文字サイズ

04認知症コラム

認知症の初期症状に見られる歩き方って?
特徴や原因について解説

2025.12.25

認知症の初期症状に見られる歩き方って?特徴や原因について解説

認知症の初期症状として、特異な歩き方が見られることがあります。たとえば、すり足になったり、歩幅が狭くなったり、歩行が不安定になったりするときは、認知症が疑われるかもしれません。この記事では、なぜ認知症を発症すると歩き方が変化するのか、また、特異的な歩き方が見られたときに実施したいことなどを紹介します。

認知症と歩き方の関係

認知症の進行と共に
歩き方も関係してくると言われている

認知症の方は、歩幅が狭くなったりすり足になったりすることがあります。また、何でもない場所で転倒するなど、歩行困難になることも少なくありません。

アルツハイマー型認知症と診断されたデイサービス利用者のうち、重度の歩行困難がない方を対象にした歩行調査があります。その結果によると、歩行速度や歩行の規則性と認知機能との間に関連が見られ、日常の歩き方から認知症の兆候を読み取れる可能性があるとさています。

参考:井上忠俊ら「アルツハイマー型認知症者の認知機能と歩行機能の関連性(応用老年学,第18巻第1号, 2024)

認知症について詳しくはこちら
アルツハイマー型認知症について詳しくはこちら

認知症と歩き方の関係 イメージ

認知症の影響が疑われる歩き方の3つの特徴

高齢になると筋力が低下するため、歩行速度が遅くなったり、脚をあまり上げないで歩くようになったりすることが珍しくありません。また、それとは別に、認知症の方には次のような歩き方が見られることもあります。

すり足になる 歩幅が狭くなる 歩行が不安定になる

すり足になる

すり足になる歩行は、認知症による運動指令の乱れが影響している可能性があります。足を持ち上げる動作が弱まり、地面を擦るような歩き方になることで、つまずきや転倒のリスクが高まります。日常のささいな変化として現れるため、早期の気づきが重要です。

認知機能について詳しくはこちら

歩幅が狭くなる

認知症による運動機能の低下が影響し、歩幅が狭くなる可能性もあります。脳の指令がうまく伝わらず、足の出し方が小さくなることで、全体の歩行リズムが乱れやすくなります。日常の変化として見逃されがちですが、早期発見の重要な手がかりになるでしょう。

歩行が不安定になる

足元が安定せず、直線的に歩くことが困難になることがあります。また、前かがみの姿勢で歩き、身体のバランスがうまくとれない方も少なくありません。実際に、イギリスで実施された研究では、レビー小体型認知症の患者は歩き方が左右非対称のため、転倒しやすいと報告されています。

レビー小体型認知症について詳しくはこちら

認知症の影響で歩き方が変化する原因

認知症の方の歩き方が変化するのは、加齢による筋力の衰えだけが原因ではありません。よくある原因を紹介します。

脳の空間認識領域が損傷を受けるから

認知症が進行すると、記憶や空間認識を司る脳の領域が委縮・損傷し、周囲の状況を把握しにくくなります。それにより、方向や距離の感覚を正確につかめず、足の動きがぎこちなくなり、歩き方が乱れやすくなるといわれています。

また、注意力が低下することで、障害物や段差につまずきやすくなります。転倒やケガのリスクも高まるため注意が必要です。

運動能力が低下するから

認知症により脳の萎縮が起こると、運動機能が低下することがあります。歩き方にぎこちなさが見られたり、歩幅が狭くなったりすることで、日常の移動にも支障をきたすかもしれません。

また、筋固縮や動作緩慢が見られるパーキンソン症状が併発すると、姿勢の保持や方向転換が困難になり、さらに転倒リスクが高まります。

パーキンソン病認知症について詳しくはこちら

実行能力が低下するから

認知機能の低下にともない、実行機能も低下することがあります。計画的に行動する能力や判断能力が鈍り、歩行にも支障が生じるようになるかもしれません。

歩き始める前に一度動作が止まったり、進行方向を切り替えにくくなったりすることもあるでしょう。また、複数動作を同時にこなすことが難しくなり、歩行中の姿勢や足の動きに影響が生じることもあります。

