
日本人に多い「ブラウティア菌」、新機能発見が切り開く「次世代の腸活」とは
ブラウティア菌を増やす食生活と、その実践に向けた「検査」への期待
ブラウティア菌を増やすには、どのような食生活を送るのが効果的でしょうか?
複数の研究から、ブラウティア菌を増やすために食物繊維の摂取が有効であることが報告されています。たとえば、もち麦や大麦に多く含まれるβ-グルカンはブラウティア菌を増やすことが分かっており、実際のヒトを対象にした研究でも、もち麦をよく食べる人たちにはブラウティア菌が多いことが示されています。
また、人によっては、2, 3週間ほどで、2〜3%だった割合が10%まで増加することもあります。逆に言えば、それだけ早く増えるということは、食生活を戻すと早く減ってしまう可能性もあるということです。
そうした意味でも食事の影響は非常に大きく、日頃からコンスタントにブラウティア菌を必要な範囲に留めておく食事が重要になることから、もち麦に続く「第2、第3の素材」が望まれるところです。

※國澤純先生の講演スライドより
もち麦に続く、第2の素材として先生が注目されている食品や素材があれば教えていただけますか?
そのひとつが「オリゴ糖」です。オリゴ糖は料理の味を邪魔せず、クセのない点が優れています。もち麦は主食として食べるために炊飯などの調理が必要というハードルがある一方で、オリゴ糖はスプーンですくって入れるだけという手軽さも大きなポイントです。
最近発表された論文でも、オリゴ糖の一種である難消化性糖質「DFAIII(ディーエフエースリー、正式名称:ダイフラクトースアンハイドライドⅢ)」が、ブラウティア菌を増やすことが明らかになり、これから注目される素材の一つになっていくと予想しています。
ほかにも、オリゴ糖の良さとして、大量に摂らなくてもよい手軽さが挙げられます。スティック状にして持ち歩けば、外出先やオフィスでも、気軽にコーヒーやみそ汁などにサッと溶かして摂取可能です。
将来的なイメージとしては、「食物繊維が摂れていないと感じるとき」や「検査によってブラウティア菌が少ないと分かったとき」に、すぐにでも実践できる方法になり得ます。こうした優れた携帯性と利便性を持つオリゴ糖は、これからの腸活において有力な選択肢となると考えています。
自分はブラウティア菌をどの程度保有しているか、その検査は一般の人が気軽に受けられるものでしょうか?
現在、腸内環境の検査システムは数多くあります。例えば、遺伝子ベースの解析では、ブラウティア菌を含む腸内細菌データを網羅的に検出可能です。
このような検査から「菌を全部知りたい」と思う方がいる一方で、多すぎて戸惑う方も少なくありません。そうした方には、まず「チェックしておくべき重要な菌」だけをピンポイントで知ってもらうアプローチも有効です。
私たちは現在、このような観点から、特定の菌だけを簡易に調べられるキットを開発中です。このようなキットを用い、気になる腸内細菌をご自宅で簡単に測れるようになれば、より多くの人が気軽に腸内細菌を調べることができると期待しています。現在、複数の企業に私たちの技術を提供し、さまざまな工夫を凝らしながら社会実装に向けて取り組んでいるところです。

※國澤純先生の講演スライドより
「次世代の腸活」は消費者の「腸リテラシー」を高めながら推進
先生が提唱する「次世代の腸活」について解説いただけますか?
これまでの腸活は非常にシンプルなものが多く、「明日から○○を食べましょう」といった全員に対して共通の提案が主流でした。しかし、人によっては「効果を実感しにくい」「お腹の調子が悪くなる」といった声が挙がることもあります。つまり、食品である以上、効果に個人差があるのは当然という前提で成り立ってきたのです。
これからの腸活は、たとえばすでにブラウティア菌を十分に保有する人なら、次は別の菌を増やすなど、自分の体質や腸内環境の状態に合わせて食事などの改善手段を変えていく形になっていきます。
そのために鍵となるのが、腸内環境を手軽に知る技術です。自分が知りたい気になる菌だけを、安く、早く、簡単に調べられるようになることで、腸内細菌に合わせた食事を考えるきっかけになると思います。
実際に、私たちの技術を利用していただき、代表的な5種類の腸内細菌を調べて、その結果にあわせて食を提案するという取り組みを大阪・関西万博で行ったところ、「自分の〇〇菌が少なかった」「これだけビフィズス菌を摂っていたのに」といったSNSなどでの書き込みが多く見られました。同時に、消費者が体感的にすぐ分かる形になっていることも感じました。
まずはさまざまな場所でキットを使ってもらうことで、私たちが気づかないような消費者からの新しいアイデアや希望も出てくるはずです。そうした声もうまく取り込みながら、さらにブラッシュアップしていきたいと考えています。
究極的には、「トイレットペーパーで腸内環境を手軽に測り、その結果を見ながら、ブラウティア菌が少なければもち麦やDFAIIIを摂ろう」といったように、自分の腸内環境に応じて食事を選べる世界を目指したいと思っています。
「次世代の腸活」実現のために、食品業界や健康産業に期待すること。
「次世代の腸活」や「腸リテラシー」へのアプローチは、一つの素材や食品だけで完結することはありません。自社で単一の素材しか持っていない場合は、複数の企業同士が連携してシステムを作っていく。そうした形ができれば、企業間のオープンイノベーションになるほか、何より消費者に「本当に食べてもらうべきもの」を適切に届けられるようになります。
そのなかで、BtoBの企業が果たす役割は非常に大きいです。最終的なパッケージや製品は異なっていても、同じ優れた素材がさまざまな会社の製品に広く使われている事実は、すでに多くの関係者が承知していることでしょう。そうした形で素材が普及していくのも一つのあり方で、素材メーカーが果たす役割は今後さらに大きくなっていくと考えています。

國澤 純 先生 プロフィール
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 副所長
ヘルス・メディカル微生物研究センター センター長
ワクチンマテリアルプロジェクト/腸内環境システムプロジェクト プロジェクトリーダー
1996年大阪大学薬学部卒業。2001年薬学博士(大阪大学)。米国カリフォルニア大学バークレー校への留学後、2004年東京大学医科学研究所助手。同研究所助教、講師、准教授を経て2013年より医薬基盤研究所プロジェクトリーダー。2019年よりセンター長。2024年より副所長。その他、大阪大学や京都大学、東京大学、神戸大学、早稲田大学において、招聘教授や連携教授、客員教授などを兼任。
















