【サイエンス】プラントベース代替肉はアジア人の心血管系の健康効果を提供しないと考えられる

プラントベース肉代替品中心の食生活は肉や野菜を取り混ぜて食する生活に比べ、アジア人の心血管疾患リスクを低下する可能性は認められないことが、シンガポールの研究で示唆された。

つまり、心代謝の健康に関していうと、プラントベース代替肉は動物性食肉の効果を超えられず、代わりになり得るという根拠は今のところ得られないと結論付けられた。

Singapore Institute of Food and Biotechnology Innovationなどの研究チームは、2022年6月から、シンガポールに住む30~70歳の中国系男女を対象に、8週間にわたるランダム化平行群間比較試験を行った。参加者は糖尿病ではないが、血糖値が高く、代謝性疾患になりやすいというプロファイルを持っていた。また、参加者は非ビーガンまたは非ベジタリアンで、タンパク質を多く含む食品を毎日摂取していた。

通常の食事をプラントベース肉代替品(PBMD)に変える40人と、動物性肉(ABMD)を摂取する42人に分け、LDL コレステロール値、心臓代謝リスク要因、食事情報、24時間自由行動下血圧測定、 血糖値などのデータを分析した。また、試験期間中、被験者の一部がオプションである 14日間連続血圧モニタリング(37人)、2回の24時間自由行動下血圧測定(40人)に参加した。

この結果、ABMD 群ではトランス脂肪が増加し、PBMD群は食物繊維、ナトリウム、カリウム濃度が上昇した。LDLなどリポたんぱく質値には影響は見られなかった。また、血圧はABMDで上昇、PBMDは下降した。血糖指標となるフルクトサミンとベータセル機能は両群で改善し、血糖値ホメオスタシスは、ABMD でうまく制御されていた。また、オプションに参加した群では、ABMDの血糖値管理は効果的で、これは、PBMDに比べ、炭水化物摂取が低く、たんぱく質が多いためと考えられる。

現時点では、たんぱく質のバイオアベイラビリティは評価されていないが、PBMDは動物性肉と比べ、消化や吸収が悪く、それがインスリン分泌やさまざまな腸内ホルモンの生成に異なる影響を与える可能性を示唆する。これは、植物たんぱく質の分子量が高く、溶解度が低いこと、抗栄養因子などいくつかの要因に関連していると考えられる。

研究者は「伝統的なプラントベース食の健康効果は研究で示唆されているが、その効果はPBMDと融合しない。というのは、両者の栄養価は違いがあり、それが心代謝系疾患リスクに影響しているためだといえる。PBMDは動物性肉に似せるよう高度に加工されているが、伝統的なプラントベース食は殆ど加工されていないホールフーズで構成されているからだと考えられる。ただ、次世代のPBMDは、栄養属性やバイオアベイラビリティの改善を実現できた時に再評価すれば、また、違った結果になるだろう」と結論づけた。本研究はThe American Journal of Clinical Nutritionに掲載されている。

「GNGグローバルニュース 2024年5月24日号」より

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