04認知症コラム
認知症予防のための食べ物は?
食事をするときのポイントについても解説
2024.06.24
認知症予防には、緑黄色野菜や青魚がよいと聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。生活習慣病は認知症になるリスクを高めるため、日々の食生活を見直し、さまざまな栄養素をバランス良く摂取することが大切です。この記事では、とくに認知症予防に役立つ食べ物や、食事のポイントを解説するので参考にしてください。
認知症予防と食事の関係
認知症は単なる物忘れではなく、さまざまな原因により脳の働きが低下する病気です。記憶力や判断力の低下といった症状があり、日常生活に支障をきたします。認知症には確立された根本的な治療法はまだありませんが、食事の見直しによって結果的に認知症のリスクを減らすことは可能だといわれています。
主な原因 | |
---|---|
アルツハイマー型認知症 | アミロイドβの蓄積による脳機能障害 |
脳血管性認知症 | 脳卒中、脳梗塞などによる脳機能障害 |
上記左記は認知症の主な原因です。アルツハイマー型認知症の原因は、アミロイドβというタンパク質の蓄積だとされています。また脳血管性認知症の場合は、脳卒中・脳梗塞など脳血管の病気によるものです。
いずれの場合も生活習慣病が深く関係しているため、食事をはじめとした生活習慣の改善によって認知症を予防できるでしょう。
認知症予防のための食事のポイント
認知症を予防するために食事が重要ですが、具体的にはどのような食事を摂ればよいのでしょうか。認知症予防のために心がけたい食事のポイント5つをご紹介します。
バランスのよい食事を心がける
栄養バランスのよい食事を摂ることは、認知症予防につながるポイントの一つです。
栄養バランスのよい食事とは、私たちが生命維持するために必要な炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルなどの栄養素が必要量そろっている食事を指します。栄養バランスのよい食事を食べることで、脳にとって重要なDHA・EPAや葉酸、ビタミンA,C,E、ミネラルを摂取できるでしょう。
認知症の予防によいとされる食べ物はいくつかあり、それぞれ血管や血流を健全に保つ重要な役割を果たします。詳しくは下記をご覧ください。
一日の摂取カロリーを守る
日々の摂取カロリーの目安量を保つことで、認知症の予防につながるでしょう。
カロリーの過剰摂取による肥満は、アルツハイマー型認知症の原因の一つとして考えられています。さらに、内臓脂肪が蓄積すると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こしかねません。結果として脳への血流を悪化させ、脳血管性認知症のリスクを高めるため注意が必要です。
認知症予防のためにも、一日の摂取カロリーの目安量を把握して、その範囲内で食事を摂るよう心がけましょう。
塩分の摂りすぎに注意する
塩分の摂りすぎないことも、認知症予防のために心がけたいポイントの一つです。
高血圧は塩分を摂りすぎることによって引き起こされ、脳卒中や脳梗塞のリスクを高めると考えられています。脳血管の疾患は、脳血管性認知症を発症する一因となるでしょう。高血圧が原因となる血管障害を防ぐためにも、塩分を摂りすぎないよう心がけた食事を行うことが大切です。
またカリウムを摂取するのもよいでしょう。カリウムは、血液中の余分なナトリウム(塩分)を体外に排出するのに役立ち、高血圧の予防にも効果があるとされています。野菜や海藻類に多く含まれているので、意識的に摂取しましょう。
糖分の摂りすぎに注意する
普段の食生活で糖分を摂り過ぎないことも、認知症予防のためには大切なポイントの一つです。
糖分の過剰摂取は糖尿病のリスクを高めます。糖尿病が発症すると、脳内のアミロイドβが分解されにくくなり、蓄積しやすくなる可能性があります。これは、アルツハイマー型認知症の一因となりかねません。
