04認知症コラム

認知症を予防するゲームは?
効果やおすすめのゲーム、ポイントを紹介

2024.06.28

認知症を予防するゲームは?イメージ

認知症予防にはゲームが効果的だと聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。この記事では、ゲームが認知症予防に効果的だとされる理由やおすすめのゲーム、実施する際の注意点を解説します。ポイントや注意点をおさえ、楽しみながら認知症を予防しましょう。

認知症予防にゲームが
効果的とされる理由

認知症の予防にはゲームがよいと言われていますが、なぜなのでしょうか。ここでは、ゲームが認知症予防によい効果を及ぼす理由を解説します。

脳が活性化する 脳と体を同時に動かせる 他人とコミュニケーションが取れる 生活に活気が生まれる

認知症予防にゲームが効果的とされる理由イメージ

脳が活性化する

ゲームの効果として、前頭前野をはじめ、脳のさまざまな部分が活性化されることが挙げられます。

前頭前野は、記憶や学習、感情と大きく関係している部分です。衰えてしまうと、思考のコントロールがうまくいかず、認知症の初期症状が見られる可能性が高まります。

ゲームはルールに従いながら、相手の動きを予測して、それに応じて手指・体を動かすという行為が自然と行われます。ゲームでは、脳のさまざまな部分を同時並行的に使う行為を繰り返すため、認知機能の維持に役立つとされているのです。

脳と体の両方を同時に動かせる

ゲームの種類によっては、頭だけでなく体も動かせることがあります。

運動は脳に刺激を与え、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。これは、運動が血流を改善し、脳の酸素供給を増加させるためです。また、ゲームを通して体を動かすことで、身体機能も高まります。体力が身につき、転倒などによるけがのリスクを減らせるかもしれません。

ゲームによって脳と体の両方を活性化させられて、全体的な健康に対するプラスの影響をもたらす可能性が高まるでしょう。

他人とコミュニケーションが取れる

複数人で楽しむゲームは、他者とのコミュニケーションの機会が自然に生まれます。

他者との会話や触れあいは、脳に多くの刺激を与えます。新しい情報の処理や異なる視点の理解などを自然と行うため、脳の認知機能を活性化させるのに役立つでしょう。とくに、高齢者の場合、他者とのコミュニケーションは孤独感や不安感を緩和する効果も期待できます。

他者とゲームを通じて協力したり競争したりして、楽しみながら認知症予防の取り組みを続けられるでしょう。

生活に活気が生まれる

ゲームをすると普段の生活では味わえない達成感や満足感を得られ、生活にメリハリができるでしょう。

ゲームの目標を達成したり、新しいスキルを習得したりすることで、ゲームに対する意欲がわきます。日常生活に活気が生まれるため、生きる活力にもつながります。活動的で充実した生活は、精神的な健康に対してプラスの影響をもたらすでしょう。

脳の活性化と社会的なつながりが生まれるのも、生活に活気をもたらす要因です。さらに認知機能を維持する効果が期待できます。

認知症予防におすすめの7つのゲーム

認知症の効果がわかっても、具体的に何をすればよいのか悩むかもしれません。ここでは、認知症予防におすすめのゲームを紹介します。

パズルゲーム カードゲーム 連想ゲーム クイズゲーム ロールプレイングゲーム リズムゲーム アクションゲーム

パズルゲーム

パズルゲームは、ピースを当てはめ絵を完成させるゲームです。完成形を予想しながら指先を使うため、推理力や記憶力の向上につながります。さらに、指先を使うことで脳への刺激も与えられるでしょう。認知症ケアとして取り入れやすいおすすめのゲームです。

カードゲーム

トランプに代表されるカードゲームも認知症予防におすすめです。神経衰弱やババ抜きのようにシンプルなルールのゲームや、七並べのように考える力を要するものもあります。参加する人や状況に応じて遊びやすいゲームを選べるのが魅力です。カードを用意すればすぐに始められるので、手間もかかりません。

連想ゲーム

脳を鍛えるゲームとして、連想ゲームも挙げられます。連想ゲームとは、テーマが用意され、それに関連したものを挙げていくゲームです。なるべく多くのものごとを思い出そうとすることで、脳を刺激できるでしょう。途中で懐かしい記憶がよみがえれば、不安解消にも役立ちます。

クイズゲーム

高齢者の思考力を鍛えるクイズゲームもよいでしょう。問題や正解に関心を持てば、意欲も高まります。たとえ正解でなかったとしても、考えること自体が脳の活性化につながります。
下記右記は、とくにおすすめのゲームです。

