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04認知症コラム

脳血管性認知症とは?症状や原因、
治療や予防法についても解説

2026.03.30

脳血管性認知症とは?イメージ

脳血管性認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、認知症患者の約2割を占めているといわれています。脳血管性認知症は、高血圧や糖尿病などのいわゆる生活習慣病が原因になることが多い病気です。この記事では、脳血管性認知症にみられる特徴や主な症状、治療方法やケアについて紹介します。

脳血管性認知症とは

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって
引き起こされる疾病

脳血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって引き起こされる疾病です。なお、脳梗塞とは脳の血管が詰まって脳内の一部に血が流れなくなること、脳出血とは脳の血管が破れて出血することを指します。いずれも脳の組織が死滅するため、脳の機能が正常に働かなくなり、さまざまな症状が現れるといわれています。

認知症のなかでもっとも多いのは、全体の約60%~80%を占めるアルツハイマー型認知症です。その次に多いのが脳血管性認知症で、約2割を占めます。脳血管性認知症は、女性より男性が多い傾向にあるようです。

アルツハイマー型認知症について詳しくはこちら

脳血管性認知症とはイメージ

他の認知症との違い

脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の大きな違いは、「まだら認知症」という特徴的な症状です。「まだら」というのは、日によって、できることとできないことの差が激しくなることを指します。たとえば、ある日は将棋のルールを完璧に説明できるのに箸の持ち方が突然わからなくなる、といった具合です。

症状の進み方もアルツハイマー型に比べ「段階的」です。悪化してからしばらく安定し、また新しい「できない」が加わる、という波状コースをたどります。脳血管性認知症は、感情の起伏が大きく、家族の顔を見ただけで涙が出たり、些細なことに怒ったりする「感情失禁」が起こりやすいケースが多いです。

さらに、片足を引きずったり箸さしがぎこちなくなったりと、脳卒中後遺症と連動した身体症状も同時に現れることがあります。

まだら認知症について詳しくはこちら

観点 脳血管性
認知症
アルツハイマー型
認知症
進み方 段階的・波状
(悪化→安定→悪化を
繰り返しながら進行する)
緩やかに連続的
(日々少しずつ進行する)
認知の
落ち方
まだら
(できる・できないの差が激しい)
均一
(記憶が全体に薄れる)
身体症状 脳卒中後遺症あり
(片麻痺・歩行障害など)
早期はほぼなし
(末期まで歩ける)
感情の出方 感情失禁・抑うつが目立つ 感情の変化はゆるやか
時間帯
の変化
夜間せん妄が出やすい 昼夜の差は比較的少ない

脳血管性認知症の主な原因

脳血管性認知症の原因は、主に上記のようなものです。いずれも脳の血管を傷め、神経細胞を死滅させることにつながります。

脳梗塞・脳出血 生活習慣病 小さな梗塞の繰り返し

脳梗塞・脳出血

脳梗塞や脳出血は、血管が突然詰まる、または破れることで脳の一部に酸素不足をきたす疾病です。これにより神経細胞が死滅するため、認知機能の低下の直接的な原因となるといわれています。程度によりますが、一度の脳梗塞や脳出血で脳血管性認知症になることがあるため、注意が必要です。

参考:厚生労働省「脳血管障害・脳卒中

生活習慣病

生活習慣病の中でもとくに高血圧症は、脳血管性認知症の大きなリスクです。血圧が高いことで血管に小さな傷がつき、破れやすくなります。また、コレステロールがそこに溜まって血管の詰まりを引き起こすでしょう。これらのリスクは、血圧が高いほど上昇します。

さらに、糖尿病や脂質異常症も血管内皮を傷つけるため、脳の微小血管を破壊して小さな梗塞を繰り返す要因になります。

参考:厚生労働省「 あたまとからだを元気にするMCIハンドブック

小さな梗塞の繰り返し

「ラクナ梗塞」と呼ばれる直径15mm以下の小さな梗塞が、無症状で何度も起きることがあり、これが積み重なるとて脳血管性認知症へとつながると考えられています。1回の梗塞では目立たない「物忘れ」のような軽い症状でも、10回、20回と積み重なると日常生活に支障が出るレベルに達することがあります。

物忘れと認知症の違いについて詳しくはこちら

脳血管性認知症の主な症状

脳血管性認知症の症状は、認知機能障害と行動・心理症状、身体面の症状に分けられます。それぞれの症状についてみていきましょう。

認知機能障害(中核症状) 行動・心理症状 身体面の症状

認知機能障害(中核症状)

脳血管性認知症に罹患すると、他の認知症と同様、記憶障害や判断力の低下、計画を立てられないなどの認知機能の障害がみられるようになります。アルツハイマー型認知症と比較すると、記憶力や判断力の低下は軽微な傾向にあるようです。

