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04認知症コラム

認知症の予防に運動は効果的?
おすすめの
運動や実践するときのポイントを紹介

2025.12.25

認知症の予防に運動は効果的?おすすめの運動や実践するときのポイントを紹介

認知症の予防には「運動」が効果的です。実際に多くの研究でも示されており、定期的な運動習慣が認知機能の維持に役立つとして厚生労働省も推奨しています。この記事では、認知症予防の効果が期待できるおすすめの運動を紹介します。さらに、安全に続けるためのポイントや、運動以外の予防法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

認知症の予防に運動は効果的?

定期的な運動習慣を身につければ
認知症予防に効果が見込める

運動は、認知症の予防、特にアルツハイマー型認知症のリスク低下に効果的です。認知症予防の研究で有名な「久山町研究」でも、日常的に運動している人ほど発症率が低いことが示されています。継続的な運動は脳の血流を促進し、神経細胞の働きが活発になるほか、記憶を担う海馬の萎縮を防ぐ作用も確認されています。

また、定期的な運動は筋力の維持にもつながり、転倒や寝たきりの防止にも有効です。脳と身体の両面から健康を支える運動は、健康寿命を延ばすうえでも積極的に取り組むべき習慣といえるでしょう。

出典:厚生労働省「認知症予防・支援マニュアル (改訂版)

運動習慣とアルツハイマー型認知症の危険度の関係
運動習慣とアルツハイマー型認知症の危険度の関係

認知症予防におすすめの運動

認知症予防には、脳と体の両方を刺激する運動が効果的です。ここでは、日常生活に取り入れやすく、継続しやすいおすすめの運動をご紹介します。

有酸素運動

有酸素運動とは、一定時間にわたって体全体に軽度から中程度の負担をかける運動のことを指します。ウォーキングやサイクリング、水中歩行、ラジオ体操などが代表的です。これらの運動は脳の血流を促し、認知機能や実行機能、言語能力の改善に効果があるとされています。

筋力トレーニング

筋力トレーニングは、認知機能や注意力、実行機能、言語能力の向上に効果が認められています。とくに、胸・背中・下肢など大きな筋肉を意識して鍛えることがポイントです。

腕立て伏せや腹筋など簡単な運動は自宅でも取り組めます。ジムに通ってマシンを使ったトレーニングを行うのも効果的です。

コグニサイズ

exercise(運動)とcognition(認知)トレーニングを組み合わせた国立長寿医療研究センターが開発したエクササイズ

コグニサイズとは、全身を使った軽い運動と認知トレーニングを組み合わせた運動法です。息が軽く弾む程度の運動と、しりとりや計算問題などの認知トレーニングを同時に行います。

体を動かしながら脳を刺激し、健康維持と認知機能の活性化を同時に行うことで、認知症の発症を遅らせる効果が期待できます。

  • 歌いながらウォーキングをする
  • 足踏みしながらしりとりをする
  • ステップを踏みながらじゃんけんをする

出典:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック

出典:厚生労働省「標準的な運動プログラム(健康増進施設)

出典:国立長寿医療研究センターホームページ「コグニサイズ

認知症予防のために運動を実践する際の4つのポイント

認知症予防のために運動を取り入れる際は、ただ行うだけでなく安全性や継続性を意識することが大切です。ここでは、効果的に運動を続けるための4つのポイントを押さえましょう。

認知症予防のために運動を実践する際の4つのポイント イメージ

無理なく実践する

認知症予防に運動を取り入れる際は、最初から強度を上げすぎず、無理のない範囲で始めることが大切です。しんどさを感じると続かないため、自分に合った負荷で行いましょう。

慣れてきたら少しずつ強度を上げ、少しきついと感じる程度の運動を長期間続けられるよう無理のない頻度で継続すると効果的です。

転倒予防をする

認知症の方は転倒しやすい傾向があるため、運動中にケガをしないよう安全な環境を整える必要があります。たとえば、転倒につながる物を片付ける、段差をなくす、十分な広さのスペースを確保するなどの工夫が必要です。安心して運動を継続するためにも、安全な環境づくりで転倒による事故を防ぎましょう。

継続できる環境を整える

運動は継続してこそ効果が得られるため、無理なく続けられる環境づくりが重要です。実際に、認知症を予防するには、週に3回、2時間以上の運動を半年以上続けるのが効果的だといわれています。

そのため、自宅や近所など、気軽に取り組める場所を確保し、習慣化しやすくする工夫が必要です。たとえば、ウォーキングコースを決めたり、天候に左右されない室内運動のスペースを整えたりと、日常の中に自然に運動を取り入れられるよう意識しましょう。

出典:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック

誰かと一緒に実践する

運動を認知症予防に取り入れる際は、家族や友人と一緒に行うことが効果的です。誰かと一緒に取り組むことで、モチベーションを保ちやすくなり、孤立感の軽減にもつながります。

