04認知症コラム
認知症の方が睡眠薬を使用すべき
4つのケース
|種類や使用時の注意点も解説
2026.01.30
認知症の方に睡眠薬が処方されることがあります。実際のところ、認知症の方が睡眠薬を服用しても症状が悪化することはないのか気になる方も多いでしょう。この記事では、認知症と睡眠薬について知っておきたいことや服用時の注意点、睡眠に問題が見られるときに検討できる睡眠薬以外の方法を解説します。
認知症と睡眠薬の関係
認知症の方は、「なかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚める」といった睡眠関連の問題を抱えることがあります。睡眠のトラブルがあるときに睡眠薬を服用してよいのか、いくつかの側面から見ていきましょう。
睡眠薬は認知症を発症するリスクを高める?
睡眠薬により認知症のリスクを高めるという
明確な因果関係は証明されていない
睡眠薬を服用することで認知症の発症リスクが高まるという因果関係は、現時点では証明されていません。
たとえば、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は脳内の神経伝達物質であるGABA受容体に作用します。長期服用により認知症の発症リスクが高まる可能性があるとの報告もありますが、一方で発症リスクが変わらなかったという研究や、かえってリスクが低下したという報告も存在します。このように研究結果は一致しておらず、一概には断定できません。
また、不眠症を放置することで認知症の発症リスクが高まるという研究報告もあります。これらを踏まえると、睡眠薬と認知症の関係には個人差が大きいと考えられます。
認知症の方が睡眠薬を使用すると
症状が悪化することはある?
すでに認知症を発症している方が睡眠薬を使用すると、せん妄やふらつき、転倒などの副作用により、認知機能が一時的に低下することがあります。また、睡眠の質の低下により、認知症のBPSD(周辺症状)が悪化し、症状が重症化したように見えることもあるかもしれません。
また、睡眠薬を長期的に使用すると、生活の質やケアの難易度に影響を及ぼすこともあります。認知症の方が睡眠薬を服用するときは、定期的に医療機関を受診し、必要に応じて処方を見直してもらうようにしましょう。
認知症の方が睡眠薬を使用するべき4つのケース
認知症の症状によっては、睡眠薬が処方されることがあります。睡眠薬の使用が必要と判断される主な状況について見ていきましょう。
レム睡眠行動障害が見られるとき
レム睡眠行動障害がある場合、けがや事故防止のために睡眠薬の使用が勧められます。この症状は、レビー小体型認知症に見られやすく、睡眠中に夢の内容に反応して暴れたり叫んだりするものです。睡眠薬で行動を抑制することが安全対策として有効です。
夜間せん妄による混乱・幻覚が強いとき
夜間せん妄による混乱や妄想が強い場合、睡眠薬で夜間の覚醒を抑えることが推奨されます。夜間せん妄では、夜になると混乱し「誰かがいる」「盗まれた」といった妄想が出て、興奮して騒いだり徘徊したりします。睡眠薬で夜間の覚醒を抑えることで、これらの症状の軽減が期待できるでしょう。
深夜徘徊が頻繫に起きているとき
深夜徘徊が見られる場合も、本人の安全確保と介護者の負担軽減のため、睡眠薬による治療が有効です。アルツハイマー型認知症による記憶障害や見当識障害により、夜間に歩き回る症状が現れることがあります。睡眠薬で夜間の覚醒を抑えることにより、転倒や事故のリスク軽減が期待できます。
不眠障害が続いているとき
不眠障害が続いている場合、睡眠不足が日中の不穏・攻撃性・焦燥などのBPSD(周辺症状)を悪化させる前に、睡眠薬による介入が検討されます。ベッドに入っても眠れず、何度も起きてくる、眠りが浅いといった症状が見られ、「眠れない」と強い不安を訴えることもあります。睡眠不足が続くと日中の行動にも影響が出るため、早めの対応が重要です。
認知症の方が使用する睡眠薬の種類とその特徴
| 薬剤名 | 特徴 | 副作用・注意点 |
|---|---|---|
| ロゼレム (ラメル テオン) |
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| ベルソムラ (スボレキ サント) |
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| アモバン (ゾピクロン) |
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| マイスリー (ゾルピデム) |
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| ルネスタ (エスゾ ピクロン) |
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ロゼレムやベルソムラは比較的新しい医薬品で、自然な眠気を促すタイプのため、高齢者にも使いやすいとされています。しかし、個人差があるため使用には注意が必要です。また、食事と同時、食直後の服用は避けてましょう。
