメアは、細胞分裂を繰り返すたびに短くなり、限界に達するとDNAの複製ができなくなってしまいます。

DNAの複製ができなくなるということは、細胞分裂がストップするということ。それは、私たちの寿命が短くなることを意味しますので、テロメアは「命の回数券」と呼ばれています。テロメアの長さは、細胞の寿命の長さ。まるで命の灯をともすろうそくがどんどん短くなっていく例えに似ています。テロメアを短くしてしまう原因としては、酸化ストレスや有害物質、紫外線などの影響に加え、過剰な栄養摂取があるそうです。

しかし、老化した細胞を修復する(テロメアの長さを回復させる)遺伝子が、2000年、マサチューセッツ工科大学の研究により発見されました。それが「サーチュイン遺伝子」です。

2011年にNHKスペシャルが萩本欽一さんを起用して紹介したことで、一時、話題になったことを覚えている方もいるかもしれません。ヒトの遺伝子DNAの全長(塩基の結合した数量)は約30億個もあり、実際に遺伝子として働いているのは約2万1000個。その一つがサーチュイン遺伝子なのだとか。2023年1月に放送されたTV番組『カズレーザーと学ぶ。』で、本書の著者・今井伸二郎氏が「長寿遺伝子『サーチュイン』老化を遅らせる夢の食材!?」として紹介したことでも、大きな反響を呼びました。

サーチュイン遺伝子を活性化させる食品

「サーチュイン遺伝子が活性化すると、テロメアが修復され、生まれたばかりの赤ちゃんのように元気な細胞になります」と今井氏は言います。そのため老化に伴う認知症や高血圧や動脈硬化などが予防でき、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳卒中などのリスクが低くなるというのです。サーチュインの活性化誘導によって、血圧の低下を誘引するという論文もあるのだとか。

では、サーチュイン遺伝子を活性化させるにはどうしたらいいのでしょうか? それは、細胞に死が近いと思わせる、つまり「空腹」を感じさせること。

サーチュイン遺伝子は、普段はあまり活躍の場がないそうです。しかし、ヒトが死にそうな状況になれば、体はそれに抗って生きようとし、サーチュイン遺伝子が活性化されるといいます。そのための最も直接的な方法として、「食事のカロリー制限」があります。しかし、カロリー制限をした後に食事を元に戻すと、体重がリバウンドするだけでなく、サーチュイン遺伝子の活性の点でも逆効果を招く危険性があるのだとか。カロリー制限はまた、栄養状態の低下にもなり、免疫システムの機能低下を引き起こし、感染症のリスクを高めてしまいます。そこで紹介されているのが、サーチュイン遺伝子の発現を促進する成分を多く含む、ブドウ種子、ザクロ、食用菊などを食べることです。

しかし、それよりもさらに高い効果が期待できる食品として、アルキルレゾルシノールが含まれている小麦やライ麦など穀類の外皮や、カカオの摂取が紹介されています。

つまり、激しいストレスがない生活を送りながら、アルキルレゾルシノールが含まれる食品を摂ることによってサーチュイン遺伝子を活性化させることが、健康長寿を手に入れる秘訣といえるのです。

機能性食品の安全性を見分けることが大切

機能性食品を長年研究してきた今井氏は、本書でアレルギーについてのメカニズムやその原因、予防できる食品などについても紹介しています。また、脳腸相関、食と処理水の放出、うつ病や認知症についてなど、健康食品に関連する内容に幅広く触れています。

さらに、本当に効く健康食品の見分け方、安全な機能性食品と注意が必要な機能性食品の見分け方などにも言及。2024年に問題になった紅麹の副作用についても触れ、警鐘を鳴らしています。

私たちが、コマーシャルやSNSに惑わされたりしないために、「本当は効かない」「安全性に問題がある」といった商品のメカニズムを紹介している本書は、研究者のモラルに貫かれています。

健康的に寿命を延ばしていきたいという方には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

【書籍情報】
『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(今井伸二郎著/総合法令出版)


関連記事一覧