また、主に環境の変化などを契機に意識が混乱し、注意力が失われる「せん妄」がみられることもあります。個人差はありますが、せん妄は夜間にみられることが多いようです。

行動・心理症状

損傷を受ける脳の領域によっても異なりますが、抑うつや感情失禁が強く現れることもあります。感情失禁とは、突然泣き出したり笑い出したりすることです。

一方で、感情や自己認識に関わる脳の領域に問題が生じていない場合は、自分で認知機能障害や身体面の症状を客観的に判断することができます。そのため、自分の変化にショックを受け、激しく落ち込んでしまうこともあるでしょう。

身体面の症状

脳血管障害と同じく、運動麻痺や歩行障害、嚥下障害、感覚障害などの神経障害による身体面の症状がみられることがあります。ただし身体面の症状も、行動・心理症状と同じく損傷を受けている脳の領域によって異なるため、個人差が大きくみられる場合も多いです。

脳血管性認知症の診断

受診する診療科 診断までの流れ

認知症の薬一覧【4種の抗認知症薬】イメージ

受診する診療科

脳卒中経験あり 脳卒中経験なし
  • 神経内科
  • 脳神経外科
  • もしくは担当医に相談
  • もの忘れ外来
  • 神経内科
  • 脳神経外科など
  • 精神科

脳卒中になった経験があるかないかによって、最初に受診する診療科が変わります。脳卒中の経験がある場合は、脳卒中でかかっていた医療機関の担当医に相談してみましょう。

今までに脳卒中の経験がない場合は、もの忘れ外来や神経内科、脳神経外科などを受診します。医療機関によって診療科の呼び名が異なることもあるため、不安なときは総合案内で尋ねてみてください。

医療機関を受診し、検査を受けるまでの流れは以下の通りです。問診では、いつから症状がみられているか、また、どのような症状があるのか尋ねられるため、普段から気になる症状はすべて記録しておくようにしましょう。

診断までの流れ

まず行うのは、担当医による問診です。いつからどのような症状がみられているのか、詳しく尋ねられます。スムーズに答えられるように、普段から気になる症状についてのメモを取り、医療機関に持って行くようにするとよいでしょう。できれば、普段の生活をよく知る家族が同行されることをおすすめします。

次に、認知機能テストでは記憶力や判断力、計算力を調べます。医師が担当することもありますが、心理士などの専門家が担当することも多いです。

そのあとCTやMRIを使って脳血管の詰まりや出血の有無などをチェックし、最後に血液検査や心電図検査、骨密度検査などを通して、生活習慣病についても調べます。ただし、医療機関によっては各検査が前後することもあるため、注意が必要です。

診断までの主な流れ
  • 1問診
  • 2認知機能テスト
  • 3画像検査
  • 4生活習慣病関連の検査

脳血管性認知症の治療
-悪化させないための方法

現段階では、根本的な脳血管性認知症の治療方法は見つかっていません。そのため、脳血管性認知症と診断されたときは、脳血管障害が生じる領域が拡大しないための再発予防や、認知症症状の対症療法をメインに治療を進めていきます。

症状を緩和する薬物療法

脳血管性認知症は、薬物療法をおこなうことで関連症状が和らぎ、生活の質が保たれやすくなります。認知症治療楽の使用だけでなく、抗血小板薬や降圧薬など、脳血管障害の再発を防ぐ薬を併用することで症状の悪化を抑える効果も期待できます。

薬物療法では、精神症状や身体症状に合わせて薬を調整する必要があるため、医師による継続的な診察を受ける必要がある点に留意しましょう。

認知症の治療薬について詳しくはこちら

具体例
  • 認知症治療薬
  • 抗血小板薬
  • 降圧薬

進行を抑制する非薬物療法

脳血管性認知症は、生活習慣やリハビリなどの非薬物療法によって進行を遅らせられる可能性があり、薬物療法と並行することでその効果を高められると考えられています。生活習慣の改善により、脳梗塞・脳出血の再発を防ぐことが認知機能の維持に直結するため、非常に大切です。

また、身体機能のリハビリや認知トレーニングをおこなうことは、日常生活の自立度を保つことにもつながります。

参考:一般社団法人 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017

認知症のためのリハビリテーションについて
詳しくはこちら

認知症の音楽療法について詳しくはこちら

具体例
  • 運動療法(ウォーキング、筋力トレーニング、リハビリ)
  • 作業療法(家事・手作業・認知課題などで脳の働きを刺激)
  • 言語療法(コミュニケーション能力の維持)
  • 食事療法(減塩・脂質管理・糖質コントロール)
  • 生活習慣改善(禁煙、節酒、睡眠改善)

