【マーケティングレポート②前編】グローバルなトレンド「たんぱく市場」の国内外における動向と発展

「たんぱく市場」ではサステナビリティとウェルネルの観点から、プラントベースと呼ばれる植物性たんぱく質などが登場し、世界的に注目を集めています。こうした“次世代たんぱく質”における動向や消費者のニーズは、日本と海外では異なる傾向があることをご存じですか?今、トレンドとなっている“スナッキング”におけるたんぱく質の位置づけや、新しい課題ともいえる「プラントベース・パラドックス」、わが国で求められている次世代たんぱく質の期待や展望について、グローバルニュートリショングループ代表の武田猛氏にうかがいました。

たんぱく質の摂取がグローバルな潮流となった理由

いま話題の「たんぱく質」について、知っておきたいポイントを教えていただけますか?

これには、世界的なたんぱく源の枯渇と、地球環境を守るサステナビリティに関する意識の高まりがあげられます。次世代のたんぱく質を語るうえで、根幹となるこのふたつは欠かせません。
まず、全世界の人口は2019年から2030年までに10%増、2050年には26%増、さらに2100年には42%増になると予測されています。ここで問題となるのが、経済成長にともなうたんぱく質の需要増加です。その一方で、地球環境は悪化しているために秋刀魚など外遊漁の不漁に加え、野菜など植物性たんぱく質の収穫量は減ってきています。このままいくと将来的には、人口増加と環境悪化のダブルパンチで、たんぱく質が枯渇するのは避けられないでしょう。
もう一つは、持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、地球環境を守るために畜産や漁業を控えようとする取り組みがあること。昨今では、生産者や団体だけでなく、個々の消費者においても消費行動で地球保全に寄与しようとする動きが広まってきています。

サステナビリティの意識によって消費者が求める、たんぱく質とはどのようなものですか?

サステナビリティというと、多くの人が地球温暖化について思い浮かべるでしょう。これには、温室効果ガスのもたらす大気汚染のほか、水質汚染も関係していることがよく知られています。たとえば、動物性たんぱく質を生みだすために必要な畜産業では、動物の呼気や排泄物のほか、水や餌、広大な敷地など多くの資源が必要です。
そこで、動物性たんぱく質よりは少ない資源でつくることのできる植物性たんぱく質や、もっと地球にやさしい“代替たんぱく質”に注目が集まっています。

 

 代替たんぱく質で、いま注目を集めているものについて教えていただけますか? 

代替たんぱく質には、大豆や豆類などを原料としてつくる植物性たんぱく質と、それ以外のものがあります。米国におけるプラント(植物性)ミルクの売り上げは2000年頃から増え続け、健康志向の高まりや品質改良も進んだことから、2010年より10年間でおよそ3倍へと伸びました。

そのほかに興味深いのは、コウロギなどインセクトプロテインと呼ばれる昆虫由来のもの。あと、日本ではまだあまり見かけませんが、外国ではマイコプロテインといって、キノコなどの菌を原料とするものも増えてきています。さらに、最先端の技術開発ともいえる培養肉は、未来の食を担う可能性もあるとしてベンチャーキャピタルから注目されているようです。

日本と外国におけるたんぱく市場の違いとは

日本と外国では、代替たんぱく質の市場に違いがあるのでしょうか? 

大きくあると思います。その理由は、代替たんぱく質の位置づけが異なるからでしょう。欧米では植物性たんぱく質で作った代替肉の開発が盛んですが、日本では、動物性たんぱく質の代わりに他のものでたんぱく質を摂取しようとする意識そのものが、まだあまりメジャーではないように感じます。
対して、米国や英国では、マイコプロテインも早くから流通し始めているほか、肉代替品や乳代替品、ヨーグルト代替品、チーズ代替品というような、日頃から普通に食べる食品の代替品として開発をおこなう企業が多いのです。
つまり、外国では代替品として、日本では一つの食品の分野として市場が成長してきているということで、その販売方法や商品展開に違いが見られます。

具体的にどのような製品の市場を見れば、違いが分かるのか教えてください。

いちばん分かりやすいのが、豆乳とアーモンドミルクです。欧米では、乳糖不耐症やアレルギーに悩む人が、牛乳に代えてこれらを摂ったことが始まり。2007年頃、それまで豆乳しか代替品がなかったところへアーモンドミルクが登場しました。すると、豆乳の売り上げは減ってアーモンドミルクがトップとなり、市場が逆転したのです。対して日本では、アーモンドミルクが広まってきた後も、豆乳の市場もそのまま伸び続けています。

これは、わが国を含むアジアの地域で古くから大豆をたんぱく源として取り入れてきた食文化にも影響を受けていると言えるでしょう。私たち日本人は、日常的に豆腐や納豆など数々の大豆製品に親しみがあり、豆乳も牛乳の代替品ではなく、好んで飲むという人の方が多いのかもしれません。こうした文化や味覚の違いによっても、市場に差が出ると考えられます。ちなみにたんぱく質量で見ると、豆乳は牛乳とほぼ変わりませんが、アーモンドミルクは6分の1程度です。

これから日本では、どのようなたんぱく質が求められていくと予測されますか? 