実行機能障害について詳しくはこちら

認知症の影響で歩き方が変化する原因 イメージ

認知症の初期症状で歩き方が
変化したときにできること

歩き方が普段と変わったときは、認知症の初期症状かもしれません。転倒やケガを防ぐために実施できることを紹介します。

歩行環境を整える

転倒やケガを防ぐためにも、歩行環境を整えることが必要です。家屋内外の段差を減らす、手すりを取り付けるなど、空間全体の構造や動線を見直しましょう。歩きやすい環境を整えることで、認知症患者本人の行動意欲を引き出せることもあります。

自宅でできる対策
  • 整理整頓して障害物を取り除く
  • 手すりをつける
  • 明るさを確保する
  • 滑り止めやカーペットで滑らない工夫をする
  • 床になるべく物を置かない

安全な歩行をサポートするグッズを使用する

安全な歩行をサポートするグッズを使用することもおすすめです。たとえば、手すりごと移動できる歩行器や、手のひらと腕で身体を支えるクラッチなどを活用するとよいでしょう。歩くのが難しいときは、車椅子を使ったり、歩幅を調整してゆっくりと移動したりするようにしましょう。

安全な歩行をサポートするグッズを使用する イメージ

運動やリハビリを行う

定期的に運動やリハビリをすることで、筋力や柔軟性の維持・向上を図れることがあります。理学療法士などの専門家のサポートの下、無理のない範囲で簡単なトレーニングを生活に取り入れていきましょう。

認知症のためのリハビリテーションについて詳しくはこちら

医療機関に相談する

認知症の初期症状と疑われる歩き方が見られるときは、早めに医療機関に相談しましょう。かかりつけ医や専門医に相談することで原因となる疾病が判明するかもしれません。また、認知症により歩行困難が生じている場合でも、早期に発見・治療を開始することで、改善できることもあります。

歩き方以外に気をつけたい認知症の初期症状

  • もの忘れが増えた
  • 同じ話を何度もしていると指摘される
  • 集中力が落ちたと感じる
  • 季節に合った服装を選ぶことが難しい
  • 身の回りのことや身だしなみに関心がなくなった

認知症の初期症状について詳しくはこちら

認知症の方の歩き方に関するよくある質問

認知症と歩き方に関するよくある質問とその答えをまとめました。ぜひチェックしてみてください。

認知症になったらなるべく歩かない方がよいですか? 認知症の方はどんな歩行訓練をするべきですか? ウォーキングが認知症予防になるって本当ですか?

Q認知症になったらなるべく歩かない方がよいですか?

歩くことは脳を刺激するだけでなく、運動機能を保つためにも必要なことです。安全な歩行環境を整えたうえで、積極的に歩くことが勧められます。

Q認知症の方はどんな歩行訓練をするべきですか?

特別な訓練をせずとも、ただ歩くことで海馬や大脳皮質の血流が促進されます。あまり速い速度で歩くと血圧が上昇することもあるため、普通あるいはゆっくりと歩くように心がけましょう。

Qウォーキングが認知症予防になるって本当ですか?

ウォーキングは、脳の血流を促進し、認知症予防にもつながる運動です。また、歩数を数えながら歩いたり、一定歩数ごとに歩く速度を変えたりすると、さらに脳の活性化を期待できます。

認知症予防について詳しくはこちら

歩き方が気になるときは
早めに医療機関で相談しよう

認知症の初期症状として、歩行速度の低下や歩幅の減少などの歩行関連の変化が見られることがあります。認知症は早期発見・治療が大切な意味を持つ疾病です。歩き方が気になるときは、早めに医療機関を受診し、かかりつけ医や専門医に相談するようにしましょう。

「認知機能ケアプロジェクト」では、認知症の予防につながるガンマ波の最新研究情報を配信しています。認知症についての研究は日進月歩です。ぜひ最新情報をチェックしてみてください。

関連コラム

Close 認知機能改善についてのガンマ波最新研究はこちら