2024最新「NNB10キートレンド」でトレンド間の関連をつかむ!【前編】

2006年から毎年発行され、実践的な業界経験とサイエンスに裏付けられた、健康食品産業のためのトレンドレポート「NNB10キートレンド2024」(発刊 NNB、New Nutrition Business)が発刊されました。キーワード自体は昨年度版と大差なく見えるものの、トレンドの盛衰や、トレンド同士のつながりが見えてくるのは定点観測ならではのメリットです。
今回も2023年版に続き、株式会社グローバルニュートリショングループ 代表取締役 武田 猛氏に、各トレンドの推進要因や避けるべきリスク、国内外の相違を踏まえた活用方法についてうかがいました。前編では、2023年からの変化や中長期的に見たトレンドの変遷と最新の市場動向、「5つのメガトレンド」について解説いただきます。

2023年と2024年で比較、メガトレンドと10キートレンドの変動

はじめに、この「NNB10キートレンド」が毎年、発刊される理由ととらえ方について教えていただけますか?

まず、「NNB10キートレンド」(発刊 NNB、New Nutrition Business)が他社のトレンドレポートと違う点は、実際にビジネスを手掛ける業界人が失敗事例も含めて分析し、避けるべき内容や詳しい戦略も挙げて解説しているところです。ご存じの通り、失敗事例と成功事例は日々更新されており、質の高い情報の定点観測をしなければ、いち早くトレンドや市場動向の変化に気付くことはできません。

とらえ方としては、「今年の10キートレンドはこういうものか」と理解するに留まらず、その背景も細かく洞察することで、自社のマーケティング戦略の軌道修正や新たな戦略の検討に役立つでしょう。たとえば、今回からメガトレンドに加わった「メタボリックヘルス」というキートレンドは、2023年2月から同年3月頃に取り上げられたものです。

そして、表向きは大差なく見えるものの、1年たつと中身は大きく変わっています。とくに2024年版では、トレンド同士が影響しあった結果として成功したものが多い印象です。また、欧米における事例が多いため、そのまま活用するのではなく日本独特の環境に合わせて活用するようにしてください。


NNB(New Nutrition Business)誌に関する詳しい解説はこちら

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

メガトレンドについて、2023年版と2024年版ではどのように変わりましたか?

2024年版のメガトレンドでは2023年版の上位3つの順が入れ替わった形で、4番目の「スナック化は戦略の基軸」と5番目の「サステナビリティ」は変わりありません。なかでも、1番目の「ウェイトウェルネス&メタボリックヘルス」は、従来の「ウェイトウェルネス」に「メタボリックヘルス」が加わったトレンドで、その進化の背景は押さえておくべきでしょう。

また、2023年版で1番目だった「健康に関する信念の細分化」は2番目に推移しているものの、依然として強力なトレンドです。これは、この健康食品産業界もソーシャルメディアを軽視すればビジネスが成り立たないということを示しています。

 

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

続いて、10キートレンドにおける変化や注目すべき点について教えてください。

10キートレンドのなかで新しく加わったのは、6つ目の「血糖値フレンドリーの台頭」と9つ目の「ホルモンヘルスの台頭」です。前者について、血糖値上昇の抑制はあくまでもメカニズムの話であり、その先のアウトカムに関する商品などが注目を集めています。後者については主に女性の健康に関するトレンドで、社会のなかで潜在的とも考えられてきたニーズがソーシャルメディアやサイエンスの情報収集も身近になってきたことで、顕在的なニーズへとシフトしたことが要因でしょう。

1つ目の「多様化する腸のウェルネス」では、かなり消費者における信念の細分化が進んでいます。また、4つ目の「スイッチが入った動物性プロテイン」は、相変わらず強力なトレンドです。

そして、5つ目の「植物性プロテイン」では、数年前からNNBが言っていた通りになりました。これは我が国における大豆ミートも例外ではなく、プラントベース代替品は未だに成功を収めていません。ただし一方で、プラントベース製品そのものに対する消費者の支持は厚く、戦略を間違えると成功できないといういい事例です。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

今回、10キートレンドから外れたトレンドについては、どのように考えればよいでしょうか?

10キートレンドから外れたトレンドも引き続き重要です。今回の2024年版で外れた3つ(栄養素密度、来歴、免疫)は、他のトレンドに含まれる形で、現在もその概念は根強く残っています。

例えば、「栄養素密度」は「スイッチが入った動物性プロテイン」の中に、「来歴」は「炭水化物:より良く、より少なく」の中に、「免疫」は「多様化する腸のウェルネス」の中に含まれ、そのトレンドを強力に引き上げるための戦略の一部です。

このうち、そもそも「免疫」は腸内環境を整えることに含まれているという考え方で、欧米ではもはや当たり前。対して日本では、2020年に免疫機能で初めて機能性表示食品として届出された乳酸菌製剤などによる免疫のトレンドが今も継続していますので、このテーマについては国内外の差に注意して見ていく必要性があるでしょう。

10キートレンド『来歴』に関する詳しい記事はこちら

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

中長期的に見ると、この10キートレンドはどのように移り変わり、その背景にはどのようなことがありますか?

近年15年間で10キートレンドが多様化した要因は、インターネットとソーシャルメディアによるもので、その影響は決して過小評価してはいけません。特にソーシャルメディア上でインフルエンサーと呼ばれる人たちは、その発信に対して消費者から非常に厚い信頼を得ています。ただ、日本と海外では規制の対象範囲も異なるため、参考事例としてとらえ、冷静に検討するようにしてください。

株式会社グローバルニュートリショングループ主催
「NNB 10キートレンド 2024 理解度アップセミナー」(2024年1月25日開催)講演資料より

ここ数年、ギリシャヨーグルトの例を見ても分かる通り、1つのトレンドだけでは成功しません。消費者の目線に立ち、意味のあるトレンド同士を組み合わせることが重要です。
また、「ウェイトマネジメント」が「ウェイトウェルネス」へと概念が進化してメガトレンドに加わったり、「パーソナライゼーション」のように2017年から出現したばかりのトレンドでも、わずか2年あまりでメガトレンドに加わったものもあります。
一方の「ナチュラルヘルシー」「ヘルシースナック」は引き続き、どの10キートレンドにも影響を与えるメガトレンドとして重要です。さらに、「ムード&マインド」も、未だコロナ禍の影響が続くなかで、非常に強力なトレンドとして今後の動向にも目が離せません。

10キートレンドの選ばれ方についてはこちら

ウェルネス総研レポートonline編集部

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