04認知症コラム
認知症による「昼夜逆転」とは?
原因や対策を分かりやすく解説
2026.06.17
認知症の方には、日中に眠気があるものの夜は眠れない「昼夜逆転」がみられることがあります。昼夜逆転が続くと、せん妄や不安が強まったり、介護者の負担が増えたりすることもあるため何らかの対策が必要です。本記事では、昼夜逆転が起こる原因や改善するための対策について解説します。
認知症による「昼夜逆転」とは?
認知症を発症すると、体内時計や認知機能が低下し、昼夜の区別がつきにくくなることがあります。日中は眠り、夜間は覚醒するなど、生活リズムが乱れる方も少なくありません。
また、覚醒したときに家族を呼んだり徘徊したりすることもあるため、介護者の負担が増えるケースもあります。認知症の進行とともに昼夜逆転が起こりやすくなるため、原因や対策を理解しておくことが大切です。
- 昼夜逆転の症状の例
-
- 夜間に覚醒して歩き回る(徘徊)
- 夜中に家族を呼ぶ・大声を出す
- 日中に強い眠気があり、長時間の昼寝をしてしまう
- 昼夜の区別がつかず、夜中に「朝だ」と思い込む
認知症による昼夜逆転が続くことで生じる影響
認知症により昼夜逆転が起こると、本人だけでなく周囲にもさまざまな影響が生じます。主な影響について見ていきましょう。
本人のリスクが高まる
夜間に覚醒すると、家族に声をかけずに家屋内外を徘徊し、居場所が分からなくなってしまうケースも想定されます。暗がりで歩くため、日中よりも転倒や事故に遭う可能性が高まるでしょう。
睡眠時間が減り、生活習慣病にかかるリスクが高まることもあります。また、混乱が強まり、せん妄や不安といった認知症の症状が悪化することもあるため、注意が必要です。
介護者の負担が増える
認知症の方が夜間に活動するようになると、夜間も介護が必要です。介護者には日中の生活もあるため、睡眠不足が慢性化するでしょう。
また、日中の介護が完全になくなるわけではありません。トータルでの介護量が増え、身体的・精神的負担が大きくなることもあります。
生活の悪循環が起きやすくなる
認知症の方が慢性的な睡眠不足になると、昼寝が増え、夜は覚醒するといった悪循環が生じやすくなります。また、介護者も睡眠不足と疲労の蓄積から、適切なケアの提供が難しくなるでしょう。
生活リズムが崩れると、食事や入浴の時間、排泄のタイミングなどにも影響が生じます。認知症の方の健康にも影響がおよぶことがあるため、早めに改善することが必要です。
認知症による昼夜逆転が起こる原因
昼夜逆転現象は、認知症の方によくみられる症状です。認知症の方が昼夜逆転しやすくなる主な原因について見ていきましょう。
生活リズム・体内時計が乱れるため 見当識障害で昼夜の区別がつきにくいため 日中の活動量が低下して昼寝が増えやすいため 夜間に混乱が強まりやすいため 痛み・不快感、脱水などの体調要因があるため 睡眠障害があるため 薬の副作用や服用タイミングの影響があるため
生活リズム・体内時計が乱れるため
認知症の方は、睡眠が浅くなり、生活リズムが崩れやすくなります。また、体内時計の調整機能が低下し、「日中は活動、夜間は睡眠」といった区分けが難しくなることもあるでしょう。
日中の活動時間が減ると日光を浴びる機会も減り、生活リズムがさらに崩れやすくなります。規則的な生活を維持できず、昼夜逆転するケースもあるでしょう。
見当識障害で昼夜の区別がつきにくいため
見当識障害とは、時間や場所、人に対する認識能力が低下した状態です。認知症になると見当識障害が生じ、時間や場所の感覚が低下し、昼夜の判断が難しくなることもあります。
また、時計やカレンダーを見ても正確に理解できず、「もう起きよう」「そろそろ寝よう」「今日は人と会う約束がある」といった意識を持ちにくくなるケースもあります。
日中の活動量が低下して昼寝が増えやすいため
認知症の周辺症状の中でも、不安や抑うつ、意欲低下は比較的よく見られる症状です。いずれも活動量の低下を招く原因となり、家に引きこもって昼寝が増える方も少なくありません。また、刺激の少ない環境が、日中の眠気を誘発することもあります。
活動量の低下は睡眠の質の低下を招きます。夜は眠れず、日中は昼寝をすることが増え、昼夜逆転が起こりやすくなるでしょう。