人気のクイズゲーム

漢字のクイズ

ことわざクイズ

都道府県名あてクイズ

虫食い計算クイズ

楽しみながら記憶力のトレーニングを行えるほか、過去の記憶を呼び起こし、認知機能回復へのアプローチにもつながるでしょう。

ロールプレイングゲーム

ロールプレイングゲームも手軽でおすすめのゲームの一つです。ロールプレイングゲームでは、何かになりきって役を演じます。高齢者の方が与えられた役を想像し、普段の自分とはちがうものになることで、思考力や想像力、観察力が鍛えられるでしょう。役割を持つことで、日常の中での生きがいを生み出すことにつながるかもしれません。

リズムゲーム

リズムゲームはTVゲームの一つで、脳と体を動かせます。音楽にあわせて指定のポーズをとるものや、スマートフォンやタブレットの画面を指先でタップするゲームなど、さまざまな種類があります。リズムゲームの曲は誰でも楽しめるため、世代を超えたコミュニケーションもうまれるでしょう。

アクションゲーム

アクションゲームもTVゲームの一つで、脳や指先を鍛えます。アクションゲームでは、目で画面の動きを追い、次の操作を考えながら指を動かします。脳のさまざまな部分を使うため、認知機能の維持に効果的といえるでしょう。ただし、就寝前のゲームは不眠の要因となりかねないため、注意が必要です。

認知症予防にTVゲームは効果がある?

TVゲームが認知機能によい影響を与えることに懐疑的な方もいるかもしれません。ここでは、TVゲームの効果について紹介します。

認知症予防にTVゲームは効果がある?イメージ

認知症予防にTVゲームがよいことは
科学的に証明されている

TVゲームが脳に与える影響に焦点を当てた研究はいくつか行われており、認知症予防にも効果があると結論づけている論文もいくつかあります。

たとえば、アメリカのカリフォルニア大学の研究では、70代から80代の健康な男女にゲームをしてもらう実験が行われました。ゲームをする前後で、集中力やマルチタスク能力、記憶力の変化を記録したところ、脳の活性化や、認知機能の回復が見られたそうです。

出典:Greg L. West, Benjamin Rich Zendel, Kyoko Konishi, Jessica Benady-Chorney, Veronique D. Bohbot, Isabelle Peretz, Sylvie Belleville
Playing Super Mario 64 increases hippocampal grey matter in older adults

TVゲームは何時間行うのが適切か

TVゲームは1日1時間程度に留めるのがおすすめです。

認知症予防にゲームは効果的ですが、長時間のゲームは頭痛や依存症などのリスクがあります。長時間の画面の見つめ続けることで、目の疲労や頭痛を引き起こす可能性があるためです。また、ゲームに没頭するあまり、日常生活などの重要な活動がおろそかになる場合もあるでしょう。

1時間程度のゲームプレイでも認知機能が向上することが、研究の結果からわかっています。脳を鍛えたいからと過度にゲームをせず、楽しめる範囲で取り入れましょう。

認知症予防のゲームで効果を得るための5つの原則

群馬大学で発表された論文によると、脳活性化リハビリテーションにおいて5つの原則があるとされています。ゲームの効果を高めるためにも、それぞれ詳しくみていきましょう。

1快刺激を得る

認知症予防のリハビリテーションにおいて、認知症の方にとって心地よい刺激が得られることが大切です。

ゲームを行うにあたり、障壁を乗り越えるのに苦労したが、しっかり取り組めばできる程度の難易度設定にします。すると、ほどよい達成感が得られ、快刺激になるでしょう。

難易度が高くてできない状態に陥ると、高齢者の不安の気持ちを高めてしまいます。どうしても難しい場合は、ヒントを出したり協力してあげたりしながら取り組むのがおすすめです。

2周りの人と褒めあう

ゲームができたら、その方を褒めることを意識しましょう。

認知症の方は、自信や意欲が喪失していることも少なくありません。褒められることで、さらに褒められたいと意欲がわきます。結果として、認知症予防に対する取り組みに前向きになり、継続的に取り組めるようになるでしょう。