脳血管性認知症の予防法

脳血管性認知症の予防には、生活習慣を整えることが重要です。具体的な方法について以下で詳しく紹介します。

血圧を正しく測り血管への負担を減らす

脳血管性認知症の最大の原因は「高血圧」です。中年期から血圧を安定させることで、脳の血管が破れたり詰まったりするリスクを抑えられます。
毎日血圧を測る習慣は、自分では気づけない血管の小さな異変を早く見つけることにつながり、病気の進行を食い止めます。

具体的にやること
  • 毎日決まった時間に血圧を測り、自分の「いつもの数値」を把握する
  • 上の血圧135、下の血圧85を超えないようにコントロールする
  • 数値が高い場合は放置せず、早めにかかりつけの医師に相談する

食事の塩分を控え血液をサラサラに保つ

塩分を摂りすぎると血圧が上がり、血管が硬くなる「動脈硬化」が進んでしまいます。味付けを工夫して、血管に優しい食生活を送りましょう。
血液をきれいに保つ脂質や、塩分の排出を助ける栄養をバランスよく摂ることで、脳の血流をスムーズに維持できます。

具体的にやること
  • 塩分は1日6g(小さじ1杯程度)を目標に、薄味の習慣をつける
  • サバやイワシなどの青魚を意識して食べ、良質な油を取り入れる
  • 野菜を先に食べるなど、血糖値を急に上げない工夫をする

歩く習慣をつけ脳の血の巡りを良くする

ウォーキングなどの適度な運動を続けると、脳のすみずみまで酸素や栄養が行き渡るようになり、脳の細胞が活性化します。
運動は血圧を下げるだけでなく、血管そのものを若々しく保つため、脳のダメージを直接予防する効果があります。

具体的にやること
  • 1日30分程度、少し早歩きをする習慣を週に数回作る
  • 階段を使う、いつもより長く歩くなど、
    日常の歩数を増やす
  • テレビを見ながらの足上げなど、
    無理のない筋トレを組み合わせる

人と交流し脳に良い刺激を送り続ける

家族や友人と楽しく会話をすることは、脳を広く刺激し、意欲の低下や落ち込みを防ぐ素晴らしい「薬」になります。
趣味や新しいことに挑戦して頭を使うと、脳のネットワークが強くなり、もしもの時にも脳の機能を補い合えるようになります。

具体的にやること
  • 地域の集まりや趣味の場に出かけ、誰かと話す機会を増やす
  • 読書、パズル、料理など、手先や頭を使う楽しみを持つ
  • 散歩しながら計算をするなど、2つのことを同時に行う習慣をつける

タバコや環境に注意し
血管のダメージを防ぐ

タバコは血管を強く傷つけ、脳卒中のリスクを急激に高めます。また、冬場の急な温度変化も血管の大きな負担になるため注意が必要です。
質の良い睡眠で脳をしっかり休ませ、血管にかかるストレスを最小限に抑えることが予防の基本です。

具体的にやること
  • 喫煙している人は禁煙を。
    自分の力で難しい場合は禁煙外来を利用する
  • 冬場は脱衣所や浴室を温め、急激な温度変化による血圧上昇を防ぐ
  • 1日6〜8時間は眠るようにし、心と体の疲れをリセットする

脳血管性認知症に関するよくある質問

脳血管性認知症に関して、よくある質問とその答えをまとめました。ぜひ、参考にしてください。

脳血管性認知症になってしまった場合、どのくらい生きられますか? 脳血管性認知症は遺伝しますか? 脳血管性認知症が多い性別や年齢はありますか?

Q脳血管性認知症になってしまった場合、
どのくらい生きられますか?

研究によると、脳血管性認知症を発症した人の生存期間は、平均で男性5.1年、女性6.7年といわれており、認知症ではない人に比べて有意に短いと考えられています。生存期間には個人差がありますが、脳血管性認知症の人では心疾患や脳血管疾患など全身の動脈硬化に起因する死因が多くなる特徴があります。

Q脳血管性認知症は遺伝しますか?

大部分の血管性認知症は、遺伝しません。ただし、国の指定難病である「CADASIL」は家族性の脳梗塞であり50%の確率で子へ遺伝します。また、遺伝ではありませんが、脳血管性認知症の方と家族で、同じ生活習慣を共有している場合、血管性認知症の原因である高血圧症や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病のリスクを持っている可能性があります。

Q脳血管性認知症が多い性別や年齢はありますか?

認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症は男女比がおよそ1:2と女性に多い認知症である一方で、血管性認知症は60歳~70歳台の男性が多い傾向がみられます。男女比は1.9対1といわれ、男性に多いことがわかっています。

「脳血管性認知症」と言われたら、
まずは脳血管障害の再発予防につとめましょう

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血が原因で脳細胞が死滅することで起こるもので、症状を悪化させないためには、まず脳梗塞・脳出血を起こさないようにすることが重要です。薬物療法をおこなうとともに、生活習慣の改善や悪化を防止するリハビリテーションをおこなえば、脳血管性認知症の症状の進行をゆるやかにできます。

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