夜間に混乱が強まりやすいため
認知症の方の中には、夕暮れ時になると不安や興奮、焦りが増す「夕暮れ症候群」が見られる方もいます。薄暗さが認知症の方の恐怖や混乱を誘発し、夜間にかけて覚醒状態が続く方も少なくありません。
また、幻視や妄想などの症状も、周囲の状況を把握しにくくなる夜間のほうが起こりやすいとされています。夜間に興奮すると入眠が難しくなり、昼夜逆転になりやすいでしょう。
痛み・不快感、脱水などの体調要因があるため
認知症の方や高齢者は、身体的な不調を抱えがちです。身体に痛みや痒みがある場合、ベッドで横になってもすぐには入眠できません。また、脱水状態や排尿トラブル、便秘、胃部不快感などがある場合も、夜間の覚醒が増える可能性があります。
睡眠障害があるため
年齢を重ねると、睡眠の質が低下しやすくなります。また、単に加齢だけでなく、睡眠時無呼吸症候群などの疾患により睡眠の質が低下するケースもあるでしょう。
眠りが浅くなると、少しの刺激で覚醒し、再度の入眠が難しくなる場合もあります。
薬の副作用や服用タイミングの影響があるため
薬の副作用や服用タイミングにより、適切な時間に眠れない状況が生じている可能性があります。たとえば、興奮や覚醒を促進させる薬や利尿剤、睡眠導入剤などが影響をおよぼしているかもしれません。
また、薬が効きすぎること、反対に効かなさすぎることにより、生活リズムが崩れることもあります。
認知症による昼夜逆転を改善するための4つの対策
認知症により昼夜逆転が起こったときは、いくつかの対策を実施することで生活リズムを整えられるケースもあります。実施したい4つの対策を見ていきましょう。
朝の起床と光を固定する
体内時計を整えるためにも、朝はしっかりと日光を浴び、決まった時間に起床することが大切です。日光による刺激が睡眠と覚醒のリズムを正常化し、質の良い睡眠へとつながります。また、日光を浴びることがその日一日の活動を開始する合図になり、アクティブな生活を送りやすくなるでしょう。
- 具体例
-
- カーテンを開けて自然光を部屋に入れる
- 朝の短時間散歩を取り入れる
- 光療法ライト(高照度ライト)を朝に使用する
日中の活動量を確保し昼寝を調整する
日中にしっかりと活動すると、夜は自然に眠気が生まれ、スムーズな入眠へとつながります。また、十分な活動量により身体が程よく疲れ、夜間の覚醒が減る可能性があります。
日中につい横になってしまう方は、デイサービスなどの外部の刺激を取り入れることも検討しましょう。
- 具体例
-
- 軽い散歩や屋外歩行
- 家事の簡単な手伝い(洗濯物たたみ・テーブル拭きなど)
- レクリエーション(塗り絵、体操、音楽活動)
夕方以降の不安や混乱をやわらげる工夫をする
認知症の方は夕暮れ時に不安や興奮を感じがちですが、夜間の覚醒を減らすためにも、夕暮れ症候群による混乱を抑えることが大切です。
たとえば、夕暮れ時は早めに室内の照明を点け、薄暗さを感じにくくすることでも混乱や恐怖感の軽減につながるでしょう。また、安心できる声がけを心がけ、認知症の方の心の安定を図るのも一つの方法です。
- 具体例
-
- 夕方に部屋の照明を早めに点けて明るくする
- 落ち着く音楽を流す、好きなテレビ番組を一緒に見る
- 「これから夕食だよ」など、短く優しい声かけを繰り返す
就寝前から入眠までの環境を整える
質の良い睡眠のためにも、寝室の環境を整えましょう。眠りやすい温度や湿度、明るさに調整し、スムーズに入眠できるようにサポートします。
また、夜間はカフェインの摂取や喫煙は避けましょう。刺激物を控えることで、脳の興奮を抑えやすくなります。
- 具体例
-
- 寝室の温度や明るさを適切に調整する
- 就寝2〜3時間前からテレビ・スマホの使用を控える
- 就寝前にトイレ・水分補給・軽いストレッチを行う
認知症による昼夜逆転の症状に
対応する際の注意点
対策をしても、昼寝や夜間の興奮により、昼夜逆転が起こる可能性があります。万が一に備えるための注意点をまとめました。
事故を防ぐために安全を確保する 逆効果になりやすい対応を避ける 介護者の休息を確保できる体制を整える 経過を記録して相談の材料にする