また、マイスリーやルネスタ、アモバンといった非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は即効性に優れるため、就寝直前に服用する必要があります。また、ふらつきや浮動性めまいなどの副作用が生じることもあるため、長期使用は慎重に検討しましょう。
認知症の方が睡眠薬を使用するときの注意点
睡眠薬を安全に服用するためには、いくつかの点に注意が必要です。とくに、認知症の方が注意したいポイントを解説します。
副作用のリスクを理解し安全に使う
睡眠薬の使用にあたっては、安全性を最優先に考える必要があります。高齢者や認知症の方は、ふらつき・せん妄・浮動性めまいなどの副作用が出やすい傾向にあるためです。夜間の転倒や混乱は生活の質や介護負担に直結するため、医師と相談しながら薬の種類や体質との相性を確認し、慎重に選択しましょう。
用量は必ず守り自己判断で変えない
睡眠薬は用法・用量を厳守し、自己判断で変更しないことが大切です。決められた量以上の服用はふらつき・せん妄・転倒のリスクを高めます。また、効果が感じられないからと追加服用をすると依存の原因になりかねません。急な中止も不眠の再発や深夜徘徊を招きやすいため、とくに認知症の方は医師の指示に従って服用しましょう。
服用中は医師と状態を共有する
睡眠薬の服用中は、定期的に医師と状態を共有することが重要です。睡眠薬は服用後の反応に個人差があるため、服用後の様子を医師に伝えることで、状態に応じて薬の種類や量を調整でき、安全に使い続けられます。定期的な報告と相談を通じて、より適切な治療につなげましょう。
睡眠薬以外で認知症の方の
睡眠を改善するための工夫
睡眠に関する不調や問題は、睡眠薬以外でも改善できることがあります。薬剤を使用しない改善方法について見ていきましょう。
生活リズムを整えて自然な眠気を促す 不安や混乱を減らし精神的な安定を図る 夜間の覚醒を防ぐための物理的な睡眠環境を整える
生活リズムを整えて自然な眠気を促す
日中の活動を増やし規則的な生活を送ることで、自然な眠気を引き出せます。認知症の方は体内時計が乱れやすく、昼夜逆転や夜間覚醒が起こりがちなため、生活リズムを整えることが重要です。
- 具体例
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- 昼間の活動量を増やす(散歩・体操など)
- 日光を浴びる
- 食事時間を整える
- 昼寝のしすぎを避ける
- 就寝前の刺激(スマホ・TV)を減らす
- カフェインの摂取量を減らす
不安や混乱を減らし精神的な安定を図る
安心できる環境や関わり方を整えることで、心の安定と睡眠改善につながります。不安や孤独感は夜間の不穏や徘徊を引き起こすため、認知症の方が安心して過ごせる環境づくりを意識しましょう。
- 具体例
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- 日中に声をかけ、話を聞く時間を作る
- 穏やかな口調で話しかけ、否定や指摘を避ける
夜間の覚醒を防ぐための
物理的な睡眠環境を整える
物理的な睡眠環境を整えることで、安全性の向上と介護者の不安軽減につながります。認知症の方は夜間に起き出して転倒したり外出したりすることがあるため、事前に安全対策を講じておくことが大切です。
- 具体例
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- 照明や声かけで安心感を与える
- 見守り体制を整える・家族との関わり方を工夫する
認知症と睡眠薬に関するよくある質問
認知症の方は睡眠に問題を抱えることが少なくありません。睡眠薬についてよくある質問と答えを参考に、個々に応じた適切な対策を取っていきましょう。
Q認知症の方にとって睡眠薬は必要不可欠ですか?
個人差はありますが、夜間徘徊やレム睡眠行動障害が見られるときは、睡眠薬が必要になることもあります。睡眠や夜間の問題を医師に説明し、個々に合った適切な対策を講じましょう。
Q睡眠薬で認知症を予防することは可能ですか?
睡眠薬により認知症の進行を遅らせることができるといった研究報告もあれば、かえって進行させるといった報告もあり、定かではありません。適切に薬剤と関わるためにも、医師に相談し、個人に向けて処方された睡眠薬を服用するようにしましょう。
Q市販の睡眠薬は認知症に影響を与えますか?
市販の睡眠薬も処方薬と同じく、さまざまな成分が含まれているため、服用後にどのような反応を示すか予測できない部分があります。体質や症状に合った睡眠薬を服用するためにも、医師に相談し、医療機関で処方してもらうようにしましょう。
睡眠に問題を抱えているときは医師に相談しよう
睡眠薬と認知症の関係については、明確には分かっていません。発症リスクが高まるという報告もあれば反対の報告もあります。
また、認知症患者においても服用により一時的に症状が悪化したように見えるケースもあるため、睡眠に問題を抱えているときは自己判断せずに医療機関を受診するようにしましょう。
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