しかし、糖分はエネルギー源として必要な栄養素です。糖分の多い菓子類や炭水化物中心の食事を見直し、適切な量を意識しましょう。
自分で調理することを心がける
自分で調理し、食事を用意することも認知症予防のためにも必要なポイントです。
自炊することで、食事内容に気を遣えることが理由の一つとして挙げられます。さらに、「調理をする」ことで脳を活性化させ、認知機能へのアプローチもできるしょう。食事に至るまでの過程は、「栄養バランスを考えて献立を考える」「調理に必要な食材を購入する」「手順を考えて調理する」など、認知機能の刺激に効果的といえます。
高齢の方の場合、すべてを実行するのは難しいかもしれません。しかし、周囲の助けを得ながらでも、考えながら料理をする行為は認知機能の維持につながります。
認知症予防に効果的な食べ物
認知症予防のために効果的とされている食べ物はいくつかあります。ここでは、具体的な7つの食品について詳しくみていきましょう。
青魚
青魚は、脳によいとして広く知られている食べ物の一つです。
サバやサンマ、アジといった青魚は不飽和脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)を多く含みます。DHA・EPAは血液中の悪玉コレステロールを減らし、血液の流れを良くする効果が期待できるでしょう。
さらに、DHAには脳神経細胞の情報伝達をスムーズにする働きがあり、認知機能によい影響を与えるといわれています。
青魚に豊富に含まれるDHAやEPAが血液循環を
良好にし、認知機能維持の助けにもなる
緑黄色野菜、果物
緑黄色野菜や果物に含まれる栄養素をしっかりと摂取することで、認知症のリスクとなる生活習慣病の予防につながるでしょう。
たとえば、ほうれん草やニンジンなど、緑黄色野菜や果物は、ビタミンB群の一種である葉酸を豊富に含んでいます。葉酸は血液中の有害なアミノ酸を無害化する働きがあり、動脈硬化のリスク軽減が期待できる栄養素です。
また、野菜や果物は葉酸だけでなく、抗酸化作用のあるビタミンCやEも多く含んでいます。これらのビタミンは血中のコレステロール値を下げるため、生活習慣病のリスクを減らせるでしょう。
緑黄色野菜や果物に含まれるビタミンB群の葉酸は
血液中の有害なアミノ酸を無害化し、
動脈硬化リスクを減らす
コーヒー
コーヒーを日常的に摂取している人はそうでない人と比べて、認知症リスクが減少することを示した研究結果もあります。
コーヒーに含まれるカフェインには、記憶や認知機能を改善する効果がみられることが動物実験でわかっています。さらに、コーヒーに含まれるポリフェノールも、認知症予防に何かしらよい影響を与えていると考えられているのです。
実験では1日3杯以上を摂取すると認知症リスクが半分程度になると示されていますが、カフェインを過剰摂取すると、吐き気やめまいといった症状が出る場合があります。カフェインへの反応性には個人差がありますが、コーヒーは1日多くても3杯程度にとどめ、適量の摂取を心がけましょう。
コーヒーのクロロゲン酸による抗酸化作用で
アミロイドβの蓄積を減らし
カフェインの
利尿作用で不要なタンパク質を体外に排出する
緑茶
緑茶も認知症予防によいとされているものの一つです。
緑茶に多く含まれているポリフェノールの一種であるカテキンは、生活習慣病の予防に役立ちます。不規則な生活習慣やストレスを感じると活性酸素が体内で生じ、コレステロールを酸化させ、生活習慣病を引き起こす原因になりかねません。カテキンがもつ強い抗酸化作用は活性酸素を抑制するため、生活習慣病を予防に期待できます。
緑茶もコーヒーと同様カフェインを含む飲み物です。過剰に摂取することは避け、適量を飲むようにしましょう。
緑茶のカテキンも抗酸化作用があり、
生活習慣病リスクの原因となる活性酸素を取り除く
効果がある
カレー
カレーに含まれるスパイスの成分が、認知症予防に役立つことがわかっています。