事故を防ぐために安全を確保する
夜間の徘徊や転倒による事故を防ぐためにも、環境を整えましょう。廊下やベッドの周辺に足元灯を設置したり、障害物となるものを撤去したりすることで、事故を防ぎやすくなります。
また、夜間に外出することがないよう、玄関や勝手口などに補助錠を取り付けることも検討できるでしょう。夜間外出を防止することは、認知症の方の安全を守るためにも不可欠です。
- 具体例
-
- 廊下やトイレまでの足元灯を設置する
- カーペットのめくれ・コード類を片付ける
- 玄関に補助錠をつける
- 窓にセンサーを設置する
逆効果になりやすい対応を避ける
もし夜間に叫んだり外出したりした場合も、決して叱責したり、無理に家に連れて帰ったりしてはいけません。かえって興奮や混乱を増幅することになり、夜間の覚醒が強まることもあります。
否定的な対応をしないように心がけることで、認知症の方の不安を抑え、昼夜逆転を長引かせないようにしましょう。また、徘徊防止のために日中の活動を制限すると、活動量が不足し、夜間に眠れなくなってしまうこともあるため注意が必要です。
- 具体例
-
- 「早く寝て!」と強く促す
- 間違いを指摘して否定する
- 昼間ずっと座らせて過ごさせる
介護者の休息を確保できる体制を整える
介護者に身体的・精神的余裕がなくなると、認知症の方に寄り添った介護が難しくなります。また、疲労蓄積により共倒れになる可能性もあるため、介護者が適度に休息できるような体制を構築することが大切です。
必要に応じて外部サービスを利用し、介護の負担を分散させましょう。また、家族内で役割分担をし、特定の人に負担が集中しないようにすることも重要です。
- 具体例
-
- ショートステイを定期的に利用する
- 訪問介護・訪問看護を組み合わせる
- 家族で「夜間当番」を交代制にする
経過を記録して相談の材料にする
介護記録を付けることも大切なポイントです。認知症の方の行動と介護者の対応の関係を理解しやすくなり、課題の特定と改善策の検討に役立ちます。
また、医師やケアマネージャーなどに家庭での様子を説明する際にも、介護記録が役立ちます。服用中の薬の種類や服薬タイミングなども記載すると、薬と体調の変化の関係も分析しやすくなるでしょう。
- 具体例(記録しておくことの例)
-
- 就寝時間・起床時間・夜間覚醒の回数
- 昼寝の時間・活動量・食事量
- 服薬時間・体調の変化・気になる行動
認知症による昼夜逆転に関するよくある質問
認知症の方を介護するうえで、昼夜逆転現象について理解しておくことは大切です。ここでは、昼夜逆転に関するよくある質問とその答えを紹介します。
認知症の昼夜逆転と夕暮れ症候群の違いは何ですか? 認知症の昼夜逆転で睡眠薬を使っても大丈夫ですか? 認知症の昼夜逆転はどんなときにどこへ相談すべきですか?
Q認知症の昼夜逆転と夕暮れ症候群の違いは何ですか?
昼夜逆転とは、昼寝が増え、夜間の睡眠に影響がおよぶことを指します。一方、夕暮れ症候群は夕暮れ時以降に不安や興奮、焦りが強まることです。いずれも認知症の方によく見られます。
Q認知症の昼夜逆転で睡眠薬を使っても大丈夫ですか?
認知症の方に夜間徘徊や睡眠障害が見られる際に、睡眠薬が処方されることもあります。他の薬との飲み合わせもあるため、自己判断で服用させるのではなく、医師に相談してみましょう。
Q認知症の昼夜逆転はどんなときにどこへ相談すべきですか?
夜間徘徊や睡眠障害が見られるときは、医療機関に相談することを検討しましょう。神経内科や精神科、脳神経外科、もの忘れ外来、認知症外来などで相談できます。
認知症の方と介護者の健康維持のためにも生活リズムを整えよう
認知症の方は昼夜逆転が起こりやすく、本人の転倒や事故のリスクが増えるだけでなく、介護者の負担も増大することがあります。ベッド周りや廊下などの環境を整える、日中の運動量を増やすなどの工夫により対処できることもあるため、医師に相談のうえ、取り入れてみてください。
「認知機能ケアプロジェクト」では、ガンマ波による認知症予防などの最新研究情報を配信しています。認知症についての理解を深めるためにも、正しい知識を取り入れることが大切です。ぜひチェックしてみてください。