1日114万本※売れている! いま話題の「Yakult1000」はどのようにして生まれたのか?

ヤクルト初の機能性表示食品「Yakult1000」が、1日114万本以上を売り上げる大ヒット商品となっています。その大きな魅力は、継続して飲むことで得られる一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」と「睡眠の質の向上」。ヤクルトといえば、「腸内環境改善」、もしくは「子どもが好む乳酸菌飲料」というイメージが強い中で、ビジネスパーソン層から多くの支持を得て、ストレス社会を生きるためのサポート飲料というヤクルトの新たな価値を生み出しました。「Yakult1000」は、どのように誕生したのか。ヒットの鍵はどこにあったのか。株式会社ヤクルト本社広報室に、商品開発にまるわるエピソードや、販売戦略について伺いました。

腸内環境改善がもたらす「ストレス緩和」「睡眠の質向上」効果に着目

従来のヤクルトのイメージからすると、「ストレス緩和」や「睡眠の質の向上」という機能に意外性を感じた方も多いと思います。機能性表示食品届出に当たり、この2つの機能を選んだ背景を教えてください。

1999年に「乳酸菌 シロタ株」を400億個含んだ「ヤクルト400」を発売してから、さらなる高菌数・高密度の商品の検討を始めていました。ちょうどその時期に、脳と腸が互いに影響し合うという脳腸相関を示す研究が出始め、学術分野ではその研究が加速。当社の基礎研究においても「乳酸菌 シロタ株」を高密度にすることで神経系に作用することが明らかになっていたことから、その作用をお客さまへメリットとして具現化できる機能を検討した結果、「ストレス」と「睡眠」に行きつきました。その後、ヒト試験での検証を行い、一時的な精神的ストレスがかかる状況での、ストレスや睡眠に対する機能があることが確認できたため、商品化へと動き出しました。

機能性表示食品届出にあたり、どのような検証を行ったのでしょうか。

一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質上昇」の効果を実証するにあたり、大きな精神的ストレスがかかる状況にあると考えられる「進級に重要な学術試験を受験する4年次の医学部生の男女(対象者140名)」を対象にヒト試験を実施。学術試験の8週間前から1日1本「Yakult1000」を飲用してもらい、唾液中のコルチゾール濃度の上昇、ストレス体感の抑制データの検証を行いました。
その結果、ストレスがかかる状況で増加することが報告されている唾液中のコルチゾール濃度の上昇が抑えられていることが分かったほか、睡眠の向上についても、起床時の眠気を示すスコアでも改善が見られ、“スッキリした目覚めの体感”が確認されました。

機能性表示食品届出までにはどのような課題があったのでしょうか。

「ヤクルト400」の発売から、「Yakult1000」の発売までに約20年かかりました。「Yakult1000」には、ヤクルト史上最高密度となる、1本(100ml)に1,000億個の「乳酸菌 シロタ株」を含有しており、この「菌数を増やす・維持すること」に大変苦労しました。

また、菌数を維持しながら、おいしさも両立させなければなりません。「Yakult1000」に使用している「乳酸菌 シロタ株」は、菌の増殖とともに酸を作り出し、酸味で風味を損なってしまうので、温度や時間などの培養技術、原料の選定などの工夫が必要になります。そのための培養技術や原料の選択こそ、当社の長年のノウハウの結集だと考えております。

ビジネスパーソン層に響く、味、量、パッケージを展開

企画段階で、「ストレス緩和」「睡眠の質向上」という効果へのニーズがあると確信されていましたか?

厚生労働省による国民生活基礎調査によれば、現代人の多くがストレスを抱えているという結果が出ています。ストレスは「睡眠の質」を低下させる要因として知られていますが、ストレス社会といわれる現代において、睡眠に関する悩みも大きな社会課題ですので、商品に対するニーズはあると考えていました。

実際に、ご愛飲いただいたお客さまが「Yakult1000」の機能性、特に睡眠に関する機能について体感され、SNSなどで感想を発信してくださり大変嬉しく思っております。ただ、ここまでの売れ行きについては想定以上の早さで推移していると考えています。

これまでのヤクルトにはなかった「ストレス緩和」「睡眠の質向上」という新たな特長を持った商品を消費者に届けるために、どのような戦略を立てたのでしょうか?

ストレスや睡眠にまつわる問題を抱えているのは、やはり働き盛りの30代〜50代のビジネスパーソン層が多いと考え、ここにターゲットを当てた「味・内容量・パッケージデザイン」を検討しました。
味は、従来のヤクルトよりも甘さを控え、1日1本継続していただけるよう、すっきりとした味に。そして、内容量も100mlと飲みごたえのある量にしました。

また、店頭商品の「Y1000」に関していえば、コンビニなど店頭で並ぶことを踏まえ、視認性を上げるために背の高い容器を採用しています。商品名も、「Yakult1000」と統一性、連動性が図れるネーミングであり、呼びやすさ、わかりやすさを考慮し「Y1000」としました。

ヤクルトレディの地道な活動が、SNS・口コミの広がりにつながった

販売方法における戦略を教えてください。

「Yakult1000」は、これまでとは違う特長を持った商品であること、また価格も既存商品に比べると高めなので、お客さま一人ひとりに価値を理解していただくことが重要だと考え、2019年に「Yakult1000」をリリースした際は、主軸の販売チャネルをヤクルトレディによる宅配にしました。

宅配専用の「Yakult1000」の販売を通じて改めて「ストレス緩和」「睡眠の質向上」に対するニーズが高いことが明らかとなったことから、よりお客さまのライフスタイルに応じて購入、飲用しやすいように、店頭向けとして「Y1000」を設計し、2021年10月に全国発売をスタートしました。

SNSなどでも注目されていますが、ここも戦略のひとつだったのでしょうか?

もちろん多くの方に知っていただきたいという想いはありましたが、こればかりは実際に飲んでいただいた方の反応次第です。ヤクルトレディによる商品説明や商品のお届けといった地道な活動が、商品の認知向上に寄与し、現在の「Yakult1000」の販売状況を支えていると考えております。多くのお客さまがSNSで発信してくださったことも、ヤクルトレディの活動がそのような口コミの広がりを促しているのだと考えています。
ヤクルトレディは当社にとって、お客さまに商品を紹介し、お届けする重要な存在です。同時に、当社の強みでもあるので、ヤクルトレディの取り組みをとおした販売数量増加も期待していたとおりと考えております。

対面による地道な活動があってこそ、現在の爆発的なヒットにつながったのですね。
最後に、健康やウェルネス産業の発展に向けて、食品メーカーや原料素材会社で事業やマーケティン
グ戦略に携わる方々、流通業界の企画やバイヤー様に向けてメッセージをお願い致します。

ヤクルトでは生命科学を基盤とした独自のプロバイオティクス研究の成果を製品化し、安全性と品質の高さにこだわって商品を製造しています。コロナ禍において、お客さまの健康意識はますます高まっていると感じていますので、食品・化粧品・医薬品の領域で多くの商品を提供し、お客さまの健康づくりのサポートをしていきたいと考えています。

まとめ

ストレス社会といわれる現代では、多くの人たちが日々ストレスを感じ、心身に与える影響を危惧していることでしょう。また日本は世界の中でも睡眠時間が短い傾向にあり、睡眠不足による睡眠負債も深刻な問題です。健康意識の高まりの中、消費者各々が手軽に美味しく「ストレスケア」「睡眠ケア」ができる商品へのニーズは、ますます高まっていくのではないでしょうか。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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