文字サイズ

04認知症コラム

昼寝は認知症に効果的?
予防につながる適切な昼寝や睡眠のポイントも解説

2025.10.31

昼寝は認知症に効果的?予防につながる適切な昼寝や睡眠のポイントも解説

適切な昼寝は認知症予防に役立つといわれています。しかし、長すぎる昼寝は認知機能の低下につながりかねません。この記事では、認知症と昼寝の関係を分かりやすく解説します。認知症予防につながる昼寝のポイントや、昼寝以外の認知症予防法も紹介するので、さっそく今日から取り入れてみましょう。

昼寝の質と時間は認知症の予防・進行に影響を及ぼす可能性がある

昼寝は認知症に効果をもたらす?

昼寝の質と時間は認知症の
予防・進行に影響を及ぼす可能性がある

厚生労働省の研究報告書によると、昼寝を含む睡眠時間の長さや質は、健康寿命の延伸に寄与する要因の一つとされています。とくに高齢者では、昼寝の時間が長すぎると夜間の睡眠に悪影響を及ぼし、結果として認知機能の低下を招く可能性があると指摘されています。

一方で、短時間(20〜30分程度)の昼寝は疲労回復や集中力の向上に効果的であり、脳の健康維持にもつながるとされています。
昼寝の習慣は個人差が大きいため、生活リズムや体調に合わせた調整を行うとよいでしょう。

出典:栗山 健一「適切な睡眠・休養促進に寄与する「新・健康づくりのための睡眠指針」と連動した行動・習慣改善ツール開発及び環境整備」(厚生労働科学研究成果データベース)

認知症予防以外の昼寝の効果
集中力の回復 午後の活動効率が上がる
ストレスの軽減 脳の疲労をリセットしストレスホルモンの
分泌を抑える
体力の回復 午後の疲れを軽減し活動量を維持する
覚醒作用 眠気を防ぎ脳のパフォーマンスを高める

アルツハイマー型認知症について詳しくはこちら

認知症予防に効果的な昼寝のポイント

認知症予防を目指すなら、効果的な昼寝の方法についても知っておくことが必要です。押さえておきたい昼寝のポイントを紹介します。

昼食後~15時までに済ませる 20~30分におさめる 時間を固定する 椅子やソファで軽く休む 寝る前にコーヒーを飲む

昼食後~15時までに済ませる

昼寝をするなら、生活リズムを崩さないような時間帯に眠ることが望ましいでしょう。夕方以降の睡眠は夜の睡眠を妨げ、生活リズムを崩す原因になりかねません。できれば15時までに昼寝を終えているようにしてください。

20~30分におさめる

20〜30分程度の昼寝は、脳の疲労をリセットし、注意力や思考力の向上に役立つとされており、認知機能の維持にも効果が期待されています。反対に、長すぎる昼寝は認知機能の低下を促進させる可能性があります。昼寝の時間が1時間を超えないようにアラームなどをセットしておきましょう

長時間の昼寝のリスクについて詳しくはこちら

時間を固定する

時間に関係なく昼寝をしていると、体内時計が狂い、寝つきが悪くなったり睡眠が浅くなったりする恐れがあります。生活リズムを崩さないためにも、毎日決まった時間に昼寝をするようにしましょう。

椅子やソファで軽く休む

ベッドや布団などの夜に寝る場所で眠ると、睡眠が深くなり、長時間昼寝をしてしまう可能性があります。短時間で昼寝を切り上げるためにも、リクライニングチェアやソファ、座椅子などで睡眠を取るようにしましょう。

寝る前にコーヒーを飲む

コーヒーを飲んでから昼寝をしたり、起きたときにすぐ陽を浴びたりすると、短時間ですっきりと目覚めやすくなります。夜の睡眠とメリハリをつけるためにも、目覚めを爽快にする工夫が必要です。

また、コーヒーにはアルツハイマー型認知症の予防効果がある可能性が報告されています。普段の生活にコーヒーを組み込んでみてはいかがでしょうか。

コーヒーとアルツハイマー型認知症の関係について詳しくはこちら

長時間の昼寝がもたらす3つのリスク

昼寝は健康維持に役立つ一方で、長時間になると認知機能や睡眠の質に悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、長時間の昼寝がもたらす3つのリスクについて詳しく解説します。

認知機能の低下 生活リズムの乱れ 心血管疾患の発症

長時間の昼寝がもたらす3つのリスク

認知機能の低下

昼寝の時間が長引くと、夜間に深い眠りを得られにくくなり、脳の疲労が取りづらい状況に陥ってしまいます。脳の疲労は認知症の原因の一つです。夜間にしっかりと眠るためにも、昼寝の時間は1時間を超えないようにしましょう。

1日1時間以上の昼寝をする人は、1時間未満の人と比べてアルツハイマー型認知症の発症リスクが1.4倍高いと報告されています。昼寝をしすぎないように注意することが必要です。

出典:Daniel Aeschbach, Leo Sher, et al.「A longer biological night in long sleepers than in short sleepers」(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 88(1):26-30, 2003)

