
「DEL-1」研究の最前線は常識破りの抗老化!
大さじ1杯のアマニ油がウォーキング1時間に匹敵

医療とヘルスケア、両分野におけるDEL-1の期待と展望
DEL-1の研究を進めるにあたり、前川先生は研究者としてどのようなことを大切にされているのでしょうか。
DEL-1の信頼性を確立するためには、2つの軸が必要だと考えています。一つは、一般の人が受け入れやすい「健康の指標」としての側面。もう一つは、既存のアプローチを超える「治療薬」としての側面です。単に「老化しにくくする」という視点だけでは、ともすれば不老不死をうたうような、漠然とした印象を与えかねません。
研究者の使命として、まずは具体的な疾患に対して有効であるという治療薬のエビデンスを積み重ねること。その確かな土台があってこそ、広く健康に寄与する指標としての価値も、受け入れられるものになると考えています。
DEL-1の「医療」分野に関して、研究を進められている中でのご進捗や、ターゲットとされている症例についてお伺いできますでしょうか?
現在、私たちは腎臓をターゲットとした経口の「DEL-1誘導薬」の開発を進めています。ただ、主要な産生拠点である腎臓でDEL-1を増やせたとしても、そこから血液を介して歯茎などの末端組織にはほとんど届きません。そのため、全身へのアプローチと並行して、筋肉なら注射、歯茎なら患部への直接投与といった、部位ごとの特性に合わせた「ローカルな治療法」の研究も進めています。
その足がかりとして、まずは動物用治療薬としての製品化を見込み、2027年よりイヌの歯周病を対象とした治験をスタートさせる予定です。実はペット、特にイヌは歯周病の罹患率が非常に高い一方で、有効な治療薬がほとんどありません。動物医療において安全性を確認し、確固たるデータを構築することは、ヒトへの応用を目指す上で極めて重要なステップとなります。
また、ヒトにおいても、これまでの健康な人たちを対象とした調査に加え、2026年からは疾患を持つ人たちを対象とした大規模な追跡調査が始まります。これにより、DEL-1の低下が認知症等の疾患の発症リスクとどう連動しているのかが、より明確に突き止められるはずです。将来的には、「DEL-1を増やすことで認知症のリスクを低減させる」という、一歩踏み込んだ予防・治療戦略の展開も、決して夢物語ではありません。
さらに、DEL-1と相関しない項目もあえて明確にすることで、特定の疾患に対する診断指標(マーカー)としての活用も目指しています。ゆくゆくは、健康診断の標準項目にDEL-1が組み込まれることを目指し、腎臓や脳神経系といった重要領域での研究を加速させていく考えです。
DEL-1の「健康の指標」分野に関して、特に食品成分で着目されているものや、ご研究で明らかになっていることがあればご解説いただけますか?
いま、日常生活の中でDEL-1を増やす手段として、もっとも有力だと考えているのがアマニ油などに代表される「オメガ3脂肪酸」の摂取です。

もともとオメガ3脂肪酸については、これまで世界中で膨大な数の研究論文が発表されています。しかし、あまりに多くの健康効果が報告されているなかで、「結局、何にどう効くのか」という根本的なメカニズムに対し、私は疑問を持ちました。そこで、「オメガ3脂肪酸の健康効果は、実はDEL-1に依存しているのではないか」という仮説を立て、研究を開始したのです。
その結果、オメガ3脂肪酸の代謝産物である「レゾルビン」がDEL-1の産生を阻害する障害を除去する役割を担っていることが分かりました。
実のところ、一部の抗菌薬(マクロライド系など)には、DEL-1をより強力に発現させる効果があることも研究で示されています。しかし、それはあくまで医薬品としての作用であり、日常の健康管理のために常用するものではありません。その点、オメガ3脂肪酸は、医薬品のような劇的な数値上昇をもたらすわけではない反面、身体に負担をかけない範囲で、DEL-1の増加を見込める極めて優秀な成分だと言えます。
オメガ3脂肪酸を摂取すれば、すべての人でDEL-1の増加が見込めるのでしょうか。また、どのくらいの期間、継続すれば効果を実感できますか?
オメガ3脂肪酸の摂取による数値の変化には、その人の「現在のDEL-1値」が大きく関係しています。
特に変化が現れやすいのは、生活習慣や加齢によって、もともとのDEL-1が低くなっている人です。つまり、オメガ3脂肪酸の役割は「低下してしまった守備力を、本来あるべきレベルまで引き戻す」ことにあると言えます。
DEL-1が低い人ほど、摂取後の変化を実感しやすいのも特徴です。アマニ油を摂取した実験では、まずは2週間から1ヶ月ほどで、目の渇きや歯茎の腫れやすさといった「粘膜」の状態に変化が見え始めます。一方で、DEL-1が低い状態が数ヶ月単位で続いていた場合、骨密度や関節の状態にも影響が及んでいる可能性があります。こうした部位の改善は急には見込めません。しかし、3ヶ月ほど摂取を継続することで、階段での息切れや冷えなどの症状が徐々に改善されてくることが期待できます。
今後はこうしたエビデンスを基に、例えばアマニ油などの食品に「DEL-1をサポートする」といった機能性表示を行うことも、社会にとって有用なアプローチになるでしょう。自分で選んだ食品が「老いにくい体」を作っていると可視化される。それは、健康管理に対する消費者の不安やストレスを軽減することにも繋がっていくはずです。
DEL-1の増加を目的とした、効果的なオメガ3脂肪酸の摂取方法について教えてください

