「NNB10キートレンド」はこうやって読み解く!
日本人が知っておきたい食品健康ビジネス最先端【後編】
キートレンド9「リアルフード&超加工食品」、キートレンド10「本物らしさ&来歴」
キートレンド9の「リアルフード&超加工食品」についてご解説ください。
このトレンドは今年から加わった新たなビジネスチャンスですが、既に課題は生まれています。始まりは1990年代後半からの健康志向の高まりです。2010年にはほとんどの企業で人工添加物や保存料などを使わない、いわゆる「クリーンラベル」(業界専門用語)を組み込むようになりました。身体に悪いものを取り除くことは、言い換えれば良いものだけを使うということ。つまり、加工度が低く本物により近い「リアルフード」を摂取することがトレンドになってきたという訳です。
この「リアルフード」を求める消費者の心の中に、おそらくその製造工程は含まれていません。だからこそ、20種類もの材料で加工された肉代替品よりも野外で育った牛の肉を好むのでしょう。つまり、より少ない原料と少ない加工、職人技やホームメイドに近いようなものを意味するのが「リアルフード」です。そのノウハウは昔から世界各地に根付いているもので、来歴にも近しい部分があります。
「超加工食品」はUPF(Ultra-Processed Foods)と略され、サンパウロ大学の研究者らによって作られた用語で特に定義はありません。一方で、メディアではこの用語とそのコンセプトが後押しされています。
「リアルフード&超加工食品」の戦略と具体的な事例には、どのようなものがありますか?
4つの戦略があり、7つのキートレンドと関連しています。今の所、「超加工食品」を避けているのは健康意識の高いアーリーアダプターと呼ばれる人たちです。彼らはメディアや学会などから情報を収集し、これに対するメディアは「超加工食品」について一様に否定的で裏付けるような学術研究者も尽きません。
現状はニッチでありつつも、こうした業界や消費者の間で主流となりつつあるUPFの概念を認識したうえで戦略を練る必要があるでしょう。
キートレンド10の「本物らしさ&来歴」についてご解説ください。
私が思うに、このトレンドはキートレンド9の「リアルフード&超加工食品の挑戦」と密接な関係があり、もっと上位でもいいと思いほど重要なトレンドです。「来歴」というのは場所や文化、資産、信用に留まらず伝統的な製法によって裏打ちされたストーリーのことで、考え方そのものは1990年代からありました。これが2010年頃からますます重要視されるようになっています。
日本も例外ではなく、特に産地は偽造する事件が起こるほど重要で食品表示法でも細かく決められているのはよくご存じでしょう。実際、大手原料サプライヤーのADM社によると、26%の人が食品や飲料ラベルに書かれた原産国を確認していると言います。
キートレンド10の「本物らしさ&来歴」の戦略と具体的な事例には、どのようなものがありますか?
4つの戦略があり、あらゆるカテゴリーに対応することで他のキートレンド9つ全てと関連しています。「来歴」はブランドや素材への信頼感を作ることに加え、消費者に対して安心感を与えるという面から見ても重要な要素です。
成功するには単に産地を記載するに留まらず、文化や栄養、その他のストーリーについて具体的な関連付けを行うことで差別化につながっていくでしょう。常に新しく刺激的な食品を多く目にする時代だからこそ、特定のものを消費者が差別化して自らの信念に沿って選べるような提案が支持を集める鍵となります。
さいごに、食品健康ビジネスに関わる人に向けてメッセージをお願いします。
5つのメガトレンドを念頭に置きつつ、10のキートレンドをそれぞれつなげて見ると全体像や関連性が見えてきます。以前、私はハチミツ関連の会社に勤めていました。ハチミツについて、糖質を控える動きと天然の機能性を求めるニーズを直に紐付けることは難しいかもしれません。しかし、これを「細分化」や「甘さの再発明」、「ムード&マインド」といったトレンドで包括して伝えるとすんなり腑に落ちるようになるのです。
このNNBトレンドレポートは非常に多くの実践的な戦略や事例が詰め込まれたものですが、腸のウェルネスや植物性プロテインの事例が示すように日本人と欧米人では一致しない部分もあることに注意してください。この解説記事をお読みくださった方が多くのヒントを得て、さらに回避することのできる余計なリスクに陥ることなく成功への道筋を辿れることを心から願っています。
武田猛氏 プロフィール
株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役。
18年間の実務経験と18年間のコンサルタント経験を積み、36年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わり、国内外700以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」に基づき、先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評があり、数々のヒット商品の開発に関わる。