認知機能について詳しくはこちら
脳疲労について詳しくはこちら

生活リズムの乱れ

昼寝の時間が長引くと夜間の寝つきが悪くなり、睡眠時間が短くなる恐れがあります。また、睡眠の質が低下したことで脳や身体の疲労が回復せず、一日中眠たい状態が続いて翌日も昼寝が長くなるといった悪循環を招くかもしれません。

日中は活発に活動し、夜間は決まった時間に深く眠るという規則正しい生活リズムを守るためにも、昼寝が長引かないようにコントロールすることが大切です。

心血管疾患の発症

昼寝から覚めた後にすぐ活動を始めると、交感神経が急激に刺激されて脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクを高めるといわれています。また、脳梗塞が原因となり、脳血管性認知症を引き起こすかもしれません。

健康な生活を維持するためにも、日常生活を妨げない程度の昼寝時間に制限することが必要です。昼寝から覚めたときは陽の光を浴びて脳をしっかりと目覚めさせ、徐々に身体を動かすようにしてください。

脳血管性認知症について詳しくはこちら

昼寝以外の認知症予防に効果的な生活習慣

短時間かつ規則的な昼寝以外にも、認知症予防につながる生活習慣は多数あります。今すぐ取り入れていきたい生活習慣を紹介するので、ぜひ実践してください。

定期的な運動

運動不足を改善することは、認知機能の低下リスクを低減するといわれています。無理のない範囲で定期的に運動をするようにしましょう。具体的には、ウォーキングや水中ウォーキング、ストレッチなどがおすすめです。運動強度が低めの全身運動のため、普段あまり運動をしない方にも適しています。

週2・3回、30分程度のウォーキングを行う
→慣れてきたら徐々に強度を上げる

社会参加

社会に参加することも脳の活性化につながります。興味がある活動を探して、参加してみるのがおすすめです。近場にある教室やクラブなら、通いやすく、続けやすいでしょう。とくに、定年を迎えるなどして日中に決まった社会活動をされていない方は、意識的に社会とのつながりを保つことが大切です。

フィットネスクラブ 習い事教室 支援センター

脳トレ

ちょっとした空き時間に、脳トレ(脳トレーニング)をしてみてはいかがでしょうか。脳を刺激し、脳の血流を活性化させる効果が期待できるでしょう。数独やクロスワードパズルなどの1人で実践できるものもよいですが、2人以上でできるものだと、脳を鍛えつつ自然なコミュニケーションも生まれます。

食べ方や品目を意識した食生活

食事を見直すことも認知症の発症リスクを下げることにつながります。認知症は生活習慣病と密接に関係しているため、「カロリーや塩分・糖分の摂りすぎを避ける」「青魚や野菜・大豆製品を意識的に食べる」などの生活習慣病を予防する食事で、認知症予防につなげていきましょう。

認知症予防のための食べ物について詳しくはこちら
認知症予防の方法について詳しくはこちら

食べ方の例

一日の摂取カロリーを守る 塩分の摂りすぎに注意する 糖分の摂りすぎに注意する

品目の例

青魚 緑黄色野菜、果物 大豆製品

認知症と昼寝に関するよくある質問

認知症と昼寝の関係について、よくある質問とその答えをまとめました。ぜひチェックしてみてください。

Q認知症の人は昼寝をした方がよいですか?

短時間かつ規則的な昼寝は認知症予防効果を期待できますが、すでに認知症になった方の状態を改善する効果は認められていません。できれば昼間は活動的に過ごし、夜間良質な睡眠を取れる状態にしておきましょう。

Q昼寝は毎日した方がよいですか?

1日に1回以上昼寝をする人は1回未満のみ昼寝をする人と比べるとアルツハイマー型認知症の発症リスクが高いという報告もあります。無理に毎日昼寝をするのではなく、疲労や眠気が強いときのみなど、生活リズムを崩さない程度に昼寝を取り入れていきましょう。

出典:Peng Li, Lei Gao, et al.「Daytime napping and Alzheimer’s dementia: A potential marker of disease progression」(Alzheimer’s & Dementia, 18(10):1891–1901, 2022)

Q認知症になる人の眠り方はありますか?

長すぎる昼寝だけでなく、夜間の睡眠が長すぎることも、認知症の罹患リスクを高めるといわれています。高齢者は横になって過ごす時間が8時間を超えないように、活発な生活を心がけましょう。

Q昼寝ばかりしているのは認知症の影響ですか?

認知症の徴候の一つに強い眠気があり、人によっては昼寝が増えるかもしれません。しかし、必ずしも認知症の影響とは断言できないため、まずは医療機関で相談してみましょう。

認知症の人が寝てばかりだとどうなる?詳しくはこちら

認知症予防につながる睡眠習慣を身に付けよう

認知症と昼寝は密接に関わっています。30分程度の適度な昼寝は認知症予防につながるとされていますが、1時間を超える昼寝はかえって認知症の発症リスクを高めるといわれています。適度な時間・頻度で昼寝をすることで、認知症の予防につなげていきましょう。
また、運動習慣や脳トレ、社会参加などを通して、認知症予防につなげることも大切です。

「認知機能ケアプロジェクト」では、ガンマ波の最新研究情報を配信しています。最新の認知症研究を知ることは、認知症予防にとっても不可欠です。ぜひチェックしてみてください。

関連コラム

Close 認知機能改善についてのガンマ波最新研究はこちら