タイミングとしては、体調が優れないときやストレスが多いとき、あるいは肌の調子が気になるときなどに、意識的に取り入れるのがよいでしょう。
また、オメガ3脂肪酸を推奨する背景には、DEL-1を高めるもう一つの有効な手段である運動との深い相関関係があります。実は、「オメガ3脂肪酸を多く含むアマニ油を大さじ1杯くらい摂取すること」と「1時間のウォーキング」がDEL-1に与える影響は、ほぼ同程度なのです。
言うまでもなく、食事と運動の両方を組み合わせることが理想的ですが、毎日1時間のウォーキングを継続するのは決して容易ではありません。だからこそ「運動不足を自覚している人こそ、まずはオメガ3脂肪酸を積極的に摂ってほしい」と考えています。
まずは日々の食卓に少量の亜麻仁油を加えてみる。そうした簡単で継続しやすい健康習慣の一つとして、気軽に取り組んでみてはいかがでしょうか。
老化研究においては、見た目年齢、生物学的年齢、老化速度など、さまざまな指標があるなかで、DEL-1はこれらとどのような関係があると考えられますか?
「若々しさ」を測るさまざまな指標があるなかで、「DEL-1年齢」も老化の新しい指標に十分なり得るでしょう。さらに、DEL-1にはこれらの指標とは決定的に異なる視点が一つあります。
これまで注目されてきたサーチュイン遺伝子やテロメアといった指標は、一般の人が気軽に調べられるものではない上に、日内変動があったり、生まれ持って定められていたりする側面が強いのが特徴です。言い換えると、本人の努力によるアプローチ自体が難しいのです。自分の力では変えにくい数値で「あなたの寿命はこのくらいです」と突きつけられても、ただ切ないだけではないでしょうか。
その点、DEL-1は日々の生活習慣によって変動させることが可能です。自分自身の行動で数値を改善し、老化のスピードをコントロールするにあたって、DEL-1は有用な指標だと言えます。
最後に、食品関連企業の研究開発やマーケティング担当者に向けて、DEL-1を活用した健康へのアプローチの可能性や展望をお聞かせください。
食と健康の新たな可能性を広げる上で、興味深いのは「血管年齢」と「DEL-1」の間に強い関係があることがわかってきたことです。
血管に過度な負担がかかり組織が損傷すると、DEL-1の数値は顕著に低下します。しかし、そこにDEL-1を適切に補充、あるいは誘導することで、血管の若返りを促せる可能性が見えてきたのです。
例えば、オメガ3脂肪酸の継続的な摂取がDEL-1を介して血管をケアし、結果として血管年齢を若返らせるといったアプローチも有用でしょう。具体的な生活習慣への提案としては、「オメガ3脂肪酸の摂取」「適度な運動」「ストレスの少ない生活」の三本柱が重要です。
将来的には、実年齢(歴年齢)に加えて「DEL-1年齢」を算出し、同年代との比較や血液検査結果に基づく腎機能の状態などを総合的に評価する仕組みを作っていきたいと考えています。これにより、「あなたの現在の守備力に基づき、このような生活習慣を心がけてください」といった、一人ひとりに寄り添うパーソナルな提案が可能になります。
こうしたDEL-1の知見を、商品開発やウェルネスサービスに活用したいと考えている企業の方々と共同し、社会実装に向けて伴走できれば幸いです。人々が自ら「アンチエイジングの守護神」とも呼べるDEL-1を十全に活用し、若々しさを維持できる社会を一緒に築いていきましょう。

前川 知樹 先生 プロフィール
新潟大学大学院医歯学総合研究科
高度口腔機能教育研究センター 研究教授
新潟大学歯学部歯学科を卒業。同大学院医歯学総合研究科修了。米国ペンシルバニア大学リサーチアソシエートを経て、新潟大学医歯学総合研究科高度口腔機能教育研究センターおよび研究統括機構研究教授、教育研究院医歯学系歯学系列准教授を兼任。DEL-1に関する研究を通じて、加齢性炎症、細胞老化、組織再生の関連を解明する先駆的な成果を多数発表し、DEL-1研究をリードする日本の代表的研究者。