カレーに使われるスパイスはさまざまあり、ターメリック(ウコン)はその一つです。ターメリックに含まれるクルクミンはポリフェノールの一種で、脳の機能を活性化させる効果があるとされています。さらに、クルクミンはアルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβの蓄積を防げる可能性があるため、今後の認知症対策として注目される成分です。
ターメリックはあまりなじみのない食べ物かもしれませんが、ターメリックライスにしたり、炒め物の味付けに使ったりするのもよいでしょう。
カレーのスパイスであるターメリック(ウコン)に
含まれるクルクミンが免疫細胞を活性化し、
アミロイドβの蓄積を抑える
大豆製品
大豆製品は脳の健康によい影響をもたらします。
これは大豆に含まれるレシチンが、脳の記憶や認識機能をサポートするアセチルコリンの材料となるためです。レシチンが不足すると、記憶力の低下や不眠などの問題が起こる可能性が高まるでしょう。とくに納豆に含まれるナットウキナーゼ(酵素)は、血流を良くして血栓を防ぐとされており、脳梗塞のリスクを下げる効果が期待できます。
レシチンを含む大豆製品を積極的に摂取することが、脳の健康を維持する上で大切です。納豆をはじめとした大豆製品を普段の食生活に取り入れてみましょう。
大豆に含まれるレシチンは神経伝達物質
「アセチルコリン」を作る材料となり
とくに納豆のナットウキナーゼは、
血流を良くして脳梗塞のリスクを下げる
オリーブオイル
オリーブオイルも、認知症予防によい影響をもたらす食品として知られています。
その理由の一つは、オリーブオイルに含まれるオレイン酸という不飽和脂肪酸です。オレイン酸は、血中のコレステロールや中性脂肪をコントロールする働きがあります。そのため、脳梗塞や動脈硬化の予防によい影響を与えるでしょう。
オリーブオイルを適度に摂取することで、血管の健康の維持につながります。料理に使う油をオリーブオイルに変えたり、味噌汁に少し入れたりと、普段の食生活に取り入れてみましょう。
オリーブオイルのオレイン酸は、
血中コレステロールや中性脂肪をコントロールする
働きがあり、脳梗塞の予防効果がある
認知症予防によい料理
認知症予防には「和食」と「地中海食」がよいとされています。
具体的にどのようによいとされているのか、詳しくみていきましょう。
和食
和食には、認知症予防によいとされる食材が多く使われています。
和食の基本構成は、「ごはんを中心とした主食」「魚や肉、大豆製品などを使う主菜」「野菜や海藻類を中心とした副菜」です。実際に和食の献立では、不飽和脂肪酸を含む青魚、ポリフェノール類を含む緑黄色野菜、レシチンを含む大豆がよく使われます。
多彩な食材が使われており、幅広く栄養を摂取できるため、生活習慣病の予防にもつながるでしょう。
地中海食
地中海食も、認知症予防によい栄養素を摂取できる料理といわれています。
地中海食は、イタリアやスペインなどの地中海沿岸で食べられる食事のことです。地中海食も和食と同様に、野菜や果物、魚、オリーブオイルといった認知症予防によいとされる食材を多く使用しています。不飽和脂肪酸と抗酸化物質を摂取しやすい食事形式といえるでしょう。
また、食事と一緒にポリフェノールが豊富な赤ワインも飲むことも、認知症予防によいとされる理由の一つです。
認知症予防のために要注意の食べ物
マーガリン、ショートニング 菓子パン
認知症予防の観点から上記の食べ物を摂取する際には、過剰にならないよう注意しましょう。
上記左記の食材は、トランス脂肪酸といった脂質を多く含みます。トランス脂肪酸の摂りすぎは悪玉コレステロールを上昇させ、動脈硬化の原因になりかねません。
そのため、トランス脂肪酸が含まれることが多いファストフードや菓子類・菓子パンなどの食事は摂取しすぎないように気を付けましょう。
普段の食事から認知症予防を
認知症予防によいとされる食べ物は、認知症へ直接的に効果があるのではなく、認知症発症のリスクとなる生活習慣病を予防するものです。生活習慣病の予防には、適度な運動や睡眠など、生活習慣を改善することも欠かせません。
まずは現在の食事から見直して、自立した健康的な生活を送りましょう。