04認知症コラム
アミロイドβとコーヒーの関係は?
認知症予防に役立つ?食事・行動のポイントを解説
2025.10.08

タンパク質の一種「アミロイドβ」が脳内に蓄積されると、認知機能に障害を引き起こすことがあります。近年の研究では、コーヒーがアミロイドβの脳内産生を阻害することがわかってきました。この記事では、アミロイドβとコーヒーの関係、また、認知症予防に役立つコーヒーの飲み方などについて解説します。
アミロイドβとは【基礎知識】
アミロイドβは脳内で産生されるタンパク質の一種です。正常な脳では産生と分解のバランスが保たれています。しかし、何らかの原因によりバランスが崩れると脳内に蓄積され、老人斑と呼ばれる塊を形成し、神経細胞の働きを鈍化させてしまうのです。
老人斑により神経細胞の働きが鈍化すると、神経細胞が死滅し数が減り、認知機能に障害が見られ、アルツハイマー病を引き起こす可能性があります。アルツハイマー病が原因になっている認知症がアルツハイマー型認知症です。したがって、アミロイドβは特にアルツハイマー型認知症との関連が指摘されている物質といわれています。
- アミロイドβ…
- 脳内で産生されるタンパク質の一種。アルツハイマー型認知症との関連が指摘されている。
アミロイドβの蓄積が引き起こす健康リスク
アミロイドβが蓄積されると、神経細胞の外で塊を形成します。その塊により、脳細胞の働きが鈍化し、神経細胞の機能を損なうといわれています。神経細胞の機能が損なわれると、認知機能の障害だけでなく、記憶力の低下が引き起こされる場合があるでしょう。
アミロイドβの産生・分解のバランスが崩れることで蓄積が始まりますが、現在のところバランスが崩れる要因については解明されていません。
コーヒーがアミロイドβに与える影響

コーヒーには、アミロイドβの蓄積を抑える成分が含まれています。まず、ポリフェノール化合物の一種であるクロロゲン酸が含まれている成分の一つです。クロロゲン酸は、抗酸化作用や降圧作用、脂質代謝・糖代謝の促進作用といったさまざまな働きを持っています。近年、アミロイドβの蓄積を抑制し、認知機能の改善にも役立つことがわかってきました。
また、同じくコーヒーに含まれるフェニルインダンは、高尿酸血症の原因酵素であるキサンチンオキシダーゼを阻害し、尿酸値を低下させる効果のある物質です。研究により、アミロイドβの蓄積を阻害する効果があることが明らかになっており、認知症予防につながる物質としても期待されています。
コーヒーに 含まれる成分名 |
働き |
---|---|
クロロゲン酸 | 抗酸化作用、降圧作用、肥満改善、脂質代謝・糖代謝の促進作用、睡眠改善、認知機能改善、皮膚保湿効果など |
フェニルインダン | キサンチンオキシダーゼ(高尿酸血症の原因となる酵素)阻害による尿酸値低下、アミロイドβの蓄積阻害など |
コーヒーと認知症予防の関係
アミロイドβが脳内に蓄積することにより、アルツハイマー病が引き起こされると考えられています。したがって、アミロイドβの蓄積抑制効果のある成分が含まれているコーヒーにアルツハイマー型認知症の予防が期待できるでしょう。
ただし、レビー小体型認知症や脳血管性認知症といった他の認知症は、アミロイドβが発症の原因であるとは考えられていません。したがって、アミロイドβの蓄積を抑制することが、すべての認知症予防につながるわけではないので、注意が必要です。
アミロイドβの蓄積抑制
↓
アルツハイマー型認知症の
予防が期待できる
認知症予防に役立つ
コーヒーの飲み方のポイント
コーヒーにはアルツハイマー型認知症の予防につながる成分が含まれています。しかし、摂取量に比例して予防効果が高まるわけではありません。適切な飲み方を理解し、認知症予防につなげましょう。
カフェインの過剰摂取に気をつける
カフェインの過剰摂取により、中枢神経系が刺激され、めまいや心拍数の増加、不安、不眠などの症状が起こることがあります。また、個人差はありますが、カフェインの長期的な摂取により高血圧のリスクが高まることもあります。消化器官も刺激され、下痢や吐き気、嘔吐などが生じることもあるため注意が必要です。
日本では明確なカフェインの摂取基準は設けられていないため、各国の基準を参考に1日あたり400mg以下を目安にするとよいでしょう。マグカップなら3杯程度、妊娠中や妊娠を予定している女性ならマグカップ2杯程度が目安です。
- カフェインの過剰摂取によって起こりうるリスク
-
- 中枢神経系の刺激によるめまいや心拍数の増加、不眠など
- 消化器官の刺激による下痢や吐き気、嘔吐など
- 高血圧(長期的な作用)
参考:農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
砂糖入りのコーヒーはなるべく控える
砂糖をたっぷりと入れてコーヒーを飲む場合は、糖分の過剰摂取につながる恐れがあります。中性脂肪として蓄積されて肥満の原因になったり、虫歯にかかりやすくなったりすることもあるため注意が必要です。できればブラックで飲むか、砂糖を入れる場合は少なめにしましょう。
コーヒー以外も!
認知症予防に役立つ食べ物&食事のコツ
コーヒー以外にも、認知症の予防に役立つ食べ物・飲み物があるといわれています。主な食べ物・飲み物や、認知症予防につながる食事の取り方についてみていきましょう。