酪農や畜産が盛んでなかった日本も、この30年間くらいで安くておいしい肉が身近になり、牛乳に関しては余ってくるほどになりました。言いかえると、もともと植物性たんぱく質を主とするプラントベースの土壌に、動物性たんぱく質が入ってきたということです。
次世代たんぱく質と呼ぶもののなかで、植物性たんぱく質について抵抗感を抱く人は日本人には少ないでしょう。また、山がちな地域ではイナゴを食べる文化もあり、昆虫からつくるたんぱく質も受け入れられる可能性があるかもしれません。
一方の、マイコプロテインや培養肉はレギュレーションや安全性の観点から、わが国で浸透してくるのには時間がかかるのだろうと予測しています。

 

サステナブルとウェルネス、2つの視点でみるタンパク質

代替たんぱく質をサステナブルフードとして考えるときに、大切なことは何だとお考えでしょうか?

大豆や昆虫、培養肉にしても、ただ珍しいだけで終わってしまうのではなく、継続性ということが大切ではないでしょうか。現段階で代替たんぱく質は、その研究開発費や宣伝広告費がかさむことにより価格が高くなりがちです。
消費者においては、なぜそれを摂るのか、そしてモチベーションを維持するための理解をすることが必要でしょう。各企業においては、よりストーリー性のあるプロモーションが重視されていくことになります。
また、日本では2020年4月に農林水産省が中心となって「フードテック研究会」を立ちあげました。このなかで、重点的にすすめるべき研究開発や投資、社会実装における分野のひとつとして、代替たんぱく質や機能性食品などをあげています。

ウェルネスの視点から、たんぱく質の世界的な動向について教えてください。 

ウェルネスの視点で市場の動向をみると、欧米においてはウェイトマネジメントに関連してたんぱく質の需要が伸びてきたと言えるでしょう。
そのきっかけとなったのは2000年代に流行った、低糖質食のアトキンス・ダイエット※1。さらに、高たんぱくで質のよい炭水化物こそウェイトマネジメントに有効だとするエビデンスが、現代も積まれつづけています。
こうした背景もあって、世界的なたんぱく源の枯渇とともに、たんぱく質摂取はグローバルなトレンドとなっているのです。

※1 アトキンス・ダイエット:アメリカの心臓外科医、ロバート・アトキンスが提唱した食事療法の一種で、炭水化物の摂取量を抑えてたんぱく質と脂肪の摂取を増やすことにより肥満状態を改善する方法。

 

多くのプロテイン製品の中で自分にあうものを選ぶのが難しいと感じています。新しい「DIAAS」とは、どのような評価ツールなのか教えていただけますか?

「DIAAS:digestible indispensable amino acid score」(消化性必須アミノ酸スコア)は、2013年に国連食糧農業機関(FAO)がつくった、たんぱく質の質を評価するための新しい指標です。
これまで、どの種類のアミノ酸がどのくらい含まれているかを見るための、プロテインスコアやアミノ酸スコアといった評価ツールはありました。さらに、DIAASの基となっている「PDCAAS:protein digestibility corrected amino acid score」(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア)」は、アミノ酸の組成や量だけでなく、そのたんぱく質の消化されやすさと、体内での利用されやすさも総合的に判断したもの。そしてDIAASは、計算した値の100%を超えた値を切り捨ててしまうPDCAASの難点を補正し、より高品質なたんぱく質の価値を算出できるようにしたものです。

 DIAASをつかうと、植物性と動物性ではどのような評価になるのでしょうか?

DIAASで見ると評価が高いのは、大豆などの植物性たんぱく質よりも乳製品や卵など動物性たんぱく質です。とくに、ミルクプロテインは高評価ですね。もし、プラントベースを代替品として摂る場合、コストのほかに品質や機能面についても考えていく必要があります。
そしてリアルフードには、たんぱく質のほかにビタミンやミネラル、酵素や微量元素などさまざまな栄養素が含まれていることも忘れてはいけません。必要なアミノ酸を効率よく摂取するための知識を身につけ、食を楽しみながら継続することが大切ではないでしょうか。

<マーケティングレポート②後編はこちら>

武田猛氏 プロフィール

株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役。
18年間の実務経験と17年間のコンサルタント経験を積み、35年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わり、国内外650以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置付け、自らのビジネスを正確に位置付ける」という「グローバルセンス」に基づき、先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評があり、数々のヒット商品の開発に関わる。


ウェルネス総研レポートonline編集部

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