互いに褒め合えるようになれば、周囲にもよい影響を与えます。全体的な雰囲気が向上すれば、さらなる相乗効果も見込めるかもしれません。

3双方向のコミュニケーションをとる

双方向的なコミュニケーションは安心感を生みます。そのため、ゲームは複数人数で行うのがおすすめです。

認知症の方は言葉が思ったように出ず、相手を理解することも難しくなります。ゲームを通じて周りの人と会話を楽しめれば、脳の活性化につながるでしょう。さらに、認知症の方が日常のなかで感じる不安感を取り除ける可能性も高まります。

ゲームを計画する際は、会話が自然と弾む席配置を考慮しましょう。親しんだ関係性が生まれれば、さらに安心感につながります。

4役割を持って取り組む

ゲームのなかで、それぞれが役割を持てるようにしましょう。

認知症の方は日常生活のなかで、自分の役割を失い、肩身の狭い思いをしている場合も多いです。複数人でゲームを行う際には、チームのなかでの自分の役割が自然と生まれます。責任感や使命感が芽生え、「自分にもやれる」という自信にもつながるでしょう。

周りの人と協力して同じ目標に向かうことで、日常生活に活気が生まれます。また、他の人のことを理解しようとするきっかけにもなるのです。

5失敗を防ぐ

ゲームででは、認知症の方が失敗したと感じないように気を配りましょう。

認知症の方は認知機能が低下し、いままでできたことができなくなります。失敗体験を積み重ねて自信を失い、意欲が低下している場合も多いです。ゲームを通じて成功体験を積み重ねられれば、自信を取り戻し、意欲がわくかもしれません。

ゲームを行う際は「さりげない手助け」をし、認知症の方に「自分の力で成功できた」と思ってもらうことが大切です。

認知症予防にゲームを活用する場合の注意点

認知症予防としてゲームを取り入れる前に、いくつか注意したい点があります。認知症の方のためにも、把握しておきましょう。

けがをしないよう注意する 参加者にあわせたレベルに設定する 勝ち負けを気にせず、ゲームを楽しむようにする 無理強いしないようにする

認知症予防にゲームを活用する場合の注意点イメージ

けがをしないよう注意する

認知症予防を行ううえで、けがをしないよう心がけることが重要です。

認知症の方は、認知機能の低下に伴い、思考力や身体能力も低下します。さらに高齢の方は、ささいなことでも大きなけがにつながるので注意が必要です。

ゲームを実施する際には、事故を未然に防ぐことに気を配りましょう。周りに人や障害物がないか確認し、安全な環境を整えます。さらに、参加者をすぐにフォローできるよう、人員を配置しておくと安心です。

参加者にあわせたレベルに設定する

参加予定の方について事前に把握し、全員が楽しめるレベルのゲームを行いましょう。

ゲームの難易度が高すぎると、認知症予防になるばかりか、参加者の自尊心を傷つける可能性があります。設定を間違えると逆効果になりかねません。

前述の通り最初は簡単なレベルから始め、達成度を観察したうえで少しずつに難易度を上げるのがおすすめです。達成への意欲が生まれ、自信を持ちつつ新たな挑戦を楽しめるでしょう。

勝ち負けを気にせず、ゲームを楽しむようにする

勝ち負けよりも、参加者全員がゲームを楽しめるようにすることが大切です。

勝負に熱中してしまうあまり、人間関係のトラブルに発展するケースもあります。不穏な空気は周りにも悪影響を及ぼしてしまうでしょう。

ゲームを企画するうえで、勝ち負けよりも達成感や周りの人と協力する楽しさを感じられるように設計することが求められます。また、ゲームを実施する際には周りから様子を見て、トラブルが起こりそうな場合は、早急に対処しましょう。

無理強いしないようにする

認知症予防につながるとはいえ、無理やり参加させないよう気を付けましょう。

なかにはゲームに乗り気ではない方や、体力的に周りについていけない方もいます。意思を尊重せず強引に参加させるとストレスとなり、認知症を予防するにあたり逆効果になるかもしれません。

一人ひとりに参加したいか確認し、それぞれの意見を汲めるよう気を配ることが大切です。またゲーム中も、参加者の様子に応じてルールを変えたり、休憩時間を設けたりするとよいでしょう。

認知症予防には
みんなが楽しめるゲームを

ゲームは脳のあらゆる分野を刺激したり、体を動かしたりするよい機会になります。ゲームを行うにあたり、安全に楽しめることが大切です。必ず参加者の意思を尊重し、トラブルがないよう気を配りましょう。

笑顔にあふれ、活発な交流が生まれると認知症予防においてよい効果が期待できます。ゲームを行う際のポイントや注意点をふまえて、楽しく認知予防に取り組んでください。

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