【サイエンス】腸内細菌叢が心臓の健康に及ぼす影響を示す研究結果

マウスやヒトの一部の腸内細菌が、体内の炎症物質を分解することで動脈に蓄積するプラークを制御し、心臓の健康を守る可能性が米国の研究で示唆された。

尿酸は、アデノンやグアニン (DNAの基本構成要素のうちの2つ) などの生命維持に必要な分子や、カフェインやテオブロミン(チョコレートや茶葉に含まれる)のような嗜好品に含まれるプリン体が人体内で分解されて生成される。尿酸のほとんどは健康な腎臓によって除去されるが、約30%は腸に流出する。血中の尿酸が飽和状態になると結晶化が始まり、それが関節に蓄積すると、痛風と呼ばれる痛みを伴う症状を引き起こす。結晶が形成される前の尿酸値が少し高い状態でも、体内で炎症が起こり、動脈内にプラークが蓄積するアテローム性動脈硬化症を引き起こす恐れがある。

米国のWisconsin-Madison大学の研究チームはスウェーデンの研究者らと提携し、体に溜まる尿酸と腸内細菌との関連に注目した。

研究チームは、被験者約1,000人を対象に、動脈プラークや尿酸値、腸内細菌叢などの要因を分析した結果、バシロタ門、フソバクテリウム門、シュードモナドータ門など、さまざまな腸内細菌のパターンと相関することがわかった。研究チームは、どの細菌が尿酸の分解に働くのか、その特定を急ぐとともに、このプロセスを促す遺伝子の解明にも着手している。

また、動脈にプラークを多く持つ尿酸値の高いマウスから、症状のないマウスへ糞便移植を行ったところ、移植を受けたマウスは、やはり動脈にプラークが発生し、尿酸値も高くなったことがわかった。反対に、尿酸値の低いマウスから移植を受けたマウスの尿酸値は低いままだった。

研究チームは、細菌が尿酸で増殖したときに特に活性化する遺伝子を監視し、健康的な結果をもたらす微生物の特定を開始した。その結果、腸内でプリン体と尿酸を分解する異なる種類の多くの細菌遺伝子群を発見した。

研究者らは、「次のステップとして、プリン体を分解する細菌を動脈プラークを持つ動物に移植した 場合、心血管系疾患にどう影響するのかを探っていく」と抱負を述べた。本研究はCell Host & Microbeに掲載されている。

「GNGグローバルニュース 2023年6月26日号」より

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