【注目書籍】心身をじわじわと蝕む「W疲労」の正体を見極め、withコロナ時代を生き抜く術を指南
新型コロナウイルス感染症の流行が始まって2年以上が過ぎ、私たちの心身には見えないダメージが蓄積しています。その原因を見極めるとともに対処法を身につけ、健やかに暮らすことを目的としてまとめられたのが本書『不安と情報過多から生まれる新型コロナ「W疲労」の対処法』(久保明著・西崎泰弘監修/晶文社)です。
チェックリストで疲労を可視化
W疲労の一つは、ウイルスへの恐怖や罹患の心配、見通しの効かない状況などから生まれる「不安疲労」。「やる気が出ない」などの精神的疲労と「なんだかだるい」という身体的疲労が重なって起こる新しいタイプの疲労です。そのリスクを可視化するため、本書冒頭には著者監修の「不安疲労チェックリスト」が掲載されています。
もう一つが「情報疲労」。コロナ禍以前から社会問題となっているSNS疲れに加え、コロナに関する連日の報道、フェイクニュースなどがその要因です。不安疲労と情報疲労が重なるW疲労によって、私たちの体、そして心はじわじわと蝕まれているのです。
データで読み解くコロナの影響
生活習慣病診療、予防医療、アンチエイジング医学に取り組む著者は、コロナ禍が始まって以来、これまでにないタイプの健康被害を目にしています。例えば、感染を恐れて病院の受診を控えたために糖尿病などの生活習慣病が悪化。運動不足によって老化が加速し、フレイルや認知症のリスクは増大しています。生活リズムの変化で間食やアルコール摂取が増えたり、心の健康を保てなくなったりするケースもあります。
第1章「新型コロナウイルス感染とわたしたち」では、多くのデータや論文を示しながら、コロナ禍によって生じた変化で私たちの生活や健康状態の変化を紹介。新型コロナウイルス感染症そのものや後遺症、いわゆるコロナうつについても触れられています。客観的データによってコロナの全体像が浮かび上がり、W疲労が発生する背景についての理解が深まります。
第2章「私たちを襲う新しいタイプの2つの疲労―「W疲労」」では、いよいよW疲労の本質が紹介されます。そのベースとされているのが、パラミロン研究会が2021年1月と9月に2回にわたり、20〜70代の男女1,200名を対象に行ったアンケート調査です。その結果から、全年代の5割以上が不安疲労を感じていることがわかりました。著者は「コロナ禍で感じる意欲減退、疲労感・倦怠感、ストレスなどの症状は不安疲労によるもの」「疲労状態によって自律神経のバランスが崩れている」と断定しています。一方で、W疲労の程度や自律神経との関係についての客観的な情報は掲載されていないため、さらなる研究が待たれるところです。
W疲労を克服し、withコロナ時代を乗り切る
第3章「W疲労を乗り越えろ! 今日からできる克服法」では、不安疲労と情報疲労を防ぐ7つの方法が、イラストを交えてわかりやすく紹介されています。例えば、「対策その1 自律神経を整える」では呼吸法や音楽鑑賞、読書などが推奨されています。他にも、瞑想、ストレッチング、ビタミンDやパラミロンなどのサプリメントをとるなどの方法が、期待される効果とともにラインナップされています。いずれも手軽に取り入れられることばかりなので、興味のあることから試してみるとよいでしょう。
第4章は「W疲労を防ぐ、コロナ禍社会での1日の過ごし方」です。「スケジュールをゆるやかに決める」など、取り上げられている内容は目新しくはないものの、コロナ禍を経験した私たちの目線で見るとその価値は高まっているといえます。「この頃なんだか調子が悪い」「何もしていないのに、なぜか疲れる」などと感じている人は、本書をヒントに、日々の過ごし方を見直してみてもよいかもしれません。
【書籍情報】
『不安と情報過多から生まれる新型コロナ「W疲労」の対処法』(久保明著・西崎泰弘監修/晶文社)