また、地域の体操教室やオンラインフィットネスなど、参加しやすいプログラムを活用するのもおすすめです。運動を通じた社会的交流は、認知機能の維持や向上にも効果があるとされており、楽しみながら続けやすい環境づくりにも役立ちます。

運動以外にできる認知症の予防法

認知症の予防には運動だけでなく、生活全体を整えることも重要です。ここでは、食生活や生活習慣、脳を刺激する活動など、運動以外で実践できる予防法をご紹介します。

食生活を整える

認知症予防には、食生活の見直しが欠かせません。毎日の食事内容を改善すれば、認知症の原因となる生活習慣病のリスクを減らすことが可能です。

とくに、野菜や果物、魚を中心とした栄養バランスの良い食事は、脳の健康を維持し、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。また、地中海食や和食のような自然食材を活かした食事スタイルは、認知症予防に適した食事法として注目されており、高齢者の方にもおすすめです。

ポイント
  • 野菜・果物・魚を中心としたバランスの良い食事を心がける
  • 地中海食や和食など、自然食材を活かした食事スタイルを取り入れる

認知症予防のための食べ物について詳しくはこちら

生活習慣病を予防する

糖質の過剰摂取や食べすぎは、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病の原因となります。栄養バランスの取れた食事を意識すれば生活習慣病を予防でき、認知症リスクの軽減につながります。

また、タバコやアルコールの過剰摂取は脳や血管に悪影響を及ぼし、認知機能の低下につながるため、喫煙や飲酒の習慣も見直しが必要です。

ポイント
  • 栄養バランスの取れた食事で生活習慣病を予防する
  • タバコやアルコールの過剰摂取を控える

アルコール性認知症について詳しくはこちら

脳トレやゲームを行う

脳トレや思考力を使うゲームは脳の活性化につながり、認知症予防に効果的です。指先を動かしながら集中することで、脳の複数の領域が刺激され、認知機能の維持につながります。

また、脳トレや思考力を使うゲームだけでなく、本や新聞を読む、日記を書く、計画を立てるといった継続して取り組める知的な習慣を取り入れることも大切です。記憶力や注意力の向上にもつながり、加齢による脳の衰えを防ぐ効果も期待できます。

ポイント
  • 指先を使い集中できる脳トレやゲームを日常に取り入れる
  • 継続的に取り組める知的な習慣をつける

認知症予防のための脳トレについて詳しくはこちら
認知症予防のためのゲームについて詳しくはこちら

認知症予防について詳しくはこちら

社会活動に参加する

社会活動への参加も脳の活性化に効果があり、認知症予防につながります。たとえば、高齢者向けのフィットネスクラブや習い事教室への参加などもよいでしょう。

興味のある内容で、通いやすい地域のプログラムなどに参加すれば、継続しやすく社会的なつながりも深まります。とくに、定年後は人との接点が減りがちです。孤立の防止や生きがいを維持するためにも、積極的な社会活動への参加をおすすめします。

ポイント
  • 興味のある地域のプログラムに参加して継続する
  • 社会活動を通じて人とのつながりや生きがいを深める

認知症予防と運動に関するよくある質問

ここでは、認知症予防と運動に関してよく寄せられる疑問や質問と、その回答をまとめました。運動の効果や取り組み方について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

運動をすることで認知機能は改善しますか? 高齢者向けの認知症のトレーニングはありますか? 運動の種類により認知機能への影響に違いはありますか?

Q運動をすることで認知機能は改善しますか?

運動は脳の血流を促進し、神経細胞の働きを活性化させるため、認知機能の維持や改善に効果が期待できます。とくに、有酸素運動や筋力トレーニング、コグニサイズのように脳を刺激する運動は、記憶力や注意力、実行機能の向上につながるとされています。

Q高齢者向けの認知症のトレーニングはありますか?

認知機能を刺激する運動や脳トレが効果的です。ウォーキングや水中歩行などの有酸素運動、筋力トレーニング、運動と認知課題を組み合わせたコグニサイズ、指先や計算を使う脳トレゲームなどがあります。これらを無理のない範囲で継続することで、認知機能の維持や低下防止につながります。

Q運動の種類により認知機能への影響に違いはありますか?

はい、運動の種類によって違いがあります。有酸素運動は脳の血流を促進し、記憶力や注意力の維持に効果的です。筋力トレーニングは注意・判断・抑制などの遂行機能を高める効果が確認されています。コグニサイズのように運動と認知トレーニングを組み合わせた方法は、複数の脳領域を同時に刺激できるため、総合的な認知機能の改善に有効です。

無理なく続ける運動習慣で認知症予防を

運動は認知症予防に高い効果が期待できます。継続することが重要なため、無理なく楽しく続けられる自分に合った運動方法を選びましょう。また、仲間や家族とのコミュニケーションの機会として活用することで、心身ともに健康を維持しながら認知機能を守ることができます。

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