認知症予防に役立つ食べ物
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えると、認知症の発症リスクが高まることがわかっています。青魚には、LDLコレステロールの低下につながるHDLコレステロールを増やす効果があるDHAやEPAが含まれるといわれています。
また、コレステロールの吸収を抑制する食物繊維が含まれる緑黄色野菜や果物、コレステロール減少効果が期待できるオリーブオイルなどを意識的に摂取するとよいでしょう。
さらに、大豆製品やカレー、緑茶などは、認知機能や記憶力の維持に効果的とされています。
食べ物 | 特徴 |
---|---|
青魚 | 体内のコレステロールを回収する効果のあるHDLコレステロールを増やすDHAやEPAが含まれている |
緑黄色野菜、 果物 |
抗酸化効果のあるビタミンCや、エネルギー代謝を助けるビタミンB群、高血圧予防効果を期待できるカリウム、コレステロールの吸収を抑制する食物繊維などが含まれている |
大豆製品 | 認知機能や記憶力の改善に役立つイソフラボンが含まれている |
カレー | 長期的かつ定期的な摂取により認知機能の維持につながることが示唆されている |
オリーブオイル | コレステロールを減らす効果がある |
緑茶 | 摂取量が増えると、記憶をつかさどる海馬の萎縮率を低減させる効果を期待できる |
認知症予防に役立つ食事の取り方
認知症予防に良いとされる食べ物・飲み物を摂取することも大切ですが、健康維持・増進のためには、食事の取り方自体も重要です。1日の摂取カロリーを意識して、栄養バランスの取れた食事を楽しむようにしましょう。
また、塩分や糖分の取りすぎにも注意が必要です。和食は動物性脂肪が少なく、塩分・糖分を抑えやすいため、認知症予防や健康維持にも効果を期待できます。
- いろいろな食品を摂取する
- 栄養バランスを考えて食べる
- 1日の摂取カロリーを守る
- 塩分や糖分の摂りすぎに気をつける
認知症予防に役立つ行動は?
認知症を完全に予防することは難しいですが、発症リスクを減らすことは可能です。今すぐ実施できる認知症予防につながる行動を紹介します。
日常的に適度な運動を行う
適度な運動を継続することで、アミロイドβの蓄積を抑制しやすくなります。運動不足を解消することは、血行促進や健康維持にも効果的です。
また、軽い運動をしながら計算やしりとりといった簡単な認知課題を解く「コグニサイズ」にも注目してみましょう。運動で健康を促しつつ、認知課題で脳の活動を活発にするため、認知症の発症を遅らせる効果を期待できます。
参考:国立研究開発法人国立長寿研究センター
「認知症予防運動プログラム『コグニサイズ』」
質のよい睡眠を心がける
睡眠と認知症には関係があることが、近年の研究からわかっています。睡眠中には脳内の老廃物が脳脊髄液により洗い流されます。脳脊髄液は血液からつくられる液体です。したがって、睡眠を十分にとれば、アミロイドβのような脳内の老廃物の排出が進むと考えられます。
日中に十分に水分を摂取したりや適度な運動をしたりして血流を促進し、しっかりと睡眠を取るようにしましょう。
参考:国立研究開発法人国立長寿研究センター 「睡眠と認知症」
社会的な交流を持つ
友人や家族との会話や地域イベントへの参加などの社会的な交流は、認知機能の低下を抑制する効果があるとされています。認知症予防のためにも、積極的な社交を心がけることができるでしょう。
ただし、認知機能が低下すると社交に対して消極的になりがちです。普段から友人や家族、地域とつながれるような生活習慣を身に付けるだけでなく、周囲の人々も認知機能が低下した人に対して積極的にアプローチするように心がける必要があります。
脳トレやゲームを取り入れる
脳トレやゲームを普段の生活に取り入れるのも、認知症に役立つ方法の一つです。まずは、楽しみながらできるクロスワードやクイズのようなものから取り組んでみるとよいでしょう。また、計算や漢字のドリル、間違い探し、手を動かす遊びなども脳に働きかける効果を期待できます。
認知症予防につながる生活習慣を取り入れよう
完全に認知症を予防することは不可能ですが、普段の生活から予防につなげていくことは可能です。コーヒーや緑茶、青魚、大豆製品などにも注目して、認知症の予防につなげていきましょう。また、定期的な運動や良質な睡眠、社会的な交流も認知症予防につながる生活習慣です。無理のない範囲で生活を見直してみましょう。
高齢化が進む中、さまざまなアプローチの認知症研究が世界中で行われています。最新の研究結果に触れ、認知症予防についての知識をアップデートしましょう。