【サイエンス】ポストバイオティクス研究がブーム

ポストバイオティクスの研究は目覚ましい勢いで進んでいる。
腸内の善玉細菌を利用するのがプロバイオティクス、それを増やすのがプレバイオティクスであり、現在、最も熱い視線を浴びているのがポストバイオティクスだ。
これは、腸内細菌の代謝産物を利用して、心身の健康をサポートしようとするものである。論文、論説などさまざまな文献、資料を検索するサービス、Google Scholarに収められているポストバイオティクス関連の論文(2022年3月時点)のほぼ半分は2021年以降に発表されたものだという。
ポストバイオティクスに対する消費者の認識も上昇中で、調査会社Mintel社によると、ポストバイオティクスへの関心は2019年の2倍となっている。
ポストバイオティクスは生菌を含有するプロバイオティクスとは異なり、死菌あるいは細胞構成物や代謝産物で構成されている。通常、生菌は腸内細菌叢に働きかけ、健康に大きく影響を及ぼしているが、最近では、生菌よりも死菌および代謝産物の健康への有益性を指摘する研究が急増している。
例えば、ポストバイオティクスと病原菌の受容体との結合による感染症リスクの低減や、乳幼児の毎日の摂取で下痢リスクの低下を指摘するエビデンスが挙がっている。また、消化されにくい食物繊維などを腸内細菌が発酵することで生じる短鎖脂肪酸が、免疫システムの調整に力を発揮することも示唆される。
生菌の処理など課題のクリアが要求されるプロバイオティクスに比べ、ポストバイオティクスは長く保存でき、しかも高い安全性を誇るため、あらゆる年齢の人々の利用が可能だという。
ポストバイオティクスには、死菌細胞を高濃度に含むものと、死菌細胞の濃度が比較的低いプロバイオティクス代謝物の2種類あるが、ほとんどが前者のタイプである。
後者のプロバイオティクス代謝物をベースにしたポストバイオティクスを研究・開発するBioflag社の研究(「Aging」誌、2022年3月号)によると、被験者75人を、プラセボ群、OraProtectPLUSのブランド名で販売されている加熱処理ラクトバチルスサリバリウス亜種サリシニウスAP-32およびラクトバチルスパラカゼイET-66群、そしてPE0301(AP-32/ET-66、ラクトバチルスプランタルムLPL28の代謝産物)群の3群に割り付け、口腔の健康に対する影響を検証した。
この結果、AP-32/ET-66およびPE0301群はプラセボ群に比べ、抗菌作用が活性化し、口腔内のラクトバチルスサリバリウス菌が増加、唾液中のIgA、ラクトバチルス菌、ビフィドバクテリウム菌が増えたことがわかった。
また、LPL28、AP-32、ビフィドバクテリウムロングム亜種インファンティスBLI-02、ラクトバチルスアシドフィルスTYCA06による発酵粉末から作られたポストバイオティクスブレンドPE0401に関する同社の研究では、便通問題を抱えた被験者45人に、プラセボ、もしくはPE0401を摂取させたところ、便通が改善し、コレステロール値、血糖値などの改善も認められた。

「GNGグローバルニュース 2022年4